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8年後

おじいさんのありがた~い おはなし。

「ばあば、抱っこ。」

 今年3歳になる(よし)が和泉式部に抱きついてくる。式部は女の子を抱き上げながら優しく言い聞かせる。

「ばあばじゃないわ。大ママよ。」

「ママ、諦めて、4人の孫を持つおばあちゃんなのよ。」

 まだ、生まれたばかりの(まどか)を抱いてあやしながら、小式部内侍が呆れている。

 そのそばでは、円を見にやってきた教通と保昌が目を細めながら話している。


「しかし、教通殿、また生まれるんだって?これで9人目か?」

「はい、義父上。でも兄のところに信家が養子に取られました。」

そのそばで男の子と女の子が黙って座って話を聞いている。

 何とも幸せな藤原保昌一家の風景であった。



 異界の門騒動から8年後


 その間に藤原教通は内大臣に昇進し、先に嫁いでいた藤原公任の娘と、公任の養女となった小式部内侍との間に8人の子供を授かっていた。

 最初の子が、公任の娘との間に生まれた現在10歳の(せい)

 それから、異界の門騒動の後に小式部との間に生まれた男女の双子の現在8歳の(しずか)(まこと)、静は教通の初めての男子であった。

 しかし、その後に公任の娘との間に、現在5歳の信家、3歳の通基、2歳の信長と、次々と男子が生まれ。現在もう一人生まれるらしい。

 小式部との間には、現在3歳の歓と1歳の円の女の子。小式部の子4人は保昌邸で順調に育ち、小式部は23歳になっていた。



「静、何で、信家は頼通おじさんのところに養子に取られるの?」

「頼通様の家には男の子がいないから、養子を集めているみたいだね。奥方の末の兄弟も養子にしたみたいだし。」

「おじさんも大変ね。静は大丈夫よね。」

「僕は跡は継げないし、継ぐ気もないよ。信家もこれで出世できるだろうし将来安心だね。」

「でも、おじさんにお子ができたら?」

「それは立場が悪くなるかも、でも頼通様は美人の奥様に夢中で側室持たないしね。」

「側室?」

「うちみたいに母が違う兄弟ができないのさ。」

「うん、もう一人、あっちのママのお腹にいるって言ってたね。」

「父上は子宝に恵まれてるって評判らしいよ。ここ10年で9人。」

「私らみたいに、まとめて生んでるしね。」


 静は幼少時から祖母、和泉式部、母、小式部内侍の歌才に教通の記憶力をあわせもつ天才児としての評判が高く、6歳時には記紀をそらんじられるほどであった。そんな静を藤原公任は義孫ながら寵愛していた。真はそんな静と一緒に行動することが多く、3年前に亡くなった安倍晴明の加護を最も強く受けていた。

 安倍晴明は、死期を迎えたころ、見舞いに来た小式部と静、真、そして生まれたばかりの歓に護身の呪を施し、その際に小式部の霊力を二人の女の子が受け継いでいると教えた。

 そして晴明の二人の息子吉平、吉昌には、小式部の双子はどんでもない大物が加護していること、彼らが成長するまでよろしく頼むと言い残していた。




 時空の門を使い柳生十兵衛はこの時代の京に転移した。

 この時代、捜している剣「髭切」「膝丸」は藤原頼通に仕えている源頼信、頼義親子が持っているはずであった。この時代、転移した伏見稲荷は、十兵衛の見知ったものと違い鳥居の数も少なかったが、同じ場所にあった。

 異界の門事件は、この時代あちらこちらにその痕跡があったが、当事者の源頼光と四天王、安倍晴明は亡くなった後であった。あと10年程前に転移できれば良かったのだが、そこまで調整はできないようだった。現状存命しているのは、藤原保昌一家、藤原道長、頼通、公任らであった。


十兵衛はこの中で最も近づきやすそうな見覚えのある小式部内侍と接触しようと考えた。




【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

おばあちゃんって言われると早く年を取りそうなので

まだ若いうちは言わない方がいいぞ。

平安時代編最終話になります。

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