表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩《うた》をきかせて  作者: 生永祥
1/54

★第1話 カラタチバナ

枯れ葉の散り敷く道を

音を立てて進むと

肌を刺す木枯らしがひとつ吹く


森に響くのは葉時雨はしぐれの音ね

「今年もまた冬が来た」と言い

隣に立つ貴女が僕に微笑みかけた


高まる鼓動はごまかしきれない

寒さに反して熱くなる身体


言葉にならない

いとしい想いが

雪に変わり積もりはじめた


赤いカラタチバナの実を摘み

貴女の右手に落として

僕は一言

「きれいだね」と呟く


白い貴女の肌は

びっくりするほど冷たく


思わず僕は

両手で貴女の身体

抱き寄せた




木の実の砕ける音が靴底で響いて

静寂は突然に破られた


だけど離れずに

ふたり、寄り添うの


大空高く枝を伸ばした木の上で

リスたちがそっとふたりを見ていた


まぶたを閉じれば浮かんでくるもの

風花かざはな冬凪ふゆなぎ、枯れ野、寒北斗かんほくと


そのどの場面も貴女がいること

その事実で幸せになる


赤いカラタチバナの実のよう色づく貴女の

やわらな頬を

両手で包み込んでキスした


白い粉雪の舞う世界で

ふたりは近づく


貴女の吐息が

冬の冴えた空へと昇っていく




――『カラタチバナ・天野柚木也あまのゆきや

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ