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プロローグ
また冬がやってくる。
思い出したくもない景色が見えてくる。
真っ白で、何もない、幻の景色が甦ってくる。
白い光が空から降ってくる。
過ぎ去りしあの日の光が戻ってくる。
誰も覚えていない存在しない日が帰ってくる。
寒い冬がやってくる。
凍えるような風がいつもの冬を呼んでいる。
街に響く風の音が薄気味悪く響き渡る。
街は煌びやかに飾り付けられ、来る祭日への準備が始められている。
誰も知らない。
誰も気づかない。
光に紛れ、闇が跋扈する。
街の喧騒に飲まれて、イルミネーションの光に隠れて、音も姿もなく溶け込んでいる。
寂しい冬がやってくる。
一人だけが取り残されている。
助けなんて来ない。
助けることなんて出来ない。
どうすればいいのかわからない。
孤独な世界は終わらない。
この冬は今もまだ終わっていない。