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Track on Nightingale Note  作者: 四神 夏菊
CodeName『For Pinio is Intermission』
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そんなギラムの職場へと赴いたあの日、俺はやるべき事をした後にある行動を取っていた。それはつい無意識にやっていたに等しく、恐らくギラムが習慣的にやっていた行動がそのまま俺に現れたのかもしれない。


彼の座席の右側、そこには引出し式の物入れがありギラムは何時も手荷物を下段に入れる習慣がある。普段使いに使用しているリュックはその大きさに合わせているらしく、ランチは持ち込む事があまりない彼には良き収納スペース。手荷物など無い俺はその場を開け中を確認すると、そこには忘れ物なのか『水の入ったペットボトル』が入っていた。


ラベルには『クリスタルゲイザー』と書かれており、恐らくギラムが愛飲している物なのだろうかと俺は思った。置き忘れにしては量があると思いつつも、俺は何となく水を回収し隣と上司に声を掛けてその場を離れ、会社を後にした。




外へと移動した俺は一度近隣から離れるべく移動を開始し、適当な路地裏を探しつつ近くの住宅街へと向かった。手にしたペットボトルの水を観察しながら暗がりへと移動すると、俺は背後のバックを開け中から透き通った水晶体を取り出し、軽く擦った後にペットボトルの蓋を開け、中身をかける様に水を溢した。

すると水晶体は流水にまみれキラキラと輝いた後、その場に電子版として成分表が現れた。



これは俺がベネディスから預けられた『成分解析魔水晶マクリスアナライザー』であり、外部の物資が安全かを含め、どの様なモノで造られたかを割り出す物だ。本来はリミダム達が所属する『輸送隊』の大半が使用しているモノだが、俺はこの世界で活動するにあたって不自由を削減する為にと持たされた物だ。下手なモノを食しリターブの影響を与えない様に、食事管理されてると言っても良いのかもしれない。


半分はそんな名目上の義務として行っているが、今回のはどちらかと言えば『興味本位』だったと思う。



ギラムは普段どのような食事を取っているのか、知識は有れど経験と言えるかは少々不安がある。健康的な肉体と精神も持ち合わせる彼を造って来たのは何なのか、そんな彼を支えている要因はどういったモノなのか。ギラムであるようでギラムではない俺からすればとても気になる事であり、この水に至っても例外ではない。故に、今人目に付かない所でこうしているのもその考えあってこそだ。


ちなみにこの水は『軟水』であり、比較的身体に優しいとされている様だ。ミネラルバランスも良く『乳幼児にも安心して使える』とされており、成分表は確かにその数値を記している。硬水と違って特記した事項は無いが、下手に大量摂取して身体に異常を出すまいと必然的に選んだのだろうかと、俺は憶測で推測しデータを保存した。



彼はどのような生活をしているのか、大体は予測がつく。彼はどんな仕事をして対価を得て、それに伴って払っているリスクが存在するのか、それもさっきの潜入調査で分かる事が出来た。だがそれでも、彼が『真憧士』としての素質が何処から強く成って行ってるのかは解らない。


リアナスは普通の人間達とは違い、例外から漏れる思考回路を独自で開いている事が多い。それは俺が造られる前から判明している事項であり、今はエリナス達との交流が減っているのも時の流れに寄るモノなのかもしれない。

言い方を変えれば『絶滅危惧種』として認知出来そうな中に、ギラムは存在する。



ベネディスを始めリミダムやライゼもそうだが、ギラムは確かに変わっているとこちら側では言われている。エリナスだと分かった彼等に対し人種の壁を感じさせない、只対等に『ヒトリの存在』として扱ってくれる。それは俺に対しても同様であり、ましてや『造形体ゼルレスト』の俺であってもその考えは変わる事が無かった。


まあそれでも、最初は驚き過ぎてどう対応したらいいのかわからない顔はされたけどな。当然と言えば当然だ。ベネディスの話を聞いて納得したくらいだ、俺からの説明も正直上手く出来る自信は無い。



ただそれが『リアナスとして紐付け出来るか』と問われると、よく解らない。人種差別を行わず種族の垣根を越えた交流が出来ると言うのは、確かに普通ではないし変わっている要因の一つとも言えるだろう。だがそれで開花するかと言われてもそうではないらしく、やはり根本的な部分は何処か違っているのかもしれない。

煮え切らない部分は少々じれったいが、俺がそう思っても仕方ないな。



ギラムは普通ではない人間であって、俺達にとって『憧れと成り得る存在』であるだけ。

とても誇らしく、そしてとても目指してみたくなる存在なんだなって事さ。



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