表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
通りすがりの陰陽師1  作者: チャーハン・神代
12/104

十二、選ばれし陰陽師

 遥か昔、日本には悪霊や妖怪といった魑魅魍魎たちが、数多く存在していた。それらを相手取り、不思議な力を使って人々を災厄から守護していたのが、安倍晴明をはじめとする陰陽師たちだ。

 彼らの活躍により、少しずつ魑魅魍魎たちは数を減らし、それらを目にすることも少なくなっていった。

 しかし、この話には続きがある。

 恭士さん曰く、安倍晴明の死没から200年後、魑魅魍魎の数が急速に増えていった。それを止めようとしたのが、12人の陰陽師とその式神たち。

 しかし、その式神たちに呪いがかけられ、強力な悪霊が彼らに取り憑いた。結果、陰陽師たちはやむなく、自らの式神ごと悪霊を封印した、ということらしい。

 そして今、なんらかの作用で再び魑魅魍魎が増え、各地で悪行を働いている。

 また、その影響で封印されていた式神たちも、とり憑いた悪霊と共に目覚め始めているという。


「その強力な悪霊が、なんで今の私に浄化できたわけ?」


 私は話を聞いていて、疑問に思ったことを質問をした。


「さぁな。1つ言えるんは、前世で式神と絆を結んだヤツにしか、その悪霊は浄化でけへん。分かってんのはそれだけや。」


『この800年の間に、呪いが劣化でもしたんですかね?』


 それまで、恭士さんの横でこじんまりと座っていた兎が口を開いた。


「劣化ねぇ…。」


「でも、それが事実なら、あなたのこと封印したの私たちってことになるよ?嫌いにならないの?」


 割と真剣な顔で言うと、キョトンとした顔で兎が答えた。


『…正直封印された時の記憶があまり無いので…それに。』


 兎は一瞬、懐かしいものを見るような目で私を見てきた。


『ご主人は、とても優しいお方でした。きっと最後まで、封印以外の道も探してくれたはずです。嫌いになんてなりませんよ。』


 兎はキッパリとそう言うと、膝の上に跳び乗ってきた。


『千晶様には、私の瞳が蒼く見えたんですよね?それは千晶様と私が、強い絆で結ばれている証拠です。私はご主人の決断は正しかったと信じてます!』


「はぁ…。」


 いや…そんな真っ直ぐな目でそう言われても困るんでけど…。

 信じてるなんて言われても、当の本人は全く記憶がないし、どう反応していいか分かんないよ…。


「つまりや。」


 恭士さんが再び口を開いた。


「俺らは800年前の…前世の戦いにケジメをつけなアカンらしいっちゅうこっちゃ。自分が覚えとるかどうかは別にしてもな。」


 彼はそう言って、ゆっくりと立ち上がった。


「とりあえず、今日はもう遅いから帰るで。なんかあったら、そいつに聞いてみぃ。」


 恭士さんはカーテンを開き、ガラッと窓を開けた。


「まだ教えなアカンことはぎょーさんあるからな。とても一晩じゃ伝えきれんわ。また近いうちに来る。」


「あっ…。」


 冷たくなった秋の風が、部屋の中に吹き込んだ。

 恭士さんはニッと笑うと、ポンッと音をたてて姿を消した。窓の方へ歩みより、外を見ると、人の形をした紙がひらひらと夜の闇へ消えて行った。


「あ…助けられたお礼…言いそびれちゃった…。」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ