勇気ある剣士
今、雷雨達は最悪な戦況に陥っている───
「……グハッ!…」
雷雨は魔力切れ&全身骨折で動けない状態……
「……クッ!」
神崎は神器が解除され、動けない雷雨を守っている……
「早く死んじゃえぇぇぇ!!」
風明は神器が解除されているが、未だに攻撃を続けている……
「私は…負けませんわ!!」
エルセも風明と一緒に戦っていた。
だが、ルィーツには一切攻撃が当たらない……
「ムダ……ダ!!」
「うわぁぁ!」
「きゃぁぁぁ!」
ルィーツが大剣を振り回すと、そこを軸に突風が吹き荒れ2人を吹き飛ばした。
「!?にげ…ろ!…ふう…めい…!」
「え?」
雷雨が弱々しく叫ぶ声を聞き取った風明だったが───
もう…遅かった───
ルィーツは風明の目の前に現れ、大剣を振り落とそうとしていた。
「…そん…な……」
風明は絶望し、全身の力を抜いてしまい、もうそこにいるのは神器使いの風明ではなく───
魔物に怯えるか弱い女の子だった───
「ふう…めい…!!」
「「風明さん!」」
「…あ…あぁ…」
風明は泣き出し、身体は震えていた。
ルィーツはその姿を嘲笑うかのように大剣を──振り下ろした。
「風明ちゃん!!」
由は叫んだ────と同時に由の横を何かが通り過ぎて行った。
「シネ」
ルィーツの大剣が風明の頭に落ちる───が横から黒い人型がそれを遮った。
「ナニ!?」
「…え…」
ルィーツも風明もまだ状況を理解出来なかった。
それもそのはずだ。
誰の目にも見えず、突如現れルィーツの大剣を刀で防いでいるのだ────
「………もう逃げない」
その男は語り出す。
「……もう…誰も死なせない!」
その男は雷雨や由、そして男子達が待ち望んだ1つの光──
その男は────
「……龍…くん…」
由がそう泣きながら呟く。
その時風でフードが取れ、顔が現れる。
「き…」
「きたァァァァァ!!」
「行けぇぇぇぇ!!我らがリーダー!!」
「アイツをぶっ倒せぇぇぇ!!」
男子達の方で大歓声が上がった。
「…やっぱり……お前は……最高の…相棒だぜ……龍」
雷雨は笑顔になる。
自分の最強で最高な相棒が、助けに来たのだ。
「…まさか……あの人は…神器使いだったんですか…」
神崎は呆気に取られる。
それはエルセも同じことだった。
決闘で使わなかった力を今ここで見せられているのだ。
これはエルセに対する煽りに過ぎない。
しかし、今はそんなことを思っていなかった。
「……強い……私達より…ずっと…」
龍から感じる力のオーラに神崎達は驚いていた。
「なんですの……この力のオーラは……」
「これが…」
そこで雷雨が、唖然している2人に言った。
「これが…龍の力だ……」
♢
「大丈夫?風明ちゃん」
龍はルィーツの攻撃を受け止めながら、風明に問いかける。
「え?あ、はい……え?」
風明はいきなりのことに驚きながらも答えるが、やはり今の状況が理解できずポカーンっと口を開け固まった。
「バカナ!ワレノコウゲキヲウケトメタダト!?」
ルィーツは自分の攻撃を止められたことに驚き、力を緩めてしまった。
「もう……お前のすきにはさせない!!」
龍はルィーツの大剣を弾き、ルィーツに斬り掛かる。
「ムダダ!ワレニコウゲキハツウジ─」
ルィーツが言う前に龍の刀──『冥夜の刃』が黒いオーラをすり抜け斬り裂いた。
「グハッ!バ、バカナ!?」
「嘘でしょ!?」
その場にいる全員が驚いた。
神器使いの4人でも黒いオーラに遮られて攻撃出来なかったのに、龍の攻撃だけが黒いオーラをすり抜けルィーツに攻撃を与えれたのだ。
「ナゼ…」
「教えてあげるよ」
龍は刀を構えながら、
「僕の神器『冥夜の刃』は闇をも切り裂く夜の刃……君の黒いオーラでは僕とツクヨミの攻撃は止められない!」
「ナ…マサカ…ソンナコトガ……」
「覚悟しろ、ルィーツ……僕はもう……迷わない!!」
そして龍は地を蹴り、ルィーツの目の前に移動した。
「!?」
「ハァァァァァ!!」
ルィーツは龍の攻撃を防げず、強烈な一撃を受けた。
「ガハッ!!」
ルィーツは悍ましい姿になって初めてのダメージを受けた。
その一撃は、回復させることを許さず、油断させることを許さず、そして────
「……フッ…」
ルィーツは笑った。
「……イイダロウ…ワレモ……ゼンリョクデイコウ!!」
ルィーツは盾を捨て、先程より速度を上げ、龍に斬りかかった。
「「ハァァァァァ!!」」
そして2人の剣がぶつかり合った。
♢
他の人は見ることが出来ず、音だけが聞こえる戦い……
「見えないです……」
神崎がそう呟き、それにエルセが頷く。
「それにしても…龍さんが……神器をお使いになれるなんて……」
「正確…には……違う」
そこに雷雨が会話に入った。
「兄貴!大丈夫なの?」
「大丈夫……だと…いいが……お前は?」
「………怖かった」
「そうか……よく…耐えたな」
「………」
風明は、ポロポロと涙を零した。
雷雨は風明の頭を撫でた。
「それで……違うという意味は…」
神崎は雷雨に言った違うという意味が気になり、問いただした。
「龍は……自分の…意志で……使う事が……出来ない」
「そうなのですか!?」
「しかも……制限付きだ…」
「……ちなみに…何時間ですか…」
「………10分だ」
「10分!?いくらなんでも早すぎですわ!!」
「……じゃあ……あと…」
「………」
雷雨は、目では見れない速さで戦っている龍を見る。
(頑張れ…龍……お前は……俺が唯一認める……最強の相棒だ)
♢
2人は手を緩めることなく、更に速さが加速されていた。
「スバラシイ……ココマデタタカエタノハオマエガハジメテダ!」
「それは…どうも!」
龍はここにきて、ルィーツと間をあけ、木に向かって走り出した。
「ナンノマネダ…」
「………」
(戦ってわかったけど、アイツと真っ向から戦っても時間がきて負けてしまう……なら!)
そして木に近付くと同時に、龍は木を蹴り斜めの木に移った。
「ナニガシタイ」
ルィーツの問いを聞き流し、更に木につたってまた木に移るを繰り返していた。
♢
その様子を雷雨達は────
「どうしたのでしょう……」
「兄貴……龍さんは一体何を…」
「………」
「兄貴?」
(龍……何か作戦があるのか?……俺には思い付かない……アイツに勝てる作戦が…)
♢
龍は、ルィーツを囲むように木々に移っていた。
「モウ…アキラメタノカ?」
「いや……勝つさ!!」
そして龍がルィーツに攻撃を仕掛けた。
「肆ノ夜叉……《影速斬》…」
龍は音もなく姿が消えた。
そして次の瞬間───
「ガハッ!?」
ルィーツが斬られた。
「ナ、バカナ!?ソンナコ──ガハッ!!」
ルィーツが喋る暇もなく、次々と斬られていく。
♢
「い、一体何が起きてるというのです!?」
「これは……」
この光景を見ている全員が今起きている状況が理解出来ていなかった。
何故なら、いきなりルィーツが斬られ、それが何度も続いているからだ。
「ハハハ…そういうことか…」
「え!?兄貴、この状況がわかったの!?」
皆が混乱している中、雷雨だけがこの状況を理解していた。
そしてこの状況がわかったから、雷雨は凄すぎて笑ってしまったのだ。
「あれは……龍の剣技だ」
「え!?龍さんの!?」
「俺も……驚いたぜ……とんだ奥の手を…持っていやがった…」
雷雨は笑った。
怪我のことを忘れて、この戦いを見続けた。
♢
「バカナ!バカナバカナバカナ!!」
ルィーツは未だに姿が見えない龍を探すが、攻撃を防げず倒れそうになっていた。
「ワレヲ………ナメルナァァァァ!!!!」
ルィーツは大剣を振り回した。
「ッ!」
振り回したと、同時に龍が姿を現した。
それと同時に、ルィーツが一瞬で龍の目の前に現れた。
「シネェェェェェ!!」
大剣が振り下ろされた。
それと同時に、叫び声が聞こえた
「頑張れぇぇぇ!!龍くん!!」
由の声だった。
龍はそれを聞くと、笑顔になった。
「参ノ夜叉……」
「ハァァァァァ!!」
そして大剣は龍を斬り裂いた───
斬り裂かれた龍はゆっくりと地面に落ちていく…
「そん……な…」
「龍……くん…」
「龍…さん…」
由と風明、そしてエルセが涙を浮かべた。
ルィーツは勝利を確信し、笑った───が、
「ナッ!?」
斬り裂かれた龍から青い炎が現れ、龍を燃やした。
「ナンダトッ!?」
そして龍は、ルィーツの後ろに現れた────
「《陽炎》」
「ナッ!?」
ルィーツは急いで後ろを振り返る。
「壱ノ夜叉───」
龍は刀を上に掲げた。
「行っけぇぇぇぇぇぇ!龍くん!!」
「やっちゃえぇぇぇぇぇぇ!龍さん!」
「龍さん!お願いしますわ!!」
「龍さん!きめてください!!」
「「「やれぇぇぇぇぇぇ!!龍!!」」」
「「「龍さん!倒してぇぇぇ!!」」」
由や風明達だけでなく、全員が龍に倒せと応援した。
そして─────
「倒せぇぇぇぇぇぇ!!龍!!!」
雷雨が限界を振り絞り、叫んだ。
「《朧月》!!!!」
そして龍が振り下ろした。
ルィーツはギリギリで防御の体勢に間に合った───が、それは無意味に終わった。
龍の刃は、ルィーツの大剣を貫通し、ルィーツを真っ二つに斬り裂いた。
「バ………カナ……」
ルィーツは音もなく、倒れた。
「ワレハ……マケタノカ……」
「……そうだよ」
「コレガ……ハイボク……」
ルィーツは笑った。
何かを思い出したようだった。
「ヒサシブリノ……ハイボクダ……ダガ……ワルイキハシナイナ…」
そして、ルィーツは光に包まれた。
魔物はやられると、素材だけを残し消えていくのだ。
だから魔物であるルィーツも……同じように消えていくのだ…
その時、龍は驚愕する事が起きた。
「コレデ……ナカマノモトニ……イケる…」
ルィーツの姿が────
「感謝するよ……勇気ある剣士よ……」
そしてルィーツは光に包まれ消えていった。
ルィーツが倒れていた場所にルィーツの魔物素材とペンダントが落ちていた。
龍はそれを拾いあげる。
そこには何人もの騎士の姿をした人達の集合写真があった。
持っていると裏がザラザラしていたので、裏を見る。
そこには文字が書かれていた。
“ありがとう”
龍はそれを握りしめ、空を見上げた。
「明日は……いい天気になりそうだね…」
龍は空に架かる虹を見て、そう呟くのだった───
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