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日付が変わり、朝を迎えた現代都市リーヴァリィ。都市内に住む方々が活動を開始したその頃、ボク達の中にも行動する方がいました。
「えーっと…… ぉっ、このビルか。」
ナイチンゲール隊の一人であるライゼさんが、その日の朝に活動します。時間的に見て一番最後の行動となりますが、その足取りは軽く目的地へと向けて真っ直ぐに進んでいくのでした。
今回の目的地、それは先日シグルさんが見つけた例のビルの屋上です。一歩また一歩と階段を上った後、彼は扉に手をかけた後に左手を動かし、あたかも魔法をかけるかのように扉のロックを解除するのでした。そしてゆっくり扉を押し開け、その場にいるであろう人影を顔だけだして探しました。
しかし、誰の姿もありません。
『あれ、おっかしいなー 御隠居の話だと、一人はいるはずなんだけど………』
その後移動して扉を閉めると、彼は死角となる位置を視るべく歩き出した。まさに、その時でした。
ガッ!!
「うおっ!!」
不意にライゼさんはあらぬ方向からの力学に身を引っ張られ、そのまま壁へと身体を押し当てられてしまったのです。同時に首元へ冷たい物体が触れたのを見て、突然の事ではありましたがライゼさんは何が起こったのか、即座に理解しました。
彼の眼の前に立っていた謎の相手、自らよりも立派な体格をしていて力では到底敵いそうにありません。その上明確な致命傷を与えられる場所に武器を当てているのですから、その筋の相手である事も見逃せませんね。
「………」
『乳白色のフードに、変わった井出達………』 「あっ!」
目の前に立っていた相手を視たライゼさんは声を出すと、再び首へやって来る感覚を察します。当てられているのはナイフであり、どうやら地味にヤバイ事も理解しました。
声を上げれば、即座に殺られる。と。
「……えーっと。」
「声は出すな。 ……このまま死にたくなければ、ココへ来た理由を言え。」
『あれ? この声………』
不意に尋問をかけられたライゼさんでしたが、それよりも気がかりな点で現実に引き戻されます。やってきた相手の声に、ライゼさんは覚えがあったのです。
「……もしかして、ギラム准尉か?」
「えっ?」
問いかけに対しそう答えると、相手も驚いた様子で声を漏らしました。そして直後にやってきた風によってフードが持ちあげられると、そこには彼にとって見慣れた顔の主『ギラムさん』が立っていたのです。
ナイフ片手に。
「あっ、やっぱり。ギラム准尉、こんなところで何してるんすか? 見慣れない恰好までして。」
「………」
「……あれ? 顔の傷が無い…… ………」
その後お互いに気がかりな点があったのでしょう、体制そのままに二人は軽く考える様に仕草を取り出します。ライゼさんは空を仰ぐように、ギラムさんと思われる相手は、相手の動きに反応出来るよう少しだけ目線を右へと向けるのでした。
「……とりあえず、問に答えます。俺はこの世界に迷い込んだ存在を探しに来ました、ギラム准尉。」
「迷い込んだ……?」
「そっすよ。ギラム准尉にとって、恐らく大事なヒトが帰りを待ってるっす。手紙を貰って、探しに来ました。」
「………」
ライゼさんがそう言うと、相手は静かにナイフを降ろし壁から離れました。話が通じると思ったのでしょう、ライゼさんは何時もとは少しだけ違う笑顔を見せていました。
大事なヒトを、助ける様な眼差しでした。
「……お前、名前は。」
「『ライゼ・護授スクアーツ』っすよ。ギラム准尉。」
「………」
そう言った後、ライゼさんは彼の傍に行き事情を話してもらうのでした。




