暇人
6月25日 木曜日
アリスが宣言した合宿決闘は、あと1日で終わりを迎えようとしていた。
今日は、いつも通り男子vs女子の戦いが繰り広げられていた。
やはり騎士団の訓練兵でもある女子達が1番勝率は高かった。
男子でも、女子に勝ったのは数人だけだ。
その中に龍と雷雨は入っていない。
何故なら、あの後雷雨がアリスに直接愚痴を言いに行き、アリスに龍と雷雨だけ参加無しで良いと言われたのだ。
なので龍は、エルセとの戦い以来誰とも戦っていない。
「……暇だね」
「……そうだな」
龍が呟くと、雷雨がそれに同感した。
あれから、戦わず観戦しているだけの暇人になってしまった。
「……ねぇ、雷雨」
「……言わなくても分かる」
「……じゃあ――」
「俺と決闘するぞ」
「………僕に死ねと?」
「なんでだよ」
「いや当たり前でしょ!?何でそう不思議そうな顔するの!?」
「大丈夫だ、お前ならいける」
「いや、いける要素0なんだけど……」
しかし、ここで愚痴っても何も変わらないと思い、雷雨との決闘を渋々承諾した。
しかし、それを止める影が2つ接近していた。
「ちょっと兄貴!ルールを無視しようとしないでよ!」
「……何だよ、妹よ。藪から棒に……」
「兄貴がアリス様が作ったルールを無視しようとするからでしょ!」
「どうでもいいだろ」
「どうでもよくない!それに私、龍さんと戦ってみたい!」
「……僕?」
「はい!あのエルセさんを追い詰めた龍と1度戦ってみたいんです!」
「ぐ、偶然だよ?あれは」
「それでも!です!」
「……分かったよ」
「ありがとうございます!」
こうして龍は、戦う相手が雷雨から風明に変わり、決闘を行うことになった。
風明の期待に答えられるか心配な龍だった。
しかし、この時はまだ誰も気付いてなかった。
先皇国最大の危機が近づいている事に……