王と縁
王の間に招かれた龍人、
囲う生者たち、ヴァルディリスの仲間だ。
共にガルデア・マキナス一派を討ち取ろうと戦いこの場を勝ち取った生者たちである。
その生者たちが囲うのは『王』、ルアーノ・ヴァルディリス、
『転生を望む愚か者』吾妻龍人、
「ルールはどうする、吾妻龍人」
「俺が柱石をまた使う、そうだな、お互いの獲物は大剣だ、
回復なし、先に二撃当てたほうが勝ち、
それ以上の追撃は敗北、勝ち負けに特に特典はない、
なにか条件づけしたいなら今言いな、俺には得しかないからな、
王の、あんたの強さを感じられるという『得』がな」
「今の私に、特に望むものはない、強いて言うなら、私を楽しませろ、
吾妻龍人」
「へへ、言うね、嫌いじゃないぜあんた、
さすがガルデアの王を打ち破った男、カオスアニマを得た男だ、」
「シグナム、なにか合図を」
「…アニマの雫が地面に落ちたら開始の合図だ、それでいいな」
無言で頷く龍人とヴァルディリス、
シグナムがアニマの雫を天井に当たらぬ程度に上に投げた、
白と黄色の石のようなアニマの雫が、王の間の床に、
要石の敷き詰まった上に敷かれた赤色の絨毯に落ちた、
龍人はヴァルディリスとの距離を詰める、
手に持つは大剣グレートソード、少し近づけば間合いではある、
しかし相手は龍人より長い間この地に居る熟練の生者であり王、
カオスアニマを賭けて戦い、その経験値も得た男、ルアーノ・ヴァルディリス、
龍人の目算では現状は敵わない、それゆえの提案、
反故にされる可能性もあるがこれほどの仲間の視線の中、
約束を反故にする可能性は少ない、
有るとすれば楽しませなかったときだろう。
龍人は間合いギリギリからの攻撃など選択肢にはない、
さらに踏み込み、互いに必殺の間合い、
「(愚直、直進ッ、一撃は覚悟のうちかッ吾妻龍人ッ)」
ヴァルディリスは龍人の意図を瞬時に理解し、
自身の大剣による攻撃を繰り出す、
龍人もその攻撃に合わせるかのように攻撃を繰り出す、
大剣の連撃、互いの大剣がぶつかり合う、お互いの攻撃は通常のモーションではない、
独自モーションである。
通常モーションでは攻撃が読まれやすい、ゆえに強者との戦いは必然的にそうなる。
「どうしたッその程度か吾妻龍人ッ、」
「どうだかなッ」
龍人は一旦距離を取る、スタミナの回復、
衝突した際感じた相手の力量具合、様々な計算が龍人の中で行われる、
だが戦いの最中、それは程々に龍人は前を行く、
その間合いを詰める龍人にヴァルディリスの右上から左下への剣撃が襲う、
龍人はこれを多少のダメージ覚悟で大剣でガードし、払う、
その一瞬に龍人はヴァルディリスの懐に潜り込み攻撃を繰り出す、
右横からの回転斬り、
初動の一撃からの回転してからのもう一撃、
ヴァルディリスの選択はガード、
ヴァルディリスは一撃目をガードし、
高速の二撃目を躱す、
そしてその大振りの攻撃のスキに龍人に攻撃を与える、
龍人はその攻撃の衝撃で横に少し吹き飛ぶが堪える、
そして痛みに顔を少し歪めるがヴァルディリスから視線をそらさない、
「良い攻撃だが、まだまだだったな」
「…、俺のま」
「二撃のルールだったがここまでにしておこう、これ以上やると本気でやりたくなりそうだ」
龍人は引き際だと感じ、自ら負けを認めようとするが、
ヴァルディリス王はそれを遮った、
「……」
その気遣いに納得出来ていない様子の龍人にヴァルディリス王は言う、
「王になるよりもそれは困難な道だ、それでも行くのか? 吾妻龍人」
「…ああ、世話になった。俺の我儘を聞いてくれてありがとよ…、
倒したおまえの仲間にはすまないことをしたと謝っておいてくれ、
この城には当分近寄らないと誓おう」
「気に病むな、この世界に本来ルールはない、
奴らが復活したら俺が手打ちにしたと言っておこう、」
「なにからなにまですまないな、もう帰るがそれでいいか? ヴァルディリス王」
「ああ、シグナム、送ってやれ、」
「わかった」
シグナムと呼ばれた黒髪の男がそう返事を返した。
ヴァルディリスの当時の側近である、
龍人はシグナムの先導のもと城を後にする。
彼は龍人を城外に送る際、龍人に問うた、
「これから、この城はどうなると想う 吾妻龍人」
「さあな、この世界にはギャンブル程度しか娯楽がない、
腹芸など一日で飽きるだろう、だがそれでも、生き残るやつは生き残る、
もがくやつはもがく、消えるやつは消える、
転生を目指すやつは叶うかどうかも分からん奇跡を求めさまよう、
王は王、俺は俺、ただそれだけだ。」
「…目的があり、追っている時が一番楽しい、
そして今はその残照、まだ楽しい、
だがこの先は想像するに固くない、」
そう語るシグナムに龍人は尋ねる、
「…あんたの、名前を教えてくれよ」
「? シグナムだ、」
「そうじゃない、あんたのフルネームだ、」
「ああ、シグナム・カイエン、東亜と言う島国出身の、普通の男だ、」
「その名前の意味は?、東亜はそういうのこだわるだろ、」
「シグナムとは四愚生矛、四肢を用いて愚直に生きる矛であれという意味だ、
カイエンとは、開く、縁、『縁』が会えばまた会おう 吾妻龍人」
「ああ」
城外に辿り着いたシグナムはそう言い、龍人もそう返事を返した。
更新再開ッッ
2巻は8月17日予定ッッ




