八、言霊
「言霊って…いやいやいやうちの言葉そんな超能力持ち合わせて無…」
「ええから!人の話最後まで聞け!はよせんと…。」
その時、一段と大きな音をたてて結界に亀裂が走り、黒兎の咆哮が隙間から漏れる。
『グ…オオオオオオオオォォォオ!!!』
「っ…説明は後や!俺の真似して言ったことそのまま口に出せっ!」
私は男性の剣幕に気圧され、慌てて右手首を左手で押さえ、右の掌を兎へ向けた。
「祓えたまい、清めたまえ」
「は…祓えたまい、清めたまえ」
真似をして唱え始めると、掌の前に五芒星の描かれた円が浮かび上がった。現れた五芒星がぐるぐると回転し、制服が下から紺色の狩衣へと変わっていく。
「神ながら守りたまい、幸えたまえ。」
「神ながら守りたまい、幸えたまえ。」
五芒星の印が光り、手の中に不思議な形をした水晶が現れる。その時結界が壊れ、中から黒兎が飛び出した。
「六根清浄、急急如律令!」
「六根清浄、急急如律令!!!」
ドッという大きな衝撃と共に、目の前の印が手元から離れる。印は前方へ一直線に飛んで行き、兎に衝突した。
『ッ…ギャァァァァァアッ!!!』
青白い光に包まれた兎は、断末魔の様な叫び声を上げ、空中に霧散した。
「…はっ…はっ。」
私は衝撃で後方に吹っ飛び、転んだ体制のまま
、肩で息をしていた。
「…お疲れさん。」
その言葉が聞こえたのを最後に、私は意識を手放した。