冷たくて、暖かい。
リアル忙しスギィ!
前回のあらすじ
野菜うめぇ。
エルフの里に来てから2日が過ぎた。
俺のエルフに対するイメージは人間を見下して古来の種族の自分たちが一番偉いみたいな思想を持っていたんだが、全くそんなことはなく、皆人間や他種族にフレンドリーだった。
そんな平和な中、ショウはどうやら家にいるキーラからの殺気(?)のような愛の電波をしょっちゅう受診するのか時折ビクッとしている。
きっと将来尻の下に敷かれるタイプだな。間違いない。
しかし、ショウのことは面白いだけでは済まなかった。
なに、簡単なことだ。
ショウとキーラの姿に当てられたのだろう。
現在3日目の夜なのだが、俺のベッドの前に2日間続いた平和な1人寝を破壊する使徒が来た。
パターンは緑。エルフのディアナだ。
あ、緑なのは俺のエルフに対するイメージカラーね。
「あのー1人がいいんですけど…」
「私たち、決めたんです。」
「はい?何を?」
「リョウタロウさんの初めてを誰にするか。公正かつ厳正なクジで決めたんです。」
あ、なんだろう。この久しぶりの感じ。
そう。
例えるなら。
[生命の危機]
そんな大袈裟じゃないかもしれないど、こう、なんとも言えない感じ。俺の頭が警鐘をこれでもかと鳴らしている。消防車にも負けないレベルで。
「…それで、ディアナが来たと?」
「はい///」
「はぁ…斬るぞ?」
「えぇ!?なんでですか!私じゃ不満ですか!?体には自信あるんですよ!」
「そこじゃねえ!俺が言ってるのは早すぎるってんだ!」
「もう少し夜遅くのほうがいいと?」
「お前らはカップルの段階というものを知らないのか?」
「だって…」
「だって、なんだよ。」
それまでとは打って変わって少し暗い顔をする。
「またいつこうして言葉を交わせなくなるかわからないじゃないですか…」
「交わせなくなるって、別に失踪はしな…」
そこまで言いかけてディアナが俺の右足を見つめていることに気づいた。
「はぁ…そっちか。」
きっとディアナは俺がまたいつ無茶してぶっ倒れるか分からないということを言いたいのだろう。
ドラゴンと戦ったときのように。
それを考えると他の奴らにも申し訳なくなる。心配かけていることには変わりないのだから。
実際命よりそのときの楽しさに流されることがないとも言えない。
あれ以降も何回か無茶しているから。
だからこそ一緒にいる時間をより濃いものにしたいのだろう。
「わかった。んじゃ段階を進めよう。」
俺は開き直ったように言う。
俺の意外な返答にディアナも面食らっているようだ。
「ただ体を重ねるわけじゃない。それはまだまだ早い。というか、俺はお前らと付き合うことを承認した覚えもないんだがな… そうだな… 腕まくらくらいなら… やってもいい… ぞ?」
いつまでも蔑ろにするのもこいつらの気持ちに失礼だ。せっかく縁あって仲間になったんだ。そろそろ俺も腹を括ろう。
その日の夜はディアナに腕まくらをしてやった。
うん。寝れるわけない。
そのうち体調崩すなこれ。
翌日。
現在は俺、ショウ、オレールの男3人で森を散歩中。
この3人で話したことはあまりないので、色んなことを話す。
オレールの普段や俺たちの冒険者としての仕事についてとか。
オレールは将来俺たちと同じ冒険者になりたいらしいが、アンスは反対しているらしい。
まあ、過保護なとこあるしな。
いたって平和な散歩。
いたって平和な会話。
しかし、そんな平和な時ほど、脅威は現れるものだ。
森の中からオレールめがけて飛んできたソレに気づいた俺はとっさにオレールをかばい、腕でソレを防ぐ。
ソレは俺の腕に浅く刺さる。
腕から血が流れて、痛みが俺を襲う。
ショウもすぐに臨戦態勢に入り、森の方を見る。オレールはショウと俺の後ろにして。
「誰だ!出てこい!」
ショウの呼びかけに応えるように木の陰から1人の人が出てくる。
「おや、私の狙いはそっちではないのですけどね。」
そいつは丁寧な口調だが、その中には明らかに敵意が入っている。
「何者だ!」
ショウが剣と盾を構えながら問い詰める。
俺も刀を抜こうとするが、体に力が入らない。その上、腕に刺さったソレは一向に抜ける気配がない。決して深くはないはずなのに。
「私は通りすがりの魔導師ですよ。なに、そこの子を実験に使おうとしたのですがね。彼が庇ってしまうから。せっかくの『黒魔石』が無駄になってしまいましたよ。」
「な!?」
俺もショウも腕に刺さるソレに目を落とすと、それは黒ずんだ魔石。あのヨームを作る元凶だ。
ショウはすぐに俺から黒魔石を抜こうとするが、まるで腕から離さないように離れない。
「まあ、いいでしょう。あなたが私の駒として使えるか、テストしてあげましょう。」
その男がそういう時奥の木の陰からヨームが2体出てきた。しかも通常より性能がいいのか、オーラが違う。
男はニヤッと笑い、指をパチンと鳴らす。
すると俺の体に感じたこともない激痛が走った。
「ああああああああああ!」
「おい!リョウタロウ!」
体が熱い。苦しい。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
体の内側から何かが這い出てくる。
何か、恐ろしいものが。
ただ、何故だろう。苦しみの中に何か違うものが混ざっている。それは真っ暗な闇のなかにあるちっぽけな光みたいな。それに安心感を抱く。いや、懐かしさだろうか。ただ、懐かしいようで、いつも隣に居るような。何か、白くて、冷たい。
でも、その冷たさは暖かさを持っていて、体を預けたくなるようなもの。
それはまるで、冷たい氷のような。
それはまるで、暖かい人肌や毛皮のような。
それはまるで、凍てつく吹雪のような。
それはまるで、あつい愛情のような。
それが何かわからないまま、俺は意識を手放した。
次回、凍てつく狼




