海底を漂うもの ルルロエンガ
何重にも巻かれた脈打つ荊の固まり。
神聖や妖精の類ではなく、海に落ちて朽ちた魂を食らいながら海の底を漂うもの。海に堕ちた魂の道案内人とも称されることがあり、その理由としてルルロエンガは揺らぐ炎のような夕方色を点滅させる様子が魂を導くランプに見えるからと海に出向く者は言う。
光を放っているのはルルロエンガの心臓であり、死んだものの魂はルルロエンガの荊によって捕まえられ、心臓に直接食い荒らされてしまう。ルルロエンガがランプのように点滅するのは魂を喰らう時に心臓がその魔力を受け取って発光するからである。
ルルロエンガは海に堕ちた魂を食らって生きながらえるが、その魂喰らいのせいで魂の凄まじい重さで海底から這い上がることができない。そのため神に匹敵する力を持ちながら、神聖にかけるために神になれず、また審判の神リィタンラはその海底から這い上がることができないそれをルルロエンガだけの地獄として永遠に他の地獄に落とさないことを取り決めた。神からも悪魔からも見放された孤独のルルロエンガだけの地獄のことを海岸に住む人々は『ウェルブル・アノ(孤独の底)』と呼んだ。
ルルロエンガは自身の心臓の重さには耐えられず浮上はできないが、荊状の触手を使って舟から落ちて溺れかけた者を海底に引きずり込んでいる。
そのため北国の海岸に住む漁師たちは風習として曇った夜には漁船を出さず、ルルロエンガが人間の女性が出す悲鳴のような音を荊の触手から発するため、その音が聞こえたら水面を見ないようにしている。
ルルロエンガは人間の女性のような悲鳴を出すと言われているが、歌っている声を聞いたというものも少なからずいるらしい。しかし、ルルロエンガの歌は『海のこの世』と『海のあの世』を繋ぐ理を破る恐ろしいことの前触れであるという海の魔術師も多い。