鞍馬山
おじいさんのありがた~い おはなし。
中比上東門院の御内に、紫式部と言ふ賢女あり。
翌朝、小式部は鞍馬山に向かった十兵衛、静、真を見送った後、十兵衛に渡された草紙を読み始めた。冒頭から「紫式部」である。小式部は母の和泉式部の部屋に向かった。
「ママ、ちょっとこれ見てよ。」
円をあやしながら、和泉式部は小式部から見せられた草紙を見た。
「これ何?紫さんが賢女はわかるけど、この後の記述は何?」
その姿妙にして、楊柳の風に靡くが如し。翡翠の簪、蝉の羽の透き通りたるが如し。乱れて懸かる鬢の外れより、顔の匂ひ、薄雲に月の透きたるが如し。唇は、芙蓉の如し。胸は玉に似たり。姿、園生の中の花の夕映へ、咲きこぼれたる梅・桜の如し。
「うん、紫式部さんってそんなに美人でしたっけ。」
「この記述だと絶世の美女ね。この草紙は何なの?」
小式部は600年後の世界に残った「小しきぶ」という草紙を十兵衛が持ってきたことを説明した。書かれて200年ぐらいたっているとのことから、今から400年後の書物である。
「じゃあ、400年後にはあの紫さんが絶世の美女扱いされるのね。」
「私が題名なのに……。ママ、続きを読みましょう。」
その時、来客が告げられた、源頼義が巡回警備にやってきたようであった。
「小式部さんのところは、保昌殿がいるから問題はないと思いますが、最近いろいろありましたしね。問題はありませんか?」
「ええ、吉平さんが仕掛けた術式に驚いて逃げていきましたよ。」
「え?じゃあまた襲撃があったのですか?」
「多分、小式部に求婚しようとする貴族もいると思いますが、旦那様もいますし大丈夫ですよ。」
和泉式部が代わりに答える。頼義は軽く挨拶をした後
「そういえば、あの十兵衛さん、あの後来ましたか?」
「ええ、今朝、うちの静と真を連れて鞍馬山に行きましたよ。」
「鞍馬山?」
「何でも天狗さんに会うということで」
「それはいけない。最近あの付近でいろいろ事件が起こっていて」
「天狗さんと関係があるんですか?」
「よくわからないのですが、天狗の仕業と思われる事件もあって」
「十兵衛さんが付いているから大丈夫だと思うけど、心配だわ。」
「そうですね。わたしも行ってみましょう。」
頼義は家来たちに残りの巡回と、父、頼信への伝言を頼むと、十兵衛たちを追いかけて鞍馬山に向かうことにした。
十兵衛一行は鞍馬寺までたどり着くと、少し休憩を取ることにした。ここから天狗がいるという僧正ガ谷まであるくのは、まだ少しあるのでお弁当タイムにしたのであった。
「おばあさまは、貴船神社でお参りしたら、おじいさまと仲良くなったって言ってたわ。」
「三七日参りしてたっていう滝夜叉姫を追いかけていたってママが言ってたな。」
「滝夜叉姫って大きな骸骨と戦うって話だろ。おれの時代では芝居の見せ場だな。」
「うん。パパが篳篥で動きを止めたところを頼光さんたちが粉々にしたんだって。」
「で、滝夜叉姫は晴明さんが呪いを解いて、ばあさんになったって聞いてます。」
「俺の時代には、教通殿も晴明殿も話に出て来ないなぁ。頼光殿の武勇伝の一つだな。」
「それで、その頼光っていうのはどのくらい強いんだい。」
突然、三人の話にまだ15、6才くらいの山伏の格好をした少年が話しかけてきた。
「あなたは、だあれ?」
真が無邪気に問いかけると、少年は十兵衛の方を向いて
「俺はクマラ、魔王とも呼ばれているな。お前は腕が立ちそうだ勝負しろ。」
「クマラ?本当か?」
「おれのことを知っているのか。」
「鞍馬天狗だろ?」
「くらまてんぐ?おれはクマラだ。くらまではないぞ。」
そういうと、クマラは十兵衛に切りかかってきた。十兵衛がその剣を避けようと間を開けたその時、何体かの小天狗が現れて、静と真を連れて、消えて行った。
「待て、何をするんだ。」
「俺を楽しませてくれたら返してやるよ。さあ勝負だ。」
「今、転移したな。お前は異世界の者なのか?」
「ほう、転移を知っているとは、お前何者だ。」
「俺は時空の旅人、柳生十兵衛だ。」
「時空の旅人?そうか、この世界の人間ではないのか。」
「ああ、お前もそのようだな。」
二人は向き合って数合打ち合うが、クマラは宙を舞い、十兵衛の剣が届かない。すると、一本の矢がクマラの額の山伏頭巾に命中した。
「助太刀しますぞ!」
頼義が弓矢の達人の腕でクマラを射ている。クマラはそれを避けるのに苦戦しながら、
「二人掛かりって反則だぞ、それならこれで…。」
クマラは腰に差した扇を広げ・・・。
「クマラ!おやめなさい!」
「ん?」
三人が戦っている近くの高い木の上から声がした
「待たせたわね。愛と美の美少女ど〇ぎつね戦士!ど〇ヴィーナス、金星に代わって……。」
「ねえちゃん!」
「ねえちゃん?」
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
時間がたつと話が大きくなるものじゃ。
ねえちゃん?




