災厄の主
あれから、数分が経過している――
雷雨はまだ、戦い続けている――
何千というなの魔物を相手に――
気を緩めることなく、ただひたすらに刀を降っていた――
「ハッ!!」
「GAaaaa!!」
「オラァ!!」
「GAaaaaa!!」
「チッ!キリがねぇな」
雷雨は悪態をつくが、刀を降る速度は変わらなかった。
「……凄い」
由は、雷雨の戦いを見てそう呟いた。
確かに、雷雨は凄い。
誰もが恐怖するこの状況に対して恐れることなく前を踏み出し、戦っている。
しかも着々と魔物達の数が減っていた。
これは行けるんじゃないか?と、人任せながら期待をしていた。
しかし、そんな事は無理だということに気づいた。
そう、雷雨は段々反応速度が落ちていたのだ――
最初は、簡単に防いでいた攻撃を今は少し苦戦して凌いでいる。
「……彼の体力はもうすぐで尽きる」
坂本先生は、そう言った。
「…何故ですか?」
「彼は神器で全てのステータスが膨大に上がっていますが、多分、彼は魔力が余りないのでしょう。だから、神器を使用する魔力が失くなり掛けているのでしょう」
由の質問に坂本先生は慎重に応えた。
つまり、今の雷雨は魔力が失くなり掛けながら、魔物と戦っているのだ――
そして、そろそろ雷雨の魔力は尽きる。
それなのに、ここで最悪の魔物が現れてしまった。
「なっ!?あれはレベルAの魔物!?」
レベルA:ザング・グリル……
熊の魔物で、体長20mはある狂暴な魔物だ…
爪は凶悪で、一度斬り裂いたものは必ず噛み殺す…
そして、僕達が聞いたあの雄叫びの声の主だ――
「よりによって、ザング・グリルが現れるとは!!」
「これじゃあ、雷雨が危ないよ!」
「雷雨!!逃げろォォ!!」
「ハァ、ハァ、ハァ」
「Garrr……」
「チッ!最悪だな…」
(もう魔力は残ってない……どうする?)
雷雨は、思考を巡らせるが何も案が浮かばなかった。
(だがまぁ、やることは変わらねぇ!)
「来い!!お前を斬り伏せてやるよ!!!」
そして、余り残されていない魔力を使い、凶悪な魔物に斬りかかった。
雷雨は諦めず戦っている。
それなのに、僕は何をしている?
友達があんなに頑張っているのに……
そう考えている間も雷雨は、押されていた。
「グハァ!!!」
「ッ!?雷雨!!」
そう呼び掛けるが、足が動かなかった。
最悪だ…
よりにもよって、こんな時に僕の癖が現れた。
(クソ!!動け!!動け!!)
それでも、自分の足は動こうとしない。
何故なら頭でもう分かっていたからだ。
自分が行った所で何か変わることはあるか?
ない…
何かこの危機を脱する方法を知っているか?
知らない……
死神を使って助けるか?
それだともしかしたら、雷雨や由達を殺すかもしれない……
僕は、何も役に立たない臆病者だ……
友達を助ける事すらできない…
いや、友達と呼ぶ資格がない…
雷雨が苦しんでいるのを見ているだけ……
「ゲホッゲホッ!!」
雷雨は口から血を吐いていた。
なのにまだ挑む。
「グッ!!ゼァァァァァ!!!」
「GAaaaaaaaaaa!!!」
雷雨はまるでオモチャのように弄ばれている。
「ッ!!」
何で……
何で僕には力が無いんだ!!
何でいつも見ているだけなんだ!!
今も、あの日だって!!!
僕がいるから、他の皆が死ぬのか?
僕が弱いから、皆が見殺しされるのか?
もう僕の前で見殺しにされるのは嫌だ!!!
もう見とくだけなのは嫌なんだ!!!
誰か……僕に………
僕に………皆を守る力を……
≪………いいよ≫
「え?」
その声が聞こえてると、僕の視界は、
黒に染まった―――
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