ジャックとデミカス
始まりの狩人と亡者の森、
とある場所にジャックとアリスはいた、
陰鬱な他のステージより、
この自然に溢れた場所にいたほうが休まる、
そういうことなのかは彼らにしかわからない。
小川のまえで座り佇んでいる二人に来訪者が現れる。
「ジャック、」
「ああ デミカスか、今日は一人かい?」
デミカス・ライセン、青髪の東亜の生者、
今日は他の二人、
ヘイン・ラーゼン、バルトス・ガイゼンはいない、
「二人は今日は別行動だ、俺にも小さくともプライドはある、
あの二人には教えを請う俺なんぞ見せたくねぇ」
「…見せても問題はないように思うが、
まぁキミが今そう感じるのならそれはそれでいいだろう。
アリス、少し席を外してくれないか?」
「わかったわジャック 適当に亡者と戯れてるわ」
「ああ、すまない」
状態が思わしくないアリスではあるが、
さすがにこの森の亡者やオーガ程度に遅れを取る可能性はゼロである。
ジャックはアリスをこの場から移動させた。そして問う、
「で、キミは何を望む」
「強くなりてぇ、あの吾妻龍人を倒せるくらいに」
「無茶を言うなキミは、彼の噂くらい聞いているはずだろう、
幾年もこの世界に居る異端、脳筋、
おひれが付く噂なら聴き込めばもっとあるだろう…、
キミは…この世界に来てどれくらいだ?」
「…1年もいない、数ヶ月ってところだ。」
「…単純な話だ、この世界に居た時間だけ差が開く、
単純にステータスの話だがね」
「そしてキミがたとえ同じステータスを有したところで現状龍人には勝てないだろう」
「なんだと?」
「結局のところバランスだ、ステータス、つまり体があり、心があり、技術がある。」
「体と技術があったところで現実で戦うなら心が左右する、
キミが戦う理由が、強さを求める理由が少ないように見える。
言動から声音からそう感じる、雰囲気からそうイメージする」
「……」
「本当に龍人を倒したいのかい?
何度か龍人にやられたようだが、
それでもなお立ち向かおうとうする気概だけは評価できる。
だがそれだけだ、勝つことを目標にするなとは言わない、
目標とは他者に笑われるくらいが丁度いい事が多い、
だが問題は『真ん中』だ。キミは、最低限何を手にしたいんだね?」
「それは……、よく……わからねぇ」
「ならよく考えることだ、過去と現状、最高が龍人に勝ちたいのなら、
最低限どうなりたいのか、それがわかったのなら、
何をすべきが徐々に分かるはずだ、今はこれだけ受け止め、覚えるだけでも良い。」
「……ムカつくぜ、なんでもわかってる感じがよぉ」
「何でもはわかってない。
だが、龍人に挑むならやってあたりまえのことをやっていない、
そういうことだよデミカス、
ムカついて良い、まぁ頑張りなさい。
応援しているよ、
目指すものがあるというのは良いことだ、
おっとこれもまた上からになってしまったね。失礼
ともかくハッスルしたいならヒートしてもいいが
時にはクールに行こうということだよ」
「ちっ、なに言ってやがる、まぁ一応覚えておいてやるよ。
話は終わりか? もう行くぞ」
「何を言っているんだいデミカス、一戦交えようじゃないか」
「あ?」
「それともこわいかね? 龍人以外に負けるのが」
「ああぁ?」
「幸いギャラリーはいない、かく恥は最小だよ」
「いうじゃねぇかジャック、上等だ」
デミカスはブチ切れている、それだけはわかる、
ジャックはやる気満々で闇の衣の柱石を使用した。
「はぁッはぁッはぁッ」
「どうだい、少しは身にしみてわかったかな」
「はぁッはぁッああ、言葉よりもこっちのほうが断然わかりやすいッはぁッはぁッ」
「それはよかった、ならもう言葉はいらないね、
もう行くよ、アリスが待っているからね」
「待てよ、」
「なんだい?」
「せ、世話になった、……あ、…ありがとうよ」
「まさか礼を言われるとはね、見返りは求めないつもりだったんだが。」
「……この世界は明日居なくなるかもしれねぇ、
言える時に言っておかないといけねぇ、
ただそれだけだ。」
「そこは まともなのだな…面白い男だ。
行くよデミカス、また会うなら、その時はまた戦おう」
「ああ、頼む」
デミカスはジャックを見送る、デミカスはつぶやく、
「なぜ、強くなりたい、か、」
「俺は…、俺は………ッ」