友達
決闘が終わり、雷雨が訓練所から退場して行った後、アリスさんが
「全校生徒の諸君!此度の決闘を最後まで見届けてくれてありがとう!」
礼を言い、頭を下げた。
「我ながら勝手な行為を許してほしい。だがこれが、この男子校を招き入れた理由である事を理解して欲しい!」
アリスさんは、観覧席にいる皆を見渡しながら説明した。
「この合宿の説明をすると、目的は男子と女子の決闘が目的だ!」
僕は、アリスさんが説明している時に観覧席を立ち、雷雨を探しに行った。
雷雨は、訓練所の裏にいた。
「……クソッ」
愚痴を零しながら、壁を殴っていた。
「……クソックソックソッ!」
「………雷雨」
雷雨は、僕の存在に気付くと壁を殴るのをやめ、振り返った。
「……龍……ごめん……」
「なんの事?」
「……俺……勝てなかったわ」
雷雨は、笑った。
しかし、その笑顔は作られた笑顔だとすぐ分かった。
「……あんなかっこつけて言ったくせに……何も出来なかった」
「……」
「……俺……役に立たねぇな」
雷雨はそう言い、俯いた。
僕は、俯いている雷雨に
「そんな事ないよ」
と、応える。
「……何言ってるんだ?俺はお前に何も――」
「僕は、雷雨に色んなところで助けられてるよ」
僕は、思い出すように話す。
「雷雨がいたから、僕は死神の事が分かった……雷雨がいたから、ツクヨミの力を手に入れることが出来た……雷雨がいたから、僕はここまで来る事が出来た」
「それは全部お前の――!」
「雷雨が!」
「!?」
「雷雨が……友達でいてくれたから……僕は前を向けたんだ」
「………」
「全部……雷雨のおかげなんだ……だから、僕は君を馬鹿になんかしない」
「……だが」
「僕は君がしてくれた事を全部返すことは出来ない……僕は弱いから……でも、僕は少しでも返すことが出来たらいいなって思ってるんだ」
「……」
「だから……雷雨」
僕は手を差し伸べる。
「友達になってくれる?片方に負担かける友じゃなく、協力し合える友達に」
もう一度、友達になってくれる事を信じて……
「……フッ」
雷雨は笑った。
その笑顔は、作られた笑顔じゃなく、本心からの笑顔だった。
「……あぁ、俺も……もう一度、友達になりたい。今度は、協力し合える友達に」
そして雷雨は、僕の手を握った。
こうして、僕と雷雨は再び、友達になった。
今度は、迷惑をかけるのではなく、助け合う友達に……
その後、雷雨からこの決闘の事を詳しく聞き、アリスさんの元へ向かった。
「おい、アリス」
「ん?あぁ雷雨君、それに龍君も一緒か」
アリスさんは、僕を見ると少し悲しそうな顔をしてような気がした。
「決闘で負けたのは俺だからな、早く言え」
「あぁ、勝ったら一つだけ願いを聞くってやつだね?」
「あぁ」
「んーそうだね……」
「………」
アリスさんはしばらく悩んでから思い付いた顔をした。
「そうだ!なら君には雑用係になってもらおう!」
「雑用?」
「基本的には掃除だね。掃除するメイドさん達が今忙しくて出来ていないところの掃除をお願いしたい」
「掃除……だと!?」
「それでいいかね?」
「フンッ、いいだろう。その雑用係をやってやるよ」
「なら、僕も手伝うよ」
「いや、龍は関係ないだろ?」
「でも、この決闘自体僕の責任だと思うんだ」
「そ、それは……」
「それに、友達1人に任せるのは気にかかるからね」
「!フッ、そうか」
「僕も雑用やってもいいですよね?」
「まぁ、増えてくれるのは有難いことだが……」
「ならやります!」
「そうか、ではよろしく頼むよ」
アリスさんから場所を聞き、僕達は今から向かおうとしていた時、アリスさんに止められた。
「ちょっと待ってくれないか」
「何だ、早くやった方がいいだろ」
「それとは別の件だ」
そう言い、アリスさんは僕をみた。
「龍君」
「は、はい」
「……すまなかった」
アリスさんは頭を下げ、謝罪した。
(なんだろう……今日その人頭下がるの多くない?
いや、そんな事置いといて!)
「何がですか?」
「君を騙していたことだよ」
「あぁ」
「本当に君には申し訳ないことをした。どうか許して欲しい。いや、許してほしい等とおこがましいかもしれないが、どうか結菜君を許して欲しい!」
「えっと、結菜って誰ですか?」
「あぁすまない。由君のことだよ。任務のために偽名を使っていたんだ」
「…そうなんですか」
僕は、少し悩んだ。
それから僕はこう応えた。
「……今は分かりません。でも、僕は由に対して怒る気はありません。勿論アリスさんにもです。ですが、今は出来れば会いたくない気持ちです」
「……そうか」
「では、僕達は掃除してきます」
「……あぁ、よろしく頼むよ」
僕は、雷雨と一緒に掃除する部屋に向かって走った。
僕は、由に怒りなどはない……けど、会いたくないって気持ちがある。
だけど僕は、もう一度、あの光景を再びみたいと思った―――
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