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ボクの家には、秘密の書庫が有ります。そこには幾多の分厚い本があると同時に、いつも寝る前の初歩港ちゃんへのお話になる物語がたくさん。なので、二人でお風呂を済ませて別途へと向かう際、ボクはこの部屋に寄り道をして、いつも一冊の本を持って行きます。
途中で寝ちゃう時も有れば、そうでない時もある。
ボクはその日も一冊の本を選ぶべく、部屋へと寄り本棚を視ていた。
「……うん、今日はこれにしましょう!」
ボクはその中でも、特に思い入れのある本を手にウキウキしながら部屋を後にした。その足でベットへと向かうと、すでに初歩港ちゃんがベットに入って待っていました。
「イオルお姉ちゃん、はやくはやくぅー」
「はいはい、今行きますよー」
軽くせかされながらボクはベットヘと入ると、部屋の明かりを消し、かわりにベットサイドに置いていたランプを付けた。淡い光で部屋が包まれると、ボクはそのまま枕をクッション変わりに、お話を読み始めました。
「今日は何のお話ぃ?」
「今日のは、ボクと初歩港ちゃん。そして『ナイチンゲール隊』の皆さんのお話。ある日のリーヴァリィのお話ですっ」
「はじまりはじまりぃ~」
楽しそうに話すボクと共に、ボク達は物語のページを開いた。
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その物語が起こったのは、春先のある日の事。ボクがいつも通り起きて顔を洗い、身嗜みを整えていた時の事です。
「♪~ ♪~~」
何時もと同じく自らの曲のフレーズを口ずさみながら髪を整えると、ボクはその場で一回転し、いつも通りの自身の姿を眼にした。幾多のファンの方々を魅了するアイドルのボクですが、ますます増える一部の熱気は圧倒されがち。ちょっと恐れを感じちゃいますが、今はあえて気にしない事としておきましょう。
そんな事を考えながら鏡の前を後にしようとした、その時です。
【誰か…… 誰か………!!】
「?」
不意にボクの周りから、聞きなれない声が聞こえてきました。誰が言っているのだろうと思い辺りを見渡しますが、誰の姿もありません。首を傾げながらボクは再び鏡を見ると、そこには先ほどまで無かったものがあったのです。
「あれっ? 何でしょう……?」
ボクが見つけたモノ、それは小さな封筒に入った茶色の手紙。しかもその手紙は鏡の中から姿を見せていて、一部が鏡の中に入ったままだったのです。一体どんな力でそうなっているのかと不思議に思いつつ手を伸ばすと、手紙はすんなり鏡から引き抜かれ、ボクの手の中に納まりました。
手紙を視つつ鏡に触れますが、特に異常は無かったのです。
『……… とりあえず、皆さんに報告しましょうか。』
ボクはそう思い、手紙を持ってその場を後にしました。