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二十五、ヘアピン
私が男の子の家から戻ってくると、ランドセルを背負った1人の女の子が、下を向いて歩いて来た。女の子は、電信柱のある側の道を見つめ、ぽろぽろとその大きな瞳から涙を流し始めた。
「…あっくん。」
あの子だ。直感で、私はそう思った。
「あっくんのお友達?」
女の子の背丈と同じくらいにしゃがんで、私は声をかけた。
「ひっく…うん。おねぇちゃんだれ?」
「おねぇちゃんもね、あっくんのお友達なんだ。あっくんから、頼まれてたもの、あなたに渡しにきたの。」
「え?」
私はそう言って、女の子の手にストライプ柄のリボンが付いたヘアピンを乗せた。女の子は目を見開いた。
「これ…帰りにいつも見てたやつ…。」
「あっくんが、『お誕生日おめでとう』だってさ。」
「あっくん…うぅ…うわぁぁぁぁあぁぁぁあん!」
女の子が泣き止むまで、私は彼女の背中をさすり続けた。