13.乙女げぇむの破綻ーその③
「婚約。私がベルン様と」
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再度言葉にすると同時に街で過ごす間のベルン様の表情や行動が蘇る。
優しい声色、紳士的でありながらグランツ様と居ると素に戻る様子。
エスコートしてくれた際に手袋越しでも分かる鍛錬を重ねている手。
甘い。
思い出しただけでも甘すぎる。
これを恋と呼ぶのだろうか?ロマンス小説の中でしか読んだことの無い出来事。
それが今、私の身に起こっている。
自覚した瞬間に気持ちの行き場がなく足をバタバタと動かしてしまった。
この展開は、ナティア様曰く乙女げぇむに無いとの事。
もし婚約のお許しが下りれば既にシナリオは破綻確定だ。
既に私が異分子なのだから綻びを解いている張本人なのだが。
現実世界の出来事であり、非現実に妄信しているウリアンナ様は自分の人生に地に足をつけて生きてほしい。
その願いは届きそうにない、あの様子で前途多難だろう。
翌日はベルン様のお宅へ伺いご家族様との顔合わせをすることとなった。
事実上、婚約が成立してしまったということである。
皇帝陛下の許可もあり得体の知れない私なのに難なく話が進んだ。
流石にロン、アリスター、エクラタンはついていけないからと彼らは屋敷の下見を引き受けてくれた。
お会いしたベルン様のご家族は厳格ではあるけれど優しく和やかに私を婚約者として受け入れてくれる。
妹様はご病気らしくお目通りが叶わなかったが、ご両親からは泣いて喜ばれ予想外だった。
ベルン様の自宅を後にして屋敷の下見をしている三人の元へベルン様と一緒に合流する。
「あ! ベルン様、お嬢様、お疲れさまでした」
「御二人共お疲れ様でした。いかがでしたかな?」
「ベルン様、お嬢様おかえりなさいませ」
ロン先生がベルン様と私を見つけてくれると三人は駆け足で傍に来てくれた。
「ええ、無事に顔合わせをさせていただいたわ」
「これからは、殿下と共に皆様をお守りさせていただきます」
胸に手を当て軽く一礼をしてくれるベルン様。
誠実であり忠誠心のある方に守っていただけるのだと思うとほんのりと頬が熱を帯びた。
「ベルン様、私達に改まった言葉遣いでなくてよろしいのですよ」
「そうだな。それとこれからはメルと呼ぶことにするが大丈夫だろうか?」
「はいベルン様。 改めてよろしくお願いいたします」
「「「よろしくお願いいたします!」」」
五人でいる事が居心地が良く安心してしまう。
「それで、ご用意いただいたお屋敷はどうでしたか?」
「お嬢様聞いてくださいませ、とても素敵なのですよ!」
「小さいお屋敷だと聞いていたのですがとても良い物件を紹介していただきました」
「毎日のお茶の時間が楽しみになるかもしれませんぞ」
三人は私達を伴い屋敷の中へ入る。
屋敷へ踏み入れればエントランスの美しさが目に入った。
真っ白な壁に青い彫刻の施された壁飾り。
エーデルシュタインの代表的な建物の作りなのだという。
二階へ移動し部屋へ入るとバルコニーへ続く色ガラスが嵌められた扉から光が差し込んでいた。
バルコニーへ出れば其処は海が見晴らせる特別にも思える場所だ。
「まぁ、本当に素敵ね絵画のようだわ」
大陸だったグリフィス王国に居た頃は海の大きさを知るすべはなかった。
初めて見た海はエーデルシュタイン帝国の空中。
眼下にあった海はどこまでも広大だった。
素敵な屋敷を用意していただけるとは思ってもいなかったので胸が熱くなる。
これからは、こんな素敵なお屋敷で自由を謳歌出来るのだ。
バルコニーの柵に手をかけると銀細工の腕輪が擦れシャラリと音を立てた。
「ここで生活していけるのがとても楽しみね」
「はいお嬢様、聞いてくださいこの屋敷の調理場とても扱いやすそうなのです!」
「本当にいい屋敷だ。庭の日当たりも良好で薬草がよく育ちそうです」
「ベルン様もお嬢様とのお茶会を楽しみにしていてください」
エクラタンは調理場、ロン先生は備え付けの庭がお気に入り、アリスターはこの海の見える部屋が気に入ったそうだ。
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