二十三、間抜け
「いてててて…。」
火曜の朝、私は首をさすりながら、高校に向かっていた。隣を歩いているのは、輝。
「ったく、足が治ったと思ったら、今度は首かよ。ほんっと世話ねぇな。」
「…返す言葉も無い。」
私は輝に苦笑いを返した。今私の首には、白いギプスが巻いてある。
件が消えた後、私たちは陰陽神社に戻った。戻って間もなく首の痛みが出てきて、恭士さんに念のため病院に行くことを勧められたため、行ってみたところ、頸椎捻挫と言われたのだ。
「お前ほんとに呪われてんじゃねぇの?」
「そんなこと無いって。だって膝の時お祓いしたんだよ?」
まぁ、800年前の陰陽師の生まれ変わりってやつも、考えようによっては呪いみたいなものかもしれないけど。
「んじゃ、相当呪いが強力で祓えなかったか、お前が救いようの無い間抜けかのどっちかだな。」
「なにおぅ!」
確かに、昔から何も無いところで転んだり、タンスの角に足の指をぶつけたりはよくやっていた。しかし、せめてドジっ子とか可愛い響きの言葉を使って欲しいものだ。
「あっ!」
「ん?」
千晶は路地の向こう側に、何やらコソコソしている浮遊霊を見つけた。
「ごめん!ちょっと先行ってて。コンビニ寄ってくる!」
「あ、おい!」
私はそう言って、路地の方へ走って行った。
「…コンビニそっちじゃねぇだろ。」
輝はそう呟いたらしいが、私の耳には届いていなかった。