龍の過去
5年前
私は、馬を走らせアラン村に向かっていた。
まさか魔物の大群が、守っていた村の反対側の村に襲撃するなんて……
「速く…速く行かなければ!!」
仲間達を村に置き去りにし、私一人で向かっていた。
アラン村に着いた時、私は驚愕した。
村が酷い有様になっていた。
しかし、それ以上に驚いたことがあった。
それは―――
「…何故……魔物の死体も転がっているんだ?」
人間の死体は、悔しいがあるのは分かる。
しかし、魔物の死体も残っているのは些か不自然だ。
何故なら、本来魔物を倒すと奴らは消え果てる。
しかし、この村に転がっている魔物は形が残っていた。
生きているかどうか確かめると、
「……死んでいる」
案の定、転がっている魔物全部……死んでいた。
そして、驚きなのが今私がいる場所がまだ村の入口付近だということだ。
私は、警戒しながら前に進んだ。
進む事に人間と魔物の死体は増えていき、そして村の中心に辿り着いた。
そこで目にしたのは―――
村の中心で、気を失っている無傷の少年を見つけた。
私は、急いで駆け寄った。
その少年は体温が低くなっているが、息はしていた。
私は、このような悲惨な場所でたった1人の生存者がいてくれたことに嬉しくなり、少年の体温を温める為急いで帰還しようとした。
そこで不思議に思った事があった。
それは――
少年が倒れていた場所だけ、魔物の死体が転がっていなかった。
辺り一面、死体だらけで地面も余り見えないくらい転がっているのに、少年のいた場所だけ、何も転がっていなかった。
不思議に思ったが、今は少年の命を優先し、私は先皇国に急いで帰還した。
帰還し、医師に少年を任せ、今度は仲間も一緒にアラン村に向かった。
アラン村の人達の死体を集めている時だった。
私は一つ一つ家を見ていた時、死んでいたと思われていた遺体が喋ったのだ。
「……龍…を……おね…がいし…ます…」
ご遺体は老婆のものであった。
そして、老婆の言葉…
私は、すぐあの少年の事だと理解し、老婆に頭を下げた。
「……お任せください」
私が返事を返した時、老婆は息をひきとった。
私は、その時に決意した。
あの少年を、悲しませてはいけない
私は、彼を……龍君を見守り続けよう
「まぁ、帰還した時、龍君は逃げ出してしまったんだけどね」
アリスの話を聞き、由と風明は泣いていた。
「……辛かったね…龍くん…」
「龍さんにそんな過去が……」
「そのあとは、彼を目撃していないか確認し、そして彼がアルバイトをしているのを知り、何でバイトしていかも突き止め、そして、私の代わりに彼女にお願いしたのだ」
「……なるほど、だいたい分かった」
「何か気になる事があるか?」
「……あぁ、あるぜ」
「グスン……兄貴?」
「質問だが、何故学校まで監視を寄越したんだ?」
「……」
「龍を見守る為とか言って、無関係なやつを巻き込んで龍の友達にさせる……そんなで龍が喜ぶと思ったのか?」
「……確かにそうだね」
「これを聞いたら、龍がどんな顔するか分かってやってるのか?」
アリスはこの日初めて、暗い顔した。
雷雨の言ってる事が正しいので、反論も出来ず、自分の不甲斐なさを悔やんでいた。
「……言っとくが、俺はこの事を龍に伝える」
「そ、それだけはやめて!」
「じゃあ、黙ってるつもりか!?ふざけるな!コイツの監視役として、お前と仕組まれた友達になったんだぞ!?龍は何も知らず、初めてできた友達ってずっとおもっているんだぞ!?心苦しくないのか!?」
「それは……」
「そう言えばここは男嫌いの学校だったよな?だから友達って思っている龍の気持ちなんてどうでもいいんだろ?」
「ッ!そんなことない!!」
「嘘つくな!!お前はただコイツのお願いで龍に近付き、友達になり、龍の事を逐一報告してたんだろ?そんな奴にどうやって龍の気持ちがわかんだよ!!」
雷雨はブチ切れ、由に怒りを撒き散らかす。
その時、由の眼から涙が零れた。
「…最初は…そうだった……でも今は違う!僕は…アリス様からのお願い抜きでも……龍と友達に…なりたかったんだ…」
「今更そんなこと聞いても、同情もできねぇよ」
「兄貴……流石にそれは言い過ぎじゃないかな…」
風明は、怒りが爆発してる雷雨を睨んだ。
「……俺は今からこの事を龍に伝える。どう思うかは龍次第だが、絶望すると思うぞ」
「……」
雷雨は、扉に向かって歩き出した。
しかし、雷雨は扉の前で立ち止まった。
「なぁ、アリス・インデカーネ…」
雷雨は振り向き、アリスに指を指した。
「俺と勝負しろ」
「…勝負?」
「あぁ、俺が勝ったたら、金輪際龍に近づくな」
「私が勝ったら?」
「お前が決めろ」
「ちょっ兄貴!」
「……いいでしょう。その勝負…受けて立ちます」
アリスは席を立ち、マイクのようなものをスイッチを入れ、
「今から、私…アリス・インデカーネ対霧雨雷雨君との勝負をする。場所は、訓練所……そこで今練習中の生徒はすまないが練習を切り上げてほしい。放送は以上だ」
アリスが全校放送すると、雷雨の方をみた。
「これで準備が整った。昼過ぎに勝負を始めよう」
「……分かった」
そして、雷雨は部屋を出ていった。
それと同時に、外が騒がしくなった。
「負ける訳にはいかないね」
アリスは、そう言い笑った。
それを自室で聞いていた龍は―――
「………嘘でしょ?」
見て下さりありがとうございます!
ブックマーク等登録してくだされば、今後の投稿の励みになります!
是非とも、よろしくお願いします!