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クーオリアスからリーヴァリィへと移動した俺は、その足で記憶の一部を見直す様に道路を歩く。これは習慣とも言えるし俺の一つの楽しみとも言える行いだが、どちらとは言えない為その辺りは保留としておこう。
以前その場にやって来た時と変わらない景色を横目に、俺はその足で人気の多い道を歩いて行く。道路が幾つも交差し幾多の自動車を始めとする『人を送迎する車』が、自身の目の前を走り去っていく。中には騒音を巻き散らしながら去って行くモノもあるが、その辺りはご愛敬と言う奴が正しいと思う。
心なしか『銀光りする二輪バイク』の姿を目で探していたが、すれ違う事無く標識の色が変わり、俺は歩道を歩いて行く。人の波に逆らわずそのまま道を進んでいくと、目の前に目的地の一つである『軍事会社セルベトルガ』へと到着した。
ココは現代都市リーヴァリィに場を構える、幾多の企業と人々との関連を持つ場所だ。人居る所に依頼は有り、そして依頼があるが故にそれを成す者も必要となる。そんな者達の組織体としてあの会社は存在し、ギラムもまたその場に勤めている。
俺が初めてその場にやって来た時はギラムと面識は無かったが、用があってその場に来ていた事は覚えている。
俺がその場にやって来た用事、それは一度『この場に襲撃を掛けた後の結果を把握する為』だ。襲撃と言っても暴力沙汰の行いでは無く、電子端末によるクラッキングであり一部のデータを操作しつつ『ギラムのデータ』を盗んだに他ならない。必要性は低かったとはいえこの場で過ごす時間の増えて来たギラムのデータは必要であり、行いに対する企業側の動きの把握もしておく必要があったそうだ。指示を出したのは衛生隊ではない為その辺りはよくわからないが、俺がその場にやって来た理由は何となく理解出来た為、拒む事も無かった。
ギラムの席はこの会社の『総務部』と言われる場所。課長席から一番近い位置に存在する彼の席は何時も整頓されていて、元より『活動している』と言っても『外部班』の彼はその場に私物を持ち込む理由は殆ど無い。大体は持ち込んだ荷物で賄える事もあってか、一部の筆記用具を除いて置かれている物は無いと言える。他のデスクの様に『写真』が飾ってあると言う事も無い為、初めて座った時の印象は『静か』だった。
ギラムにはギラムの家族が居るが、それは離れた地方でありその場に集うモノでは無かった。彼女と呼べる者も居ない独り身の彼だが、彼とか変わる存在達は幾多もおり、出会いが無い訳ではない。ただ彼がその気になっていないだけなのか、はたまたそれよりも良い相手を知っているが故の結果なのか。その辺りはギラムの造形体の俺にもよくわからないが、まあ些細な事だろう。
そんな席に座った俺は隣に座る女性社員に挨拶を交わした後、端末を操作しデータの拝見作業を行いだした。
セルベトルガには幾多もの部署が存在し、そしてその部署内で二つの『班』に分かれて社員が所属している。一つはギラムの様に『傭兵』として外部で働く『外部班』であり、もう一つは傭兵とは異なり事務的な作業を処理して彼等のサポートを行う『内部班』だ。それぞれが役割を持って行っているからこそこの会社は運営されており、そして彼等にとって有益な結果となる恩恵が存在している。無論双方共に大変な事も有るが、ギラムは元々外部班希望だった事もあり肩書は総務部で傭兵として行動している。
………その割には内部班の様な仕事をしているが、そこはあえて言わないでおこう。
そんな外部班は『Dランク』から『Sランク』
内部班は『Cランク』から『Aランク』と言う階級分けで社員を管理しており、賃金を始め外部で得た報酬の微収額が決定している。ちなみにギラムは経歴上『Cランク』からスタートしており、現状は『Sランク』であり『稼ぎ頭』としてかなり上の立場に位置している。座席もそう言った意味合いでその場に置かれたのかもしれないが、ただ単純に今の上司との接点が多くお使い係とされているからその場に置かれたのかもしれないが、事実はどちらで在れ結果的にその場になったのだろう。
徴収額は毎月それなりに多くも、組織内で展開されている『制度』の選択権を全て有している。その中で彼が特に利用しているのが『厚遇融資制度』であり、非番の日に外部に赴いて有意義な生活をしているのは、恐らく知ってる人も多いだろう。俺もその場に先回りして面会した事もある為、その辺りのデータも貰っていたと言って良いだろう。
ギラムは内部でも外部でも名は知られているし、実力を持っているからこそ信頼されている。人間関係の構築は下手と本人は言っていたが、それはただ単純に『ギラムが相手のテリトリーに土足で平然と踏み入らないから』と言う配慮からなんだろうな。顔を言い訳にしていたが、俺はそうじゃない事を知っている。
ギラムは何時だって、ギラムだからな。




