犯罪
これからの話には時折、
法に触れる描写があります。ご注意下さい。
前回のあらすじ
ポールさんからお礼を貰った
リョウタロウはミタ
こういういざこざはあまり首突っ込みたく無いんだけどな〜。でも聞こえちゃったのよ。見ちゃったのよ。はぁ…。とりあえず聞き耳スキルで盗み聞きをば。
「その指輪を返して!」
「だ〜か〜ら〜これがお前のだって証明できんのかよ?俺たちは道に落ちてた物を拾っただけだぜ?」
「っ!ぶつかって来て、カバンを落とさせて、中の物を奪ったのに、その言い草はなによ!」
「前見て歩かない嬢ちゃんが悪いんじゃねえのか?」
うわー。なにあれ、この時代にも当たり屋っているのね。しかも複数犯とか、向こうのよりひでえ。
当たり屋とは、現代では、車なんかにわざと当たって怪我をしたように見せかけ、慰謝料を騙し取る。いわゆる詐欺師のこと。日本にもいたが、基本は単独犯だったりするのだが、複数犯はかなり厄介。一人が当たり、もう一人が証言をすることにより、より犯行の成功率が上がるというもの。
向こうでせいぜい2、3人なのに5人て、しかもあの口調はかなり手馴れてる。一応女の子の方に 心象読解 使っておくか。
心象読解
このスキルは相手の心情読むことができるというもので、TRPGの心理学にちかい。だがこれは確率で読めるというわけでなくスキルレベルが上がれば上がるほどより正確に相手の心情を読むことが出来る。
今回はちょっと距離があるしレベルも1なのであまり分からないが、女の子の方は必死だな。よほど大事なものなんだろうな。助けてやれなくもないが街に入っていきなり殺生はなあ…あんなに快く送り出してくれたポールさん達にもちょっと申し訳ないし。でも助けないってのもちょっとやだなぁ、特に向こうにもいたのと同じものがいるのが気に食わん。せっかく向こうと隔絶されてフレッシュな気持ちでこの世界を見てたのに。ということで、ちょいと 盗賊らしいやり方 でなんとかするか。
「まったく、しつけえなぁ!」(ドカッ
「痛っ!」
「お前ら、行くぞ。」
「ちょっ、ちょっと!待ちなs…っ痛。」
「へへ、うまくいったな。」
「そうだな、あとはこれを質屋にでm (ドンッ) 痛ってねえなあオイ!」
「申し訳ない。こちらの不注意だ。すまなかった。(ペコッ)」
「ったく気ぃつけろやな…」
「それで、どれくらいで売れるかな?」
「ざっと、300シルバーはするだろうよ。これはいいカモに会え…って指輪がねぇ!」
「はぁ!?さっきまで持ってただろうがよ!?」
「一体いつ無く…!まさかさっきのマントの男!引き返して奴を追え!にがすなよ!」
〜ぶつかったあと〜
「クソッ。母の形見なのに。あんな奴らに…(グスッ)」
「おい。そこの女。」
「えっ?」
「付いて来い。早く。」
「えっ?お前。一体誰…って手を引っ張るな!」
「うるさい。黙って走れ!」
この街は栄えている。故に路地裏は結構入り組んでいる。だから、さっきの通りのだいぶ前のところに戻るのも、大して難しくはない。
作戦はこうだった。
まず指輪を持って路地裏から出てくる奴らにぶつかる。ここでスキル スリ を発動させ指輪をスる。
このスリスキル。レベルが上がれば上がるほど相手がスられたことに気づくまでの時間が長くなるというもの(byマニュアル)。ゲームでいうところの幻惑魔法みたいなものだ。相手の感覚を鈍らせるような。おれの予測ではもう少し早く気づかれると思ったが予想より2秒ほど遅かった。
俊敏極振りの俺からしたら2秒あればかなり距離を取れる。
女の子を連れ、男達が入っていった路地裏の入り口の後方20メートル程離れたところから通りに出て、人に紛れながら逆方向の通りに向かう。そうすればあとは向こうが勝手に離れてくれる。
ああいう奴らは大抵俺がまっすぐ距離を取ることを優先すると考えるので、後ろがお留守になりがちなのだ。まぁ人間の心理ってやつだね。灯台下暗しってやつさ。だって通りに出た時まだリーダー格がチラッと見えてたもの。ちゃんと振り返って周りを見てたら見つけられたのに。残念だね〜。とそんなことを思いながら逃げて、通りを2つ超えたあたりでもう一度近場の路地裏に入り、女の子と対面する。
「お前、一体誰なんだ?急に現れたと思ったら、手を掴んで走り出して。女性に対する態度が酷すぎやしないか?」
「これでもか?」
そう言って女の子の手にさっきスった指輪を置く。
「!これ。どうやって!?」
「今度からは前見て歩けよ?それとカバンはちゃんと閉めること。わかったか?」
「えっ? あっ、ああ。それより、ありがとう。これ、母の形見でな。取られた時はどうなることかと… ってあれ? あいつどこいった?」
さて、やることやったしとっとと宿へ行こうそうしよう。俺の勘が言っている。あいつはトラブルの種だと言っている。じゃあやることは1つでしょ?撤退!撤退ー!
ふぅ、ここまでくれば大丈夫だろう。さて奴らはまだ俺のこと探してるだろうしちょっと迂回するか。マントも取れば、部下の視界にチラッと入ってもバレまい。顔もほぼ見られてないし。
さぁ、気をとりなおして子鹿亭へレッツゴー!
当たり屋、スリは立派な犯罪です。やめましょう。
リョウタロウのボディーバッグは斜めがけの普通のショルダーバッグのようなものでそこそこ大きめです。