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「レーヴェ大司教、お待たせしました。」
手紙を渡して数時間後、サントスさんは部下からの声を聴いて部屋から移動してきました。適度に予想した時間の通りの報告だったのでしょうか、どことなく楽し気な顔付でした。
「どうだ、場所は。」
「この世界が存在する【ジク】を離れ、いくつかの【カテイ】を挿んだ先が発信源の様です。送り主は憶測ですが、我々と似た人種かと。」
「『エリナス』の可能性があるわけか…… よくやった。」
「ありがとうございます。」
報告を受けたサントスさんはその場で所持していた本を開き、リミダムさんを呼び出すかのように文字をつづり出します。あたかも旋律を奏でるかのような指使いで内容を書くと、その場でデコピンをする様に人差し指を動かしました。
すると、一分と経たずに奥の部屋からリミダムさんが姿を現したのです。ある種の連絡方法とは言え、何だか素敵ですね。
「レーヴェ大司教、お呼びでしょーかっ」
「ディルから頼まれていた手紙の送り主が解った。文字をつづって、送り返せるぞ。」
「ありがとうございまぁーす! では早速。」
そう言ってリミダムさんは担当者の元へと赴き、機器を操作して文字をつづり出します。先程の本とは違った操作ですが、理論は似ているんでしょうね。タイピングとは違った手の動きでした。
あたかも『詩』をつづっている様です。
「出来ましたぁー」
「よし、送ってくれ。」
「分かりました。」
そう言って手紙はその場を離れると、画面内に吸い込まれる様に旅立ちます。メール画面の様に奥へ奥へと向かって行くと、手紙は気付くと姿を消してしまうのでした。