右腕に封印されし暗黒邪龍破壊神太郎
むかしむかし、ある邪神が封印されたとかたられる山のふもとに、右腕に暗黒邪龍破壊神を宿し、封印のために包帯でぐるぐる巻きにしているのだ、と自称するおじいさんと、眼鏡をはずすと美人に見えるという展開の研究のために前髪を伸ばして顔を覆った生活を送っているおばあさんがいました。
おじいさんとおばあさんは、自分の信じる道を50年も、飽きることなく続けています。
ある日のことです。
おじいさんは封印の強化のために山へ、おばあさんは眼鏡をはずしたときに一番美人に見えるポーズを研究するために川へ行きました。
おばあさんが川でポーズを選択していると(洗濯ではないです)、川上からおじいさんの包帯でぐるぐる巻きになった、大きな桃が流れてきました。
「あらあら、おじいさんたら、こんな大きな桃を見つけたのね」
おばあさんは桃を拾って持ち帰りました。
おじいさんの帰宅を待って、おばあさんは桃を切りました。
二人で桃を食べたところ、不思議なことが起こりました。
なんと、二人とも若返ったのです。
こうなると、二人は若さに任せて行動をとることになります。
おじいさんは右腕の封印を解き放ち、おばあさんは眼鏡をはずし、前髪を結わえておでこを出すことで、リミッター解除です。
二人は、パンを加えながら交差点でぶつかったり、本棚で同じ本を取ろうとして手を握ったりして愛を確かめ合いました。
「おじいさん、お腰のきび団子をひとつ下さいな」
「ひとつと言わず、ぜんぶやろう」
二人は夜の鬼退治としゃれこみました。
犬、猿、雉もびっくりするほど、おじいさんの金銀財宝を獲得したおばあさんには、新たな命が宿りました。
二人に子どもができるきっかけとなった桃、を包んでいた包帯から、二人の子供は「右腕に封印されし暗黒邪龍破壊神太郎」と名付けられ、健やかに育ちました。
やがて、右腕に封印されし暗黒邪龍破壊神太郎が成人になりました。
右腕に封印されし暗黒邪龍破壊神太郎は、その名を煩わしく思っていたことを役所に訴え、改名手続きをして、桃太郎と名乗ることになりました。
子どもに変わった名前をつけるのはかわいそうなのでやめたほうがいいですね。
とっぴんぱらりのぷぅ。