資格
「私が最近取ったのは、英検準1級と・・・あと、ビジネスマナー検定3級かな。」
と、ひとりの女性が言う。
「すごいね。この半年間で2つも資格取ったの?大変だったんじゃない?」と、もうひとりの女性が言う。
「まあね。」言われた女性はどや顔をした。すると、さらにもうひとりの女性が言った。
「あら、私の主人の友達なんて、この1年で手話検定2級。書道検定1級。そろばん1級。簿記3級をまとめて取得したわよ。」
「あんたの主人じゃなくて、友達が、でしょ。」
「いいじゃない!」 指摘されたマウント好きの女性はむっとして言い返した。
するとさらにさらに、別の女性がこう言った。
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて。あ、ちなみに私事で恐縮ですが・・・この1年間で、ベジタブル&フルーツマイスター検定、アロマテラピー検定、テーブルマナー検定、おもてなし検定、ライフスタイルアドバイザー検定、着物検定、色彩コーディネーター検定、紅茶検定、整理収納アドバイザー検定、化粧品検定、・・・あとなんだっけ。あ、フラワーコーディネート検定、世界遺産検定、クラシック検定、東洋美術検定、西洋美術検定、絵画検定、宝石検定、アニマルセラピー検定、編み物検定、ファンタジー文学検定・・・・なんとか、すべて取得できました。まあ・・役に立つかはわからない上、大変だったけど、勉強は楽しかったよ♪・・・・ただ、ただね、資格マニアの私が今いちばん欲しい資格、それは『資格マスター』なの。級や資格の種類に関係なく、”1年間という限られた期間の中で資格を<最低でも15個以上>を取得した者にだけ与えられる、特別な称号なんだけど、今、10月の後半でしょ。あと2か月しかないんだよね。私はそれを取るために、この1年間やってきたのだけど、ちょっと資格数が足りなかったかなあって。」
「・・・・・・・・・・・。」
残りの3人は言葉を失った。
沈黙の後、ひとりが静かにつぶやいた。
「取得おめでとう。」
完