十九、馬肥ゆる秋
「『天高く馬肥ゆる秋』って、聞いたことないか?」
天高く馬肥ゆる秋。空気が澄んでいて空が高く感じられ、馬も肥える実りの季節がやってきたことを表す言葉だ。
「この言葉は元々、中国の故事でな?当時の中国の王様が、メシ食うて馬が立派になって、それに乗った遊牧民が攻めて来る季節やから警戒せぇ言う意味で、言った言葉なんや。」
「へぇ〜。そうだったんですか。でも、それと流れ星にどういった関係があるんですか?」
恭士さんはより神妙な顔つきになり、話を続けた。
「『天高く馬肥ゆる秋』の元になった言葉。それは『雲浄くして妖星落ち、秋高くして塞馬肥ゆ』。」
「ようせい…フェアリー?」
「ちゃうわ!妖しい星!妖しい星て書いて妖星や!」
「あ、そっちか。」
ちょっとふざけてみると、恭士さんは欲しいツッコミをくれた。
「つまりや。昔は今みたいに流れ星で嬉しがったりはせぇへん。むしろ不吉な出来事の前兆として恐れられとった。今回のことが何かの前兆やとしたら…。」
「大災厄の前兆。もしくは、午に憑いた悪霊の、封印が解けることの前兆だろうと。」
「そういうことや。」
恭士さんはそう言ってニヤリと笑った。
私たちは詳しく調査をする為に、競馬場で夜になるのを待った。