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Track on Nightingale Note  作者: 四神 夏菊
CodeName『For Pinio is Intermission』
18/25

俺が再び目覚めたのは、クーオリアスの世界に存在する『WMS(ウォルジ・メイヘントシパリティ』の施設内。『衛生隊』と呼ばれる組織の中で管理する、俺専用の非検用の器の中だった。


澄んだ空とは少し異なる、青みを帯びた水の中。時折浮かぶ泡の流れと音を耳にしながらゆっくりと目を開けた時、そこには俺の見知った存在が立っていた。

白い装束に身を包んだ、高齢のラマ獣人。名は『ベネディス・ダカーポ』

組織内では『マウルティア司教』と呼ばれていた、衛生隊の長だ。



「目が覚めたか、ピニオよ。」

「………」


俺の事を呼ぶベネディスの声に静かに頷くと、俺は軽く固まっていた身体を動かす様にその場で背伸びをしだした。大柄とも言える体形の俺が腕を伸ばした際に器の壁に両手がぶつかるも、俺は左程気にせず思うがままに動いていた。その行動を視たベネディスは軽く頷きながら、俺の調整結果を満足そうにただ見ていた。


その後俺は器の中から出るべく、その場を満たしていた水が消えると同時に外へと移動した。




「初の『リターブ』じゃったが、調子はどうだ。ピニオよ。」

「あぁ。……言う程の違和感は特に無いし、身体の動きもスムーズだ。創憎主と戦った記憶が無ければ、何時の時間軸だと言われてもおかしくない位だぜ。」

「ふむふむ、ならば良い。数値的にも全て元の状態に戻ってる故、心配はないじゃろう。ご苦労じゃったな。」

「ありがとうございます。」


その後俺達は長の為に用意された部屋の一角に用意されたテラス席へと移動し、処置後の休息を取っていた。彼の言う『リターブ』とは、俗にいう『健康診断』の様なモノに『身体状況』を元に戻す行いが入った、俺専用の特別なモノだ。俺はギラム達の様な『リアナス』ではない上に、リヴァナラスに存在する『ヴァリアナス』達とも違った経緯で生まれた為、どちらにも属しどちらとも言える現象を行使している。その双方に加担する立場に立つ俺だからこそ、ベネディスにとっても良い非検体になっている事は認知している。


創憎主の放つ魔法はリーヴァリィに影響を与え、世界は勿論『生物』にも影響を与えている。それは俗にいう『汚染』に近い形で浸食を開始し、気付けば人格が徐々に変化しだし『事件』と呼べる行いと結果によって現れる傾向が出ていた。報告は前々から上がっていたからこそ衛生隊の人達はその結果に対する過程の調査を行いだし、俺が造られる前から『非検体』として『リアナス達』を度々回収していた。


無論無差別かつ問答無用で行っていた訳では無く、ほぼほぼ全員が『負傷者』としてこの場に運ばれていた。記憶と意識が朦朧としている中で運ばれた彼等の身体を治す代わりにデータを貰い、後の経過報告を視ながら現状の解析を行って行く。知らず知らずとも言えるこの行いは相互で承諾したモノもある為、一重にそうとは言えない。



ギラムの様に本人が知らないだけであって、周りが知っている。と言うのもゼロではない。殆どが全て『承諾』を取った上で行っており、今に至る。




それによって得た結果と法則性に基づき、彼等の魔法が人知れず影響を与えている事が解った。リアナスであればその影響は最小限、もしくは無力化する事が可能だが、ヴァリアナスにはそれをする術がない。俺はその状況を有効活用するべく、身体を元に戻すと同時に双方の数値差を分析、より正確な結果を提供しているに過ぎない。


これはギブアンドテイクとも呼べる取引であり、俺もまた生まれたが故の対価に過ぎないと思ってる。だからこそ、悲観する事もない。ギラムにもそう話したからこそ、それは嘘では無い。


ギラムは何時だって、俺を気にかけてくれている。それだけでも、俺は幸せ者だ。




「今回の創憎主のデータを元に、今後もリーヴァリィへ赴き創憎主の停止を行うのじゃ。無理は無論せず、必ず生還するのじゃぞ。」

「はい。」

「しばしの休息の後、また向こうへ行くと良い。お主には赴いて貰う場が今回はある故、ギラムとの面会もしばしお預けじゃな。」

「了解。」


そんな中でも俺はベネディスの命に従い、次の行動に赴くべく席を立った。そして普段から携帯しているウエストバックを装着し、中に俺専用の武器と活動費が入っている事を確認し、ベネディスに一礼する。俺の為に、そして俺がギラムの様に振る舞える様にと用意してくれた武器『ルシアープキャスト』は、俺の唯一の戦闘手段だからな。


いつかそれが無くして戦える様に成れればいいが、それはあくまで儚いモノだと今は思っておこう。



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