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詩《うた》をきかせて  作者: 生永祥
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☆第15話 涙が出るほど

「見ていたよ、大賀」


 涙を拭った目で小夜子が大賀の背後を見てみると、そこには今朝、小夜子にキャンディをくれた明博が立っていた。

 突然後ろから現れた明博に大変驚いた大賀は、腰を抜かしそうになっている。


「女の子を泣かせるなんて、大賀、君、本当に最低だね」

「……最低なのは、明博、お前の方だ。いきなり後ろから忍び寄って来るのだなんて卑怯だぞ!」

「大賀が一丁前に格好付けているから、いけないんだよ」


「俺は格好付けてなんかいねぇぞ!」と大声で文句を言っている大賀を尻目に、明博は小夜子の方にそっと近付いて行って、持っていた自身の青色のハンカチをすっと小夜子の前に差し出した。


「女の子に物を差し出す時は優しくそっと手渡すんだよ。……大賀はまだまだだね」


 自分の後ろでまだ文句を言い続けている大賀を無視して、明博は小夜子に向かって笑って話しかけた。


「フルーツキャンディ、涙が出るほど、美味しかったでしょう?」


 その言葉に、一瞬小夜子はぽかんとする。そして明博の言葉の真意を計ると、小夜子は思わず、ぷっと噴き出した。

 

 そんな小夜子の様子を見ていた明博は目配せをして、小夜子に無言で合図をした。


 明博の言葉で元気を取り戻した小夜子は、にこりとして目を細めると、明るい声で明博に話しかけた。


「うん!とっても美味しかったよ!」

「良かったら、まだキャンディ、残っているんだけれど、食べる?」

「うん。またくれたら、とっても嬉しいなぁ」


「ちょっと待ってね」と言いながら、明博が鞄の中からキャンディを取り出す。

 そして、その内のひとつを小夜子にぽんっと手渡した。


 その後、明博はキャンディをもうひとつ取り出し、封を切って中身を取り出した。そしてそれを手際よく、まだ文句を言い続けている大賀の口の中に、タイミングよく入れる。


 するとキャンディを口に含んだ大賀は、美味しかったのか、無言でモゴモゴと口を動かしはじめた。それから全く明博に文句を言わない。


 そんな大賀と明博の様子を見ていた小夜子は、また噴き出して、2個目の飴を勢いよく口に含んだ。


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