疑惑
始まりで終わりの村アイテールに戻ってきた龍人と旭、
そしてユーキリス夫妻、
さすがに旭は通常の服装に戻る、
「で、なんだ、何かの依頼か? 長いならどこかに座ったほうがいいな? 石出すか?」
龍人の質問と提案に何も言わずジャックは龍人の耳元で小声で伝え始める。
「【龍人、二人っきりで話したいことがあります、話を合わせてくださーい、】」
「【? なんだよ、奥さんに言えないことかよ】」
「【そーです、察し良くて助かりま~す】」
「【わかった、合わせよう】」
今度は龍人が旭の耳元に顔を持っていき小声で話し始める。
「【旭、これからおれはジャックと秘密の話がある、
適当にアリスさんと話しててもらえるか?】」
「【? 事情はよくわからないけど、…OK、了解】」
「?」
アリスは怪訝そうにその様子を見守っていた。
「ごめんよハニー、ちょっと龍人に話があるんだ、
旭と女子トークでもしててもらえないかな」
「? そうなの、オーライ、じゃあ旭、
あそこの壁際で椅子を出してベンチで女子トークしましょう、」
「じゃあ雪原のステージのことでも聞こうかなぁ【あと『ハッスル』に関しても】ごにょごにょ」
旭とアリスは壁際の場所にトコトコと歩いていった。
龍人とジャックは丘の方へ移動し、話を始める。
「で、ジャック、どうした、『転生』目指すあんたが、
俺じゃなきゃいけない理由でもあるのか?、
カオスアニマでも賭けて戦おうって話か?」
龍人は先に言い当てようとする、
少し彼の悪いところでもあり、作家だった彼の性でもある。
「そう それだ、前者だ、」
「? 前者?」
「龍人、実はな―――」
『灼熱の黒鉄城』
いつも通りの場所、壁や天井は一律黒の石で統一された、
灼熱の溶岩も合わさった、糞暑い、熱い、糞ステージ、
旭とアリスはあられもない水着姿のような服装で軽やかに戦っている、
「やッッ」
「はッッ」
掛け声とともに同時に各々の相対した灼熱の黒鉄城の騎士を倒す。
「さすがですね、アリスさん」
「旭のほうがすごいよ、まだ3ヶ月弱とは思えない」
「そろそろ休憩しましょうか、暑いの苦手だって言ってましたし」
「そうね、お水飲みながらまた女子トークしましょ」
「はい―――」
〈えっ、私が? 調査?? アリスさんの?〉
〈ああ、二人で『灼熱』でも、『森』でも『ガルデアの塔』でも、
『ヴァルディリス城』でもどこでも良い、〉
〈でもどうして、アリスさんの〉
〈実はな――〉
〈最近アリスの様子がおかしいんだ、
時折ポーッとしてる時があったり、〉
〈そりゃ考え事でもしてるんじゃないのか、
それともお前の夜のハッスル欲求に耐えられなくなって疲れてるとか〉
〈龍人、私、怒りますよ、これは、真剣な話です、〉
〈ははは わりーわりー、
旭以外とあまり話さないから『つい』いつもの『ノリ』で〉
〈旭も苦労してそうですね~、
ともかく休憩中に考え事してたり、するのは問題無いです、
しかしそれが『戦闘中』にまで及ぶとなると、そう言ってられません〉
〈…戦闘中 か、…そばにいるお前がそう感じたのなら、
俺に聞くまでもねぇんじゃねぇか?〉
〈…痛いことを言うな 龍人、確かにそのとおりだよ。〉
おちゃらけた感じがなくなったジャックは深刻そうにそう言う。
〈まぁ、第三者視点での確証を持って、
大事な人に話を振りたい気持ちはわかる、
俺もそうするかもな、いや、それはズルいな、そうするよ、俺でも、〉
〈龍人でもいい、旭でもいい、ホワイトか、グレーなのか、
それとも限りないブラックなのか、
第三者視点での『勘』の鋭き者からの
明確な判断の上の診断結果がほしいんだよ、〉
〈話はわかった、俺じゃなく旭に頼もう、
こういうのは女の勘の方が精度が高いだろう、
それでいいなら受けるよ、ジャック〉
〈…すまない、龍人、恩に着る〉
〈こんな地獄だ、お互いに得になることがあるんだ。
恩に感じる必要はないぜ、
旭も俺以外とコンビを組むのもいい刺激だ、
最近うるさくってなぁ刺激ない刺激がないって、
礼なら旭に言ってやってくれ、言うのは『先』が好ましいかもしれんがな〉
〈…そうするよ〉
「!? アリスさんっもう一人居たッッ気をつけてッッ」
とは言っても、アリスは歴戦の生者、体力もかなりある、
今の状態から死ぬことはまず無い、当然旭もいる、
「……」
アリスは虚空を眺めているような様子で旭の声がけにも反応がない。
「えっ、なにっ、アリスさんッッ」
旭は動揺する、分かっていたとは言え想定していたより遥かに深刻だったのだ、
状況を瞬時に理解できない。
「えっ?」
アリスが気づいたときにはもう黒鉄の騎士はアリスに攻撃を仕掛けていた。
一撃、二撃、三撃、アリスの身体を黒鉄の騎士が切り裂く、
「痛ッッ」
「シッッッ」
「ッッやッッ」
旭が駆けつけ黒鉄の騎士に数撃ダメージを与えた、
アリスもそれに加勢する形でタコ殴り、メッタ切りにし、
黒鉄の騎士は無惨にも討伐される。
「…アリス…さん」
旭は心配そうな顔でアリスの名前を言葉にした。
「ご、ごめんなさい旭、久々の黒鉄城で疲れちゃったみたい」
アリスは罰の悪そうに明らかに言い訳に感じられる言葉を旭に返した。
「う、うんそうだよね、早く休憩しに行こ」
旭もその言葉を嘘として感じるもののこの場は空気を読んでそう返した。




