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短編集・散文集

景品

作者: Berthe

 いつかの催しで引き当てた景品の財布に今のそれから鞍替えしようと、しまっていた箱をだして蓋を開けてみたところ、先達て確かめたときに変わりなく依然真新しい長財布で、色味は極薄い灰色である。


 白のタグには細字でベージュと記載されているものの、どうもグレーが勝っており、鼠色系統の下地にベージュを上塗りしたようにもみえる。普段使いのものとしてはやはり派手で明るく、けれど優しく暖かな色合いのそれは柔らかく滑らかな牛豚混合革造りで、外側のみ明色に統一され、内側はブランドネームとジップの銀をのぞくと黒一面。


 お札の収納及び取り出し、小銭入れとカード入れの配置からすれば今持ち歩いているものより使い勝手はかえって快適かもしれない。今更長財布でもあるまいが、自分は二つ折りと長財布を気分によって使い分けているし、ひさびさに新品の長財布を手にすると、流行りといってマネークリップに挟んだそれをこれみよがしに会計で投げ捨てるより、ぴりっとのびた端正なお札を差し出すのが時勢遅れにしたところで、どことなく礼儀に適っているような気さえする。


 洋服はもちろんの事、他人の選んだ小物をこだわりなくつかうのは趣味のない人のみの特権であるような気がするものの、我を押し通して来た結果これまでどれほどの損失があったかは想像するのも恐ろしく苛立たしい。


 自分のために選ばれたわけではないものにわが身をゆだねてみること。自分は使い古しの長財布を景品の箱に収めると引き出しを閉めた。

読んでいただきありがとうございました。

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