9-G
事の次第を搔い摘んで理解するも、この世界に別の世界の俺が居る事も知らない現状。俺とフィルはセイロンと共にリーヴァリィへと繰り出し、都市内を移動しながらそれらしい人を探していた。
「……んで、お前の言う『ギラム』って。どんなやつ?」
「とっても頼れる相手で、仕事は必ず成し遂げる『死神』って言われてる。」
「おっかねー」
「俺を視るな。」
俺の隣を慣れた足取りで移動するフィルからの視線を受けつつ、俺達はセイロンから聞ける限りの情報を仕入れていた。どうやらセイロン達の居た世界はこの世界とは『全然違う世界』に居て、国とか惑星を超えた『時系列そのもの』を超えた先の世界からやってきたらしい。『夜』が存在しない世界でありながら、日中『砂嵐』が吹き荒れる荒野の様だが建造物の立ち並ぶ不思議な世界。
世界の名前までは教えてくれなかったが、セイロンは『クーオリアス』ではない場所から来た事だけは確かだった。まあ、俺が居る時点で『クーオリアスではない』って事は分かってたんだけどな。
「でも、実際には『その道』しか選べなかったって……事実を受け止められる相手。真の心の強さを持てる相手だと、俺は想ってる。」
「ぁー、わかる。」
「だからイチイチ視るな。」
とはいえ、セイロンは俺へ対し普通とは異なる感覚を抱いている事だけはわかった。俺の事を理解しようと行動するも、今回の騒動に巻き込まれた挙句、必死になって次元を隔てたこの世界にやってきたんだ。相当な想いと覚悟が無ければ、俺も出来るかどうかすら解らない。
ま、仮にフィルがセイロンと同じ立場だとしたら。きっと同じことをしてくれるんじゃねえかって、俺は思ってる。無論、逆も然りだ。
「こっちのギラムは、そんな感じにイケメンな相手か?」
「おう。なーんでも仕事と認識すれば、どんな相手でも助けて救ってくれる。俺が自身をもって誇れる『主』だ。」
「ぉー、やっぱり。俺の望みを叶えてくれるって感じじゃあねえけど、やっぱこんな感じに成れるんだな。こりゃ期待出来そうだ。」
「望み?」
「俺を『殺してくれる』事。いろいろ理由があるけど、ココでは無しにしとくぜ。」
「お、おう……」
「おっかねー」
とはいえ、俺にはまだセイロンを理解出来ない部分がある。何をどうしたら『死』を望む事を選ぶんだろうな……
そんな依頼を受けた事もねえから、全くと言っていい程にピンと来ない。デネレスティやトレランスだったら、もうちょっと解ったのかもしれねえな。俺もまだまだだ。
「……それにしても、いい世界だな。空気がまあまあキレイだし、視界も良し。」
「やっぱ違う感じか? そっちの世界と。」
「まーな。ある意味『終焉』って表現が正しいかも。そっちもいろいろな。」
「いろいろって…… 濁しすぎじゃね?」
「そーんなもんだろ、世界何て幾多もあんだからさ。知る機会もねえだろうけどさ。」
「まぁ、確かに………」
それでもフィルを簡単にあしらえる所を視ると、セイロン自体は見た目よりも知識は豊富なんだろうなって思う。本人は『現状は二十歳前後』って言ってたが、その良く分からない説明の部分にも暗黙な部分を感じざるえない。寧ろ濁しているのは、変に俺達へ対する配慮とは違うんじゃねえかって思うからな。
後で聞いた話だと、俺の考えは間違いではなかったらしい。
「とはいえ、その感じだといろいろ騒がれそうだけど……」
「今は特に連絡はねえな。治安維持部隊の車も視てねえし。」
「あぁ、大丈夫大丈夫。死神でも『通り魔』はしねえから、むしろ人目に付かないように隠れてると思う。足跡は残したくねえんだと。」
「その辺は主っぽいな。主だったら、何処隠れる?」
「そう言われてもな…… 食料が何とかなれば、人目が付かない『高い所』にでも行くかもな。仕事をする理由がなければ、尚更な。」
「んじゃ、多分あの辺かな。」
そんなセイロンの話も踏まえて俺の考えを言うと、フィルはそう言って都市内に立ち並ぶビルを指さした。確かにこの近辺で『人目に付かない高い所』って言ったら、ビルとホテルの屋上くらいしかない。わざわざ室内に隠れようかと思うかと問われたら、多分俺は『ノー』と答えるだろうからな。空模様が発揮するその場所は、絶好の隠れ場所だ。
目的地の目途が付いた俺達が移動しようとした、その時だった。
リリリッ リリリッ!
「「「ん?」」」
不意に俺の携帯していた『センスミント』が着信音を放ち、俺達の足を止めさせた。ポケットの中に入れて置いた機器を取り出し応答すると、そこから聞こえてきたのは聞きなれた相手の声だった。
「もしもし。 ……おぉ、ピニオか。珍しいな、どうした?」
「友達?」
「んや、弟に近い。」
「え、近い??」
「……おぉ、そりゃ好都合。今そっち行くぜ、後でな。」
電話口に告げられたのは少し理解が必要ながらも、即座にリンクする事の出来る内容。俺とは別の場所で話すフィルとセイロンの話声を他所に、俺は告げるべき内容を伝え電話を終えた。
そして、セイロンに対してこう言った。
「セイロン、依頼が完了出来そうな目途が立ったぜ。そっちの『俺』が見つかったってさ。」
「マジ!? 本当か!?」
「おう。今から行くぜ、もう少しだ。」
「……っしゃああっ!! 待ってろよーギラム!!」
ピニオからの連絡を受けた俺達は、つい先ほどまで目途を付けていたポイントの一つ。イオル達の生活するマンションに隣接するビルへと、向かうのだった。




