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時計の針は左に進む  作者: 深月 愛
一章
7/34

メッセージ〜受信〜


ー藍子ちゃん から 1件のメッセージー



んぐっ……


サンドイッチを喉に詰まらせながら

慌ててメッセージアプリを開く。

焦り過ぎて別のDMに触れてしまう。


まるで漫画みたいだが、

あれはあながち本当の表現らしい。


やっとの思いで彼女からのメッセージを開くと、

思っていたより長めのメッセージがそこにはあった。


『わざわざ探してくれてまでメッセージありがとう。

返事遅くなってごめんなさい。

実は、今週営業時間が長かったから、

バタバタしちゃってて(><)

今日明日はようやくゆっくりな営業ができそうです』


そして、ぺこりと謝っている猫のスタンプ。


ただそれだけで、僕のテンションはだだ上がり。

今すぐ返事を…と、考えては消し…を繰り返す。

そのうちに…


「結城さん、お客様お願いします」


結局送れないまま、あっさりタイムリミット。

スマホを一旦消して、ポケットに戻す。

仕事モードに切り替えなくては…


しっかりそう思ったけれど、無理だったらしい。


「あら、マサ、良いことでもあった?」


マダムにあっさり見透かされた。

一生懸命余裕な顔を選んで、


「え?なんでですか?」


と、白々しい嘘をつく。


「わたしには隠しても無理よ?

あなた…恋でも知ったかしら…クスクス…」


そう言って楽しそうに笑うマダムに、

つい赤面してしまう。無言の肯定だ。


「ほんとに?驚いたわね…

でも、嬉しいわ?やっぱり人間恋しないとだもの。

これで、あなたの腕ももっと上がるわよ」


「そんなもんですかね?」


マダムの言葉の意味はその時はまだわからなかった。

けれど、自信たっぷりにそう言われると、

それは間違いないんだと思ってしまう。


マダムにはそういう力があった。


「だと、良いですけどね」


そう笑いながら言って、すぐにシャンプー台へ。

僕の長いお客さんたちは、

シャンプーをアシスタントにはやらせたがらない。


自分がアシスタント時代から

一生懸命磨いてきた技術の一つだから

そう言ってもらえるのは本当に嬉しい。


「お湯流しますね」


好みも全て把握した湯加減、力強さ。

シャンプーの香りのチョイス。


いつか、彼女の好みも全部知れる日が来るだろうか。

好きな人の髪を洗うのは、どんな感じなのか…


ふと、そんな事を思い浮かべてしまう。

恋は盲目…確かにな…

仕事中だというのに、彼女のことを考えてしまう。

早く返信がしたい。この後うまく時間が空くだろうか。


彼女はどういうつもりで、ようやく落ち着いたと知らせてきたのか。

今日や明日なら、ゆっくり応対できるよ…って意味かな?

僕にきて欲しいとか…いやいやいや…それはないだろ…


色んな事が頭を埋め尽くす。

ふと、自分の下から笑い声が漏れる。


「ふふ…あなた…

今好きな子の事考えてるでしょ?」


なんでわかったんだ!


「そんな事ないですよ?」


出来るだけ普通を心がける。


「嘘おっしゃい…。いつもより手つきが優しいわ?

まるで、私があなたの大切な人かもって

勘違いしちゃいそうよ?クスクス……」


そんなにあからさまに出るわけない。

からかわれているんだ。

僕はその時はそう疑わなかった。

でもそれが本当だとわかるのは、まだ先の事だ。

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