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「……なーるほど、それでリーヴァリィに来ちゃったんすね。」
地味に危機的な状況を乗り越えたライゼさんは、そのまま場所を移さずその場に居た異なる世界のギラムさんとお話をしていました。青空の広がるリーヴァリィの風景を見上げながら語られる話は驚きの連続であり、自らと同じく『別の世界』を知る切欠ともなっていたのです。
理想を抱く方も居れば、その反対に絶望を抱くかもしれない異世界の事柄。ライゼさんは親身になって話を聞いて下さったのも、ギラムさんにとっては嬉しかったのかもしれません。先程までの行動が嘘の様に、ただただお話をしていたのでした。
「……恐らく、手紙を出したのは『セイロン』だな。」
「セイロン?」
「ライゼみたいに、動物の姿をした相手だ。多分『トカゲ』」
「へぇー、リザードマンっすか。カッコ良さそうっすね、准尉にピッタリっす。」
いつも通りの口調で話すライゼさんですが、ギラムさんは特に気にする事無く差出人に付いても説明していました。元より『エリナス』であるライゼさんからすれば、獣人という存在に関して『受け止めやすい傾向』があるのかもしれませんね。
人間の方々からすれば、そう簡単に解釈する事は出来そうにない違いです。
「……ちなみにだが。その『准尉』って何だ?」
「あぁ、そっか。それは俺の憧れと敬意を称して呼んでるんす。この世界にも『ギラム』が居るんだ。」
「えっ、俺が……?」
「そっすよ。今、俺の前に居るギラム准尉と同じか、それ以上のカッコよさを兼ね備えた相手っす。大好きなんだ。」
「……そっか。」
しかし、ライゼさんとは違いギラムさんには違和感を覚える部分はあったようです。何時もと変わらない呼び方をするライゼさんに対する質問をすると、なんてことの無い様子で答えるライゼさん。寧ろ『喜んでいる』と言った方が良いかもしれませんね。
何時だってライゼさんは、ギラムさんのお話をする時は嬉しそうですからね。
……あっ、ボクの時もそうかな?
「……お前も、セイロンと似たような事を言うんだな。」
「似てるんすか? そのヒトと。」
「あぁ、よく似てる。だからかな、少しだけ安心するぜ。」
「それは良かったっす。」
そんなライゼさんに安心感を抱いた様子で、ギラムさんはふとそんな事を呟きます。きっとそれだけの世界で共にしてきた相手なら、仮に姿形が違ったとしても、喋り方が似て居たらボクもそう思うのかもしれません。
懐かしさの中に存在する暖かさは、誰にだって必要です。ボクがアイドルとして振る舞うその理由とも似ている気がするので、ちょっと共感しちゃいますね。
そんな事を思っていた、その時です。
「ライゼ。」
「ん? おっ、ピニオ。もう時間か?」
「あぁ。 ……ん? ギラム……なのか?」
「そうだけど、ちょい違うぜ。ピニオ、悪いんだけど1個頼めるか?」
「ん、おう。良いぜ。」
リーヴァリィの中でも特に高いビルの屋上に、また一人別の方がやってきました。それはボク達『ナイチンゲール隊』の最後の一人であり、ギラムさんともライゼさんとも関係があるピニオさん。
本日の服装はリーヴァリィ仕様なので普段着を着こんでいて、並ばれたら一瞬迷っちゃいそうなくらいです。
『俺がもう1人…… いや、もう2人もいるのか……? この世界は……』
もちろんその感覚を抱くのは、ボクだけではありません。異世界のギラムさんもまた、ピニオさんの存在とリーヴァリィで活動するギラムさんの存在に首を傾げてしまうのでした。




