一室
前回のあらすじ
熊さん…完!
受け身はとった。
でも、キメラ(?)の本体の攻撃をモロに喰らい、吹っ飛んでしまった。
まるで後ろ向きにジェットコースターに乗ってる気分だった。
まぁ、そんな楽しいものじゃないかったけど。
んで、木にぶつかった。
意識なんて手放すどころかぶん投げた勢い。
正直雷に撃たれるより痛かった。
その後、意識が戻ると、俺は倒れてないで、立っていた。
そして周りの光景には見覚えがあった。
俺が現世で暮らしてたマンションの部屋。
出れるか試したが、鍵は開いていても、扉が動かなかった。
もう2度見るはずのない俺の部屋。
俺があの日、朝登校した時と同じ風景。
中へ入ると、ここもまたあの日のまま。
キッチンの食器、テーブルの上のリモコン、窓の外は車が行き交うごく普通の日本の風景。
窓も開かないが、今なら小1時間程眺めていられる。
タンスの上の写真達。
両親の写ったもの、親友4人組の集合写真。
見ていると申し訳なさでいっぱいになりそうで思わず伏せてしまった。
次は寝室をと思ったらその寝室の扉が開き、1人の女性が出てきた。
白い犬系の耳に尻尾。
質素な服。
多分20代後半から30代前半。
彼女は俺を見るとやや驚いた様子で
「なんじゃ、来ておったのか。」
と言って、当たり前のようにテーブルに座る。
「あんたは?」
「うーむ、お前の中にタダで居候させてもらっている健気な狼じゃ。」
「どこが健気だよ。」
俺もテーブルにつき、くつろぐ。
「ここは?」
「うむ、ここはお前の心の中とでも言おうかのう。」
精神世界ってやつか。
漫画やらでしょっちゅう出てくるが、本当にあったんだな。
「にしても面白い部屋じゃのう。見たことないものばかりで飽きないわ。」
こいつには話しても良いと思い、俺が転生者であることを話し、ここは俺の元いたところの俺の家だったことを説明する。
「通りでわしを見て即座に斬りかからんわけじゃな。」
「なぁ、俺死んだのか?」
「ふふ、死んだならわしに会えんだろうに。」
てことはまだ生きてるのか…
「ドラゴンの腹のなかで話しかけてきたのって…」
「わしじゃ!」
いやドヤられても…
てかそこそこ胸あるな。
ディアナには負けるが…
「俺はお前の後継ぎってことで良いのか?」
「うむ。そしてお前のあとはあの子じゃ。」
あの子とは多分ロボルのことだろう。
今更だが、あいつの成長速度はこいつからきているのだろう。
なんでも、あれはこいつ自身が体内で魔力を駆使して作った言わばクローンなのだとか。
しかし、性格などはまるっきりランダムなのでどうなるかは本人(動物)もわからないそう。
良い子に育ってくれて良かったよ。
「さて、本題じゃ。お前がこうしてわしと会えたということはお前の実力がある程度高まったということじゃ。」
多分飛ばされたのでレベルが上がったのだろう。
「ということで、わしの力の一部の使用を許可する。」
「許可制なのか?」
「わしがこうしてお前のなかでセーブしとらんかったら、今頃力の反動でお前の体は爆発四散していただろうな。」
「体に爆弾抱えてたわけだ。」
「ついでに女もな。まさかあれだけの量の女を…って痛い痛い痛い!」
こいつの発言にテーブルの下で脚の指をひねる。
ちなみにテーブルの高さが低いため、2人とも座布団に座ってる。
「さて、お前があの獅子もどきに勝つにはわしの力を使わねば到底無理じゃ。今から内容を説明するからよーく聞いておれ。」
そういうと、彼女は淡々と説明をする。
まず、彼女の力は大きく分けて2つ。
1つは氷を操る。
限定スキルにより、魔力のコスパも非常に良くなっている。わりとなんでも氷で作れるらしい。
2つ目は相手の魂を削る。
斬った相手の魔力、もとい生命力を吸い取れる。
だだし吸い取り過ぎるとハイになって狂ってしまうので要注意、
それぞれ、氷は刀の短い方、魂は長い方と対応しており、杖みたいに触媒のように扱うことでより安易に発動ができる。
あとは全体的なパラメータの上昇なんかだ。
あと、力の発動中は俺の体にも変化が起きるらしい。
「まあ、何か分からないことがあればいつでも聞け。願えば夢の中でまたここに来れる。」
色々整理している時に気づいた。
「お前の名前どうするかな…」
「お?つけてくれるのか?」
「いつまでも指示語や代名詞じゃ格好が悪いからな。」
ということで、考える。
ロボルの母親で、狼か…
狼…ウルフ…ウボル?はちょっと語呂が悪いからちょいと変えて…
「ウベルってのはどうだ?」
「まあ悪くないな。許可してやろう。」
「間違えるなよ?俺は住まわせてやっている側、つまりは大家だ。家賃はしっかりなんらかの形で払ってもらうからな?」
「ま、まさか夢の中でも女体を…あっ、すいません。謝るから足の指捻るのやめて痛い!痛い!痛い!」
こんなのが体の中にいると考えるとちょっと嫌になるが、まあ便利な力をくれるんだ。しばらく様子見だな。
「では、また後での。」
目が覚めると今度こそ倒れていた。
しかも全身打撲のおまけ付き。
体がミシミシ言っている。
苦しんでいると、頭の中でウベルが話しかけてきた。
『ほれ、はよ立たんか。』
「無茶言うな!」
少し吼えてからなんとか立ち上がる。
「で?どうしろと?」
『イメージじゃイメージ。自分が狼になるイメージじゃよ。』
目を閉じ、想像する。
ウベルのおかげか、なんとなくわかる。
自分が狼になる感じ。
なった後のイメージが頭に湧いてくる。
少しすると、耳の位置が頭の上に移り、尻の上のあたりに何かが生えるのを感じ、目を開けると、
頭の上に狼の耳があり、尻には尻尾が生えていた。
しかもこの尻尾、服を透過しており、全然邪魔にならない。
改めて体を見ると、爪が伸びていたり、犬歯が伸びていたりと、獣人族に似ている。
『まあこんなもんじゃな。さ、やつはあっちじゃ。行くぞ!』
なんとなくわかる。
これなら“狩れる”と
次回、熊の再来、狼との再会。




