おじいちゃんの言葉
「お……じい……ちゃん?」
僕には聞こえた。
確かにおじいちゃんの声が聞こえた。
“逃げるな…戦うんじゃ”
またおじいちゃんの声が聞こえた。
空耳じゃない…
でもおじいちゃんの姿は見えない…
「おじいちゃん……なの?」
“なんじゃ…たかが5年くらいでもうワシのことを忘れてしまったのか?”
「そんなことない!……でも…嘘みたいで……」
“まぁ、今回は特別にお前さんと話をさせてもらっていてな”
「今回?」
“今お前さんがいるのは夢の世界みたいなもんじゃ。だからこうやってワシと話ができるんじゃよ”
「そうなんだ…」
“そんなことより、お前さん……何故逃げるんだ?”
「ッ!?……だって……僕には…」
“ワシはお前さんをずっと見守っていたがな、お前さんは十分強くなっておるぞ”
「でも!……怖いんだ……」
“……なるほどのぅ……お前さんに魔物の恐怖心を植え付けたのはワシらじゃ……すまなかった”
「おじいちゃん達は悪くないよ!……でも…」
“……なぁ、お前さんよ…”
おじいちゃんは、僕にこんな質問をしてきた。
“仲のいい子は出来たか?”
「え?…うん、できたよ……優しくて強い人が…」
“そうかそうか!いや〜それは良かったな!ガハハハ!!”
おじいちゃんは喜び、笑っていた。
そんなに喜ばれるとは思わなかった…
僕……どれだけおじいちゃん達に心配かけたんだ……
“そうか〜お前さんも友達ができたのか、あんなに1人で居続けたお前さんがな……”
「そ、それは─!」
“なら話が早い、お前さん……その子を見殺しにするのか?”
「!?」
そう、今雷雨達はあの化け物と諦めず戦っている。
しかも雷雨は魔力切れを起こし、戦えない…
そして僕は、逃げ出そうとしていた。
そう……見殺しにしようとしていたのだ──
「………見殺しにしたくないよ…でも僕に何ができるの!ただ足を引っ張るだけだよ!?そりゃあ勿論助けたいよ!でも僕には何も出来ないだ!」
“何も出来ないっか……”
「そうだよ!僕も神器を持っているよ!でも使えないだよ!僕にはその資格がないから──!」
“本当にそう思っておるのか?”
「…え?」
“お前さんは…本当にそう思っているのか?”
「……どういうこと?」
“本当は気付いているんじゃないか?”
「!?」
おじいちゃんの言う通り、僕は神器の解放条件を知っている。
『冥夜の刃』の解放条件
それは───《己の弱さを克服すること》
そして僕の弱さは、魔物に恐れること、だ。
それを克服すれば、僕はツクヨミを使うことができる。
でも──
「……無理だよ…そんなの……」
“……何故出来んと諦める”
「無理だよ……魔物をみると震えが止まらないんだ……最近は弱い魔物なら怖くはなくなったけど、あの魔物は無理だよ……」
そう、魔物をみると思い出してしまう。
あの村の残酷な悲劇が──
“……なぁ、お前さん”
おじいちゃんは僕に聞いてきた。
“お前さんは、友達と楽しい学校生活を送りたいか?”
「送りたいよ…」
“お前さんは、友達に死んでほしくないと思っているか?”
「思っているよ…死んでほしくない……」
おじいちゃんはそれだけ聞くと、少し間をあけ──
“……なぁ、お前さん……ワシはお前に何を教えてきた?”
そう聞いてきた。
おじいちゃんには色々なことを教えてもらった。
戦闘のことや、この世界のことを……
そして、おじいちゃんはいつもこう言う。
“ワシはお前さんに、“諦めず挑みに行け、そうすればお前さんの望む未来が掴めるかもしれん”と教えたはずじゃが”
「……うん」
“お前さんは今、諦めようとしておるな?何もしておらんのに”
「だって──!!」
“何故そう決めつけれる?お前さんはアイツといつ戦ったか?お前さんは未来でも見て勝てないと思っておるからか?他の子達でも勝てないから、自分も勝てないと思っているからか?”
「……それは…」
僕はおじいちゃんが聞いてきた言葉に返せず、口ごもった。
するとおじいちゃんが──
“馬鹿もん!!やる前から逃げてどうするんじゃ!!ワシはそんなこと言った覚えはないし、仲間を置いて逃げようとすることも言ったことはないぞ!!”
おじいちゃんはブチ切れた。
おじいちゃんを怒らせるのはこれで2度目だ。
一回目は、虐められて帰ってきた時に
“男が泣くな!お前は弱い!そして強くもある!やり返さなかったのはいい判断だ!だが、これだけは覚えておけ。諦めるな!逃げるな!それは自分から逃げることになる!立ち上がれ!そして立ち向かえ!そうすれば、お前さんが望む未来が掴めるかもしれん”
と、おじいちゃんに怒られた事があった。
そう、おじいちゃんは……僕の為を思って怒ってくれていた───
“魔物は確かに怖いだろう!だがな、それは友達を置いて逃げる理由にはならん!それはクズがすることじゃ!お前はそんな奴になるじゃない!”
「……僕は……何も出来ない……」
“……龍よ”
その時、薄らとおじいちゃんの姿が見えた─
その顔は──
“お前さんにはあるだろ?仲間を守る折れない剣が”
笑顔だった──
いつか見たことがある、もう見ることが出来なくなってしまった──
おじいちゃんの喜ぶ顔──
「………」
僕は気付けば泣いていた。
ずっと我慢していた気持ちが止まらなくなっていた。
“さぁ、前をみろ…立ち上がれ……お前さんはもう……1人じゃないんだ”
そう言い、おじいちゃんは消えていった。
そして次に視界に現れたのは、ツクヨミだった──
《………覚悟……決まった?………》
「……決まったよ…僕は───」
僕は涙を拭きながら答える。
僕はもう逃げない。
おじいちゃんが教えてくれた。
必ず未来を掴む為に────
「──仲間を守る、だから……力を貸してくれないか?ツクヨミ」
《………もちろん………》
ツクヨミは笑顔でそう答えてくれた。
僕は目を瞑る───
次に目を開ける時には、仲間と勝利を勝ち取る為に───
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