能力測定②
教室に戻っても、僕はまだ放心状態だった。
そんな時に心配して、由が声を掛けに来てくれた。
「大丈夫?龍くん?」
「…うん…大丈夫……」
でも、元気は出なかった。
まさか能力測定器でも見れないとは…
「ねぇ…由くん……」
「何?」
「能力測定で、スキルが見れない事って…ある?」
「んー、そんな話は聞いた事ないよ?」
「…そう…だよね…」
故障だったのか?きっとそうだ…
そう思わずにはいられなかった。
「龍くん、何かあったの?」
由は心配そうに聞いてくる。
「いや…大丈夫だよ」
僕は今出来るだけの笑顔を見せ、そして話を逸らすことにした。
「由くんのステータスはどんなんだった?」
「ん?フフーン、僕はねぇ〜じゃじゃーん!」
そうドヤ顔をしながら、ステータス表を見せてきた。
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平原由
力 D
速 C
守 D
体 C
魔 C
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結構高かった。
ちなみに、スキルは本人の許可または、パーティを組まないと見ることは出来ない。
「高いね…」
「そう?ふふ〜ん!」
そうドヤ顔してきた。
「龍くんは?」
「僕はこんなんだよ」
そして僕のステータスを見せた。
「凄いよ!速さAもあるじゃん!」
「でも、それ以外は弱いよ。体力ないから、そんなに長くは走れないし」
「えっと…」
「別にいいよ。気にしてないし」
それ以上に今はスキルが分からなかった事がショックで大きくやる気も起きない。
「えっと、じゃあ僕のスキル見せてあげるよ!」
「え?いや、駄目でしょ」
「え?何で?」
「何でって普通スキルは見せないもんでしょ?」
「僕は龍くんになら別にいいよ?」
「いや、だから…」
「??」
由は何やら不思議そうな顔をして、顔を覗かせてきた。
「普通今日初めて会った人にそう容易く自分スキルを見せるのはおかしいなって思って…」
「別に龍くんになら構わないよ?それとも……迷惑だった……?」
「い、いや!そんな事ないよ!あぁー!なんか気になったから見せてくれないか!」
「うん!いいよ!」
笑顔でスキル欄を僕に見せてくる。
由くん……中々の強者だ……
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スキル
剣技(短剣)
回避(成功率50%)
付与(武器を強化する。魔力量が多ければ強さが増す)
エクストラスキル
千里眼(遠い所まで見れる)
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ヤバい。
普通に強かった。
泣きたい。
「ツヨイネ、ユウクン」
「そんな事ないよ!」
えへへ、と笑いながら答えた。
心にダメージを受けた気がする。
僕はこの後由が言ってくるセリフが想像出来た。
僕のも絶対聞いてくるはずだ
「龍くんは?」
…やっぱり聞いてきた。
「……見せなきゃ駄目か?」
「僕の見せたんだから、見せて!」
「……分かった」
僕は渋々スキル欄を由に見せた。
由……君は策士でもあったのか……
少し見てから由は、「えっと…ごめんね?」と、謝ってきた。
もう泣いていいですか?
「まさかスキルが2つしかないのに、見せてなんて言って」
「別に気にしてないからい────今なんて?」
スキルが2つ?
聞き間違いか?
「由くん、もう一度言ってくれないか?」
「え?えっと、ごめんね?」
「違う。その後」
「まさかスキルが2つしかないのに、見せてなんて言って?」
聞き間違いじゃなかった。
もしかして、見えてないのか?
なら、
「スキル名なんて書いてある?」
「え?えっと、回避と創造(剣)だよ?」
……やっぱりだ。
何で能力測定器が鑑定出来ない理由も分かったかもしれない…
つまり─────
スキル【死神】は、僕にしか見えない
それなら合点がいく。
鑑定が出来なかったのも、由が見えないのも…
でもまた謎が現れた。
何故、僕にしか見えないのか?
使えないスキルで、相手には見えないスキル…
本当に謎のスキルだな、【死神】って…
なんの為にあるんだ?
「龍くん?どうしたの?」
「え?あ、いや…やっぱり僕は弱いなっと思って」
「そ、そんな事ないよ!大丈夫だよ!ここで学べば強くなれるはずだよ!」
「そうかな?」
「そうだよ!だから、元気だそうよ!」
由の言う通りだ。
まだ、始まったばかりだ。
まだ可能性はある。
よし、と気合いを入れると、教室がうるさくなり前に人集りが出来ていた。
その真ん中に面倒くさそうな顔をしていた霧雨雷雨がいた。
「霧雨…雷雨……」
神器使い……
そんなチートみたいな物を持っている彼を、僕は少し憧れを持った。
彼みたいな力があれば、あの時……そんな叶わない望みを夢見てしまう…
そんな彼が今ステータスを見せていた。
僕と由も見に行くと、そこには圧倒的力の差を感じさせるものがあった。
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霧雨雷雨
力 S
速 SS
守 S
体 A
魔 S
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「つ、強すぎる!?」
「しかも速さがSSって、どんなチートだよ!?」
そんな声が聞こえてきた。
次元が違いすぎる……
こんなの初めて見た…
由も口を開け、固まっていた。
霧雨雷雨……
彼は間違いなくこの学園の最強だ─────
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