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時計の針は左に進む  作者: 深月 愛
四章
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有頂天

自分のせいで、藍子を一人店に残してしまった。

本当なら、明日休みの僕はちゃんと朝まで藍子に付き合うべきだと思う。


気持ちはそう思うのに、朝からの怒涛の忙しさに耐えた身体は

全く言うことを聞いてくれなかった。


謝罪文への返信が来てから、

いつものように他愛のないやり取りが続いていた。

けれど、気を抜くと意識が遠のいて、

ハッとしてスマホを見る。


彼女に返信するまでの間隔がだいぶ開いてしまう。

ついに今、彼女からのメッセージは30分も前に届いていた。


そして、勘のいい彼女は僕が睡魔と戦ってることを察している。


『無理しないで、眠かったら寝ちゃっていいからね。

明日、起きたら連絡くれればいいよ。

頑張った分、ゆっくり身体休めてね』


僕はとうとう諦めて、部屋の電気を消した。

そして、今日最後のメッセージを打つ。


『ありがとう。藍子ちゃんも明日無理しないで。

僕のせいで、ごめn…』


そのメッセージを打ち終える事なく

僕は深い眠りについていた。




「ん…」


翌朝、しっかり閉めなかったカーテンの隙間から差し込む

朝と言うには強すぎる光が僕の意識を覚醒させた。



「朝…か?アラームなってない?!」


一気に意識がはっきりする。

そして慌てて時計を確認した。


「あ…そうか、休みか…」


デジタルな文字が[Mon]と表示していた。

仕事がない事にホッと息をつき、

まだ気怠い身体を布団の中で伸ばしながら、

昨日の疲れを引きずっている事に気づく。


ふわぁ……


大きく欠伸をして、陽射しから顔を背けると

充電が完全に切れているスマホが転がっていた。


「あれ…充電しなかったんだっけ…ん?」


何か大切な事を忘れている気がする…

いつもなら確実に充電器を挿して寝るはずなのに…


その瞬間、夜中の藍子とのやりとりを思い出した。


「うわぁ!」


今度こそ僕は飛び起きて、慌ててもう一度時計を見る。


「11時?!やばい…」


慌ててスマホに充電器をさしこむが、

完全に0%になった端末はなかなか立ち上がらない。



ただでさえ朝帰りさせてしまった藍子に

何も連絡しないままこんな時間になってしまった。

眠ることもできずに待たせているのではないか。


僕は気ばかりが焦る。

漸く立ち上がったスマホの画面を

イライラしながら見つめる。


やっとホーム画面が表示されると、

すかさずメッセージアプリを起動した。

自分の打ちかけのメッセージが同時に目に入る。


「しかも寝落ちしてる…」


彼女からは、まだ何も連絡はなかった。

きっと、昨日から心配してくれていたから

起こしたら悪いとでも思っているのだろう。


僕は慌てて書きかけのメッセージを消して、

寝坊したことを伝える文章を送った。


『ごめん…今起きた(T . T)

昨夜も寝落ちしちゃったみたいでごめん』


ひとまずそれを送ると慌てて着替えを始める。

自分から誘ったデートなのに、大失態すぎる。


ブーブー


送って数分でスマホが鳴る。

勿論彼女からの返信だった。


『おはようハルト君(^-^)

ゆっくり休めたかな?謝らなくて大丈夫だよ。

今日はゆっくりおうちで身体休めた方がいいんじゃない?』


彼女こそ寝落ちしててもおかしくないのに…


『おはよう藍子ちゃん。

もう寝過ぎちゃったよ…(><)

時間短くなっちゃうけど、

藍子ちゃんが大変じゃなければ逢いたいな…だめ?』


彼女は僕を労ってくれるのに、

僕はといえば、彼女を休ませてあげることもせず、

自分の逢いたいという欲求を優先させている。


でも、今日を逃したら次いつ逢えるかわからないから。

きっとランチはできる。けど、それも自分の休憩時間だけ。

今からでも逢えれば、それよりはずっとゆっくり時間を過ごせる。


返信も待てずに、急いで洗面所に向かった。


きっと彼女は逢ってくれる。


ずるいけど、その確信はあったんだ。

だから僕は顔を洗い、髪を整える。


充電を挿してるから、スマホが手元にないのがもどかしい。

離れた場所でバイブレーションが鳴っている音がした。


一通りの支度を終えて、寝室に慌てて戻り、

彼女からの返信を確認する。



『私はもちろん大丈夫だよ?

でも遠出だと時間勿体ないし…

もうすぐお昼だから、ハルト君のお家でご飯作ろうか?』


その文章を何度も見直した。

何度読み返しても、彼女が家に…?え?

僕は慌てて部屋を見渡す。


元々物は少ない方だから、馬鹿みたいに散らかってはいないけど、

最後にいつ掃除したっけ…大丈夫か?これ…


すると、すぐにまたスマホが震えた。


『ごめん、急におうちって言っても困るよね(^^;;

私はどこでもいいよ』



「どうしよう…」


正直、彼女を家に呼びたい気持ちがあった。

何度も何度も、この部屋で笑っている彼女を想像した。

誰にも気兼ねせずに藍子を独り占めできる…

それだけでも贅沢なのに、ご飯まで作ってくれる?


もう一度僕は部屋を見渡した。

藍子の家からうちまで、どんなに早くても30分はかかる。

1時間と思えば、簡単な掃除はできるだろう。


『え?藍子ちゃんがご飯作ってくれるの?

めちゃくちゃ嬉しいんだけど!』


僕はそれ以上考えるよりも早く、そう送っていた。

そして、彼女からもすぐに返信が来る。



『わかった!じゃあ今から向かうね。

駅からおうちまでの間にスーパーある?』



凄い…夢にまで見た“お家デート”だ。


『スーパーあるよ♪

俺、駅まで迎えに行くね。一緒に買い物しようよ』


新婚さんみたいでしょ?


そう送りたかったけど、流石にそれは我慢した。

昨日の疲れもとっくに吹き飛ぶくらい、

僕は、完全に舞い上がっていた。



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