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時計の針は左に進む  作者: 深月 愛
四章
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心がかり

9月が終わろうとしている。

あの事件から一ヶ月半程がたった。

彼女は、一度も店を休まなかった。


今までは月曜が休みと言っていたから、

僕の休みと被ることが多かった。


だからそのたびにデートに誘うけど、

一度も応じてくれることはなかった。


けれど、ランチの誘いは受けてくれる。

だから、本当に休んでいないのだと思う。


その日も、僕は予約が落ち着いていたから

彼女を午前中のうちにランチに誘ったんだ。




『今日、外で食べれそうなんだけど、

また一緒にどうかな?気になるイタリアン見つけたんだよね』



『今、お店で仕込みしてるから14時くらいならいけるかな』



「えっ?」

その返事を見て僕はつい声を上げてしまった。


「結城さんどうしたんですか?」


近くにいたスタッフが不思議そうに訊いてくる。


「あー、ちょっと最近クイズアプリにハマっててさ。

答えが意外だったからびっくりしちゃった。あはは!」


「今流行ってますよね、あれ。

でも、もうすぐオープン時間ですよ?」


「仕事中にやるわけないだろ?」


そんな会話でなんとか誤魔化した。

けれど、彼女からの返事に驚いたのは確かだった。



(昨日も終電逃してたのに…大丈夫なのかな…)



おあいこ屋の営業中は、

暇ではない限り返信はほとんどない。

それは当たり前のことだし、

その間に僕は晩ご飯を食べたり、

お風呂に入ったりと過ごしていた。


色々すませてゆっくりしようとする時間に

彼女からの返信がくるのだ。


でも昨日は1時を過ぎても音信不通だった。

心配になった僕は、何度もメッセージを送ってしまった。


恋人でもないのに…


そうは思ったけれど、送らずにはいられなかった。

結局、2時半を回った頃に

最後のお客さんの相談に付き合っていたら

終電を逃したからタクシーで帰ると返事が来たのだ。


そして、タクシーの中から明け方まで

僕たちはずっと連絡を取り合っていた。


なのに、朝の9時半を過ぎた今、

既に彼女は仕事をしている。



(いくら仕込みとはいっても…)



いい加減心配になる。

結局、先日の後輩との会話で浮かんだ疑問を

僕はその日まで聞けずにいた。

だから、その日のランチで

ちゃんと突っ込んで聞こう…そう思った。


その笑顔の裏に、何かを隠してる事はないか…って。


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