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豊葦原物語  作者: 秋野萌葱
第一部
5/9

空の上での会話

今日はこれでおしまいです。

明日も投稿します。

うえっ。うーんクラクラする。


ドラゴンに乗った私は翡翠の前に座っているので、前からの風がビシビシもろに当たる。

それにドラゴンの背中はびっくりするほど不安定で、いくら翡翠が安全バーの代わりになってくれても船酔いみたいな酔いが容赦なく私を襲ってくる。


ちなみに翡翠曰く、今背中に乗って飛んでいるこの生き物はドラゴンじゃなくて飛竜って言うらしい。

もっぱら、空中移動に使うらしいとか。

そして、ガタガタ震える私の両の手には右手に手綱、左手に銃。

口頭で、銃の打ち方は聞いたが撃てる気がしない。

どちらも離したら落下や暴発が怖いのでぎゅっと両手を握りしめた。


ふと、ドラゴンに乗せられる前に部屋で聞いた音が気になった。


「ねえ、あのサイレンってなんだったの?」


風圧に耐えながら、後ろの翡翠に問いかける。


「さいれん?」


「あ、えーと部屋を出る前に鳴っていた音。」


「ああ、あれか。」


「あれは術式・零式ノ発信。

 緊急事態の救援要請を出すためのものだよ。

 私の腰の(ぎょく)にも組み込まれているんだ。

 私の他にも 蒼月さん、朱若、他に二人ほどの音の鳴る玉を持っているよ。」


「どうやって場所がわかるの?」


「それぞれの玉は術で結ばれているから、光って道標になるんだ。」


はい。と、左手で丸い(たま)を見せてくれる。

淡い緑色に染まった手に収まるサイズの碧玉(へきぎょく)は、一筋の光を発し、翡翠が手の中で転がしても逸れたりする事なく真っ直ぐに一点を示していた。


「ふーん、ナビみたいなものか。」


「なび?」


あ、いけない。

ナビって地球の言葉だった。


「ナビって言うのはね、道を示す物って言う意味なんだ。」


「この玉とどう違うんだい?」


好奇心に満ちた問いかけが、私の耳元に響く。

首を動かして後ろを向くと翡翠の顔が、早く続きを教えろといわんが如く私の肩近くにあった。

整った翡翠の顔が三割り増しにきらきらと輝いて見えた。


いや、近いって!ていうか前見て!


肩に息がかかるほど近くに整った顔があるとそわそわと落ち着かなくなる。

背後ばかり気にして、手に持っている物を離してしまわないかひやひやしてきた。


「近い!ちょっと、近いよバランス崩れちゃう。」


「大丈夫、大丈夫。これくらいのことで、(らく)は人を落とすことはしないから安心して。」


・・安心できないわ!!


ただでさえ、飛竜の存在なんてたった今知ったばっかりだし、部屋を飛び出す前に色々やってしまったせいで今、私非常に気まずいんだって。


仕方ない。さっさと説明して周りに輝いてる気がするきらきらを引っ込めてもらおう。


「えっとね。ナビは目的地に行き着くまでの詳細なことが書かれているんだ。光ったりとかはしないけどとっても便利なんだ。」


「凄いな。これの上をいく性能があるのか。フフッ、いつか君に(ずい)に来て貰いたいものだ。君の手にかかれば今ある機械の性能も何倍も上がるんだろうな。」


しみじみとした声が聞こえてくるが、決して油断してはダメだ。

異世界人とばれたから色々保留になったけど、前例がなかったら私がどうなっていたかは分からない。

さっきまでいた綺麗な部屋じゃなくって、地下牢みたいな所にぶち込まれるかもしれないし、胴と頭がおさらばしていたかもしれない。


多分、この緊急事態と言うのが終わったら私の今後を左右する話し合いがあると思う。

死を考えて逃げるのではなく、いい加減、腹を括って現実に向き合わないといけない。


「気をつけて、もう少しで着くけど地上に降りたら(らく)のそばから絶対に離れないで。」


「え?」


翡翠が指差した方向に見えたのは広範囲に黒煙が上がっている集落だった。


「今回は、君を一人にして余計な危険を避けるために連れてきたけど、本来ならこれも危険すぎる事なんだ。」


翡翠は、私を危険な場所に連れていく理由を教えてくれた。


私を知っているのは蒼月さん、朱若、翡翠の三人だ。

私は他人に知られると色々面倒な出自のため、大まかなことが決まるまで暫く隠していた。

あの部屋は予め人払いしてあったらしいが、私一人で残しておくと、さっきの自殺未遂のように何をしでかすか分からないので、危険ではあるが、連れてきて目の届く所に置いておくことにしたらしい。


「なんか、ごめんなさい。

 私が余計なことをしたせいで仕事を増やしてしまって。」


「謝らなくていい。

 君を一人にしてはいけないと、蒼月さんからも厳命されていたから。」


「けど、私にまで救援要請が来るなんて、一体どんな妖魔(バケモノ)が出たんだ?」


その呟きに何もわからない私は答えられなかった。


そうこうしている内に、黒煙の目の前まで飛竜は近づいていた。


「この中に入るの?」


「大丈夫。怖いのは一瞬だから、息止めててね。」


私の不安を一蹴すると、翡翠は手綱を握る腕に力を込めた。


「突っ込むよ。」


「ちょっと待ってって、きゃあああああああ!」




 顔に掛かる黒煙の香りと味は、不味いを超えた最悪だった。




  


・烙・

翡翠の飛竜。

極度の人見知りで、翡翠の命令がないなら他の人間は絶対乗せません。

翡翠大好きで翡翠の命令なら飛竜としての仕事を渋々します。

沙羅蘭は仲良くなれるだろうか。

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