兄貴
リディアの港のBOSSウルフクラウド、青い毛並み、足先や尻尾の先、
鼻の先、首の襟毛が白い、狼のようなBOSS、
いや狼、巨大な狼、旭は最後の抵抗とも取れるウルフクラウドの複数の風の攻撃、
そしてウルフクラウド自身の突進とも思える前足による引っ掻き攻撃を難なく躱す、
そしてロングソードで止めの連撃を放った。
ウルフクラウドは一次消滅し、アニマの結晶だけを残す。
「まったく大変強いな旭、ウルフクラウドをあっという間じゃないですか」
「まーウルフクラウドは体力少ないし、もう半年だしねぇ…」
旭はアニマの結晶を回収しながらそう言った。
「さすが『脳筋の相棒』といったところですか」
「いやーそれほどでも~」
旭は左手で自身の頭を撫でながら目を細めニヤける、
「ジョージ、あんまりこいつを褒めるな、調子に乗り過ぎるきらいがあるからな」
龍人は左肩に乗るジョージの首筋を撫でながら忠告をする。
「なにその言い草、ちょこっとくらい調子に乗ってもいいじゃない」
「まぁそうだがな、
そのタイミングは俺がいつも微妙~な絶妙なタイミングで調節してるからなぁ、
第三者が介入するとバランス調節できん」
「なるほど。気をつけよう」
ジョージは納得したのか軽く頷き了承する。
「…なんか龍人の手のひらで調教されてるみたいでいやなんだけど」
「おっぱいは俺の手のひらと舌で調教してるじゃねーか」
龍人は左手でニギニギしながら言った。
「なっ、さいってぇっ、そんなつもりで揉ませたり吸わせてるんじゃないのにッッ」
「結果だいたいそうなるだろ。男と女なんて…」
「…そりゃそうかもだけど調教っていう言葉に抵抗があるのもしょうがないじゃないっ」
「まーそうだな、悪かった、バランスを保つために、
お互いに調整しなきゃいけないってことがある。
全てを用いるつもりじゃないと辿り着けない、
自惚れも調子に乗るのも必要だが、
踏み外す可能性をいたずらに上げすぎるわけにも行かない、
まぁ俺が臆病過ぎるから今くらいのは本来許容範囲だったな、
少し過干渉で過剰反応だったすまん」
「やっぱりバランス取るのって難しいね、
そうやって龍人は解説してくれるから納得はできるけど。
普通の人そこまで説明できないよね」
「まぁな、今どうしてその行動を取ったのか、
やっちまってから冷静に分析するからな、
やっちまうのを止めることは出来ないが、まぁ作家の性、職業病だな。」
「なるほどねぇ、まぁそれはともかく、
…ここの街道抜けたら私にとって初めてのステージ、
野盗の王のいるステージなんでしょ?
あの時は途中の街道までしか行かなかったからよくわかんないけど」
「ああ、そうだ、俺も久しぶりだ、『あいつ』元気にしてるかな」
『仄暗い野盗たちの楽園』に向かう道中、
見慣れた生者に出くわす、
そう、東亜人、デミカス・ライセン一派である。
「よう、久しぶりだな今日も今日とて『俺と戦え』か?」
龍人から珍しく声を掛ける。
「いや、それは間違いだ、俺はあんたに勝ちたいわけではなかったようだ。」
「お? なんだジャックの助言が聞いたのか? 成長したようだな」
「さあな、ジャックには感謝してる。礼を言いそびれないで良かったよ」
「それで、おまえは何を目指すんだ?」
「俺は言いたくねえがあんたに憧れた。あんたの強さに憧れた。
だが俺は自分すら守れねぇ、誰も守れねぇ、せめて、抵抗する力がほしい、
負けてもいい、死んでもいい、納得する力がほしい、
それが俺の目的だ。目標だ、あんたに届かなくても良い、俺はあんたを目指す、」
「…まぁ頑張れ、俺にしてやれることは少ないがな。先を急ぐんでな、またな、デミカス」
「ちょ、ちょっとまて、」
「? なんだよ、手短にな」
「あ、兄貴と、呼んでいいか?」
「は?」
「え?」
龍人と旭は予期していなかった展開に間抜けに声をそう発した。
「あ、兄貴ぃ? やめてくれよ、なんだそれは」
「いいだろ、別に毎日会うわけでもない、呼ぶわけでもない、」
「…龍人それくらい許してあげたら?」
「むむむ、わかったよ、だが、ついてくるなよ、
それを守るんなら兄貴だろうがなんだろうが勝手にしろ、」
「ああ、龍人の兄貴、感謝する。」
デミカス一派に見送られながら旭は笑いをこらえている。
「ッッッ(龍人の兄貴www)」
旭は口を自身の両手で抑えて大笑いしそうになるのを堪えている、目は完全に笑っている。
「旭、おまえなぁ……」
龍人はそんな旭を横目で目を細めて眉根を寄せて歪めながら嫌そうにそう言った。
「よかったですねデミカスの兄貴、」
「兄貴に兄貴ができたのか…感慨深い」
徐々に離れていく龍人と旭だがデミカス一派の声が嫌でも聞こえてくる、
「龍人の兄貴は人気者だなぁ(笑)」
「やめろぉぉぉッッッ~~~」
「龍人の兄貴、しっかり前を見て歩いてください、転んだら大変ですぜ?」
「ジョージにまでぇぇ~~~~(涙)」
兄貴ィィ




