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六、通りすがりの陰陽師
「なんか良く分かんないけどヤバいって!」
「逃げるよ!千晶ちゃんつかまって!…!」
ただならぬ恐怖を感じ、3人で逃げようとすると、突然体が動かなくなった。
「何なのっ…これっ…!」
『逃ガ…サナイ』
兎はそう喋り、その瞳を一瞬光らせた。すると、唯来姉と京さんの体が、糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちる。
「唯来姉!京さん!」
何が起こったのか全く理解できず、半泣き状態で兎を見た。すると、その兎が自分へ向かって真っ直ぐ跳躍して来る。
もう…だめだ。
恐怖で目を瞑った。その時だった。
「祓いたまえ、清めたまえ。」
力強く透き通った声が神社内に響き渡り、真横を暖かい風が通り抜けた感覚があった。先程覚悟した痛みは、感じられない。
私は恐る恐る目を開けた。拝殿側の地面には、数秒前自分に襲いかかってきた黒い塊が転がっている。
一陣の風が吹き、紅に染まった紅葉の葉が舞い踊る。
目の前には、今世にはそぐわない、紺色の和服を着た金髪の男性が立っていた…。