淘汰
前回のあらすじ
草むらって割とバレない
リョウが最初にキレた時、あれは俺たち4人組の数少ない黒歴史だ。
リョウは自分がバカにされたりするのには平気でも、自分の周りの大切な人となるとそうはいかない。
その時に俺たちの親を貶した奴らとは勿論大喧嘩。
その中でもリョウは無慈悲の一言だった。
現に奴らのうちの1人は骨折、打撲、捻挫などなど、後に学校側からも厳重注意されたが、其奴らが普段も問題児であったのと、喧嘩の中で俺たちもそれなりに怪我をしたので停学、退学までは行かなかった。
つまり、リョウは一度キレると俺たちでも手に負えなくなる。
今回、この賊の男は、リョウの仲間の家族はもとより、その恋人や友人を傷つけた上、目的も非人道的と言える。
つまり、リョウは前回よりもご立腹ってことだ。
「クソガキィィィ!」
男は斧を捨て、殴りかかってくるが、リョウの方が数段速い。
その拳を受け流し、蹴りを一撃、そこからラッシュ派生。
数発の攻撃の後、顔面を蹴り飛ばす。
男はその後も何度も攻撃するが、全てカウンターを喰らい、ボロボロになった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「もう終わりか?つまんないなぁ〜もう少し頑張ろうぜ?」
口ではこう言っているが、これはもはや戦闘ではない。
「そろそろカウンターとか待つのも面倒だ。こっちから行くぞ?」
リョウから笑顔が消える。
あーあの男オワタな。南無三。
リョウは男と二メートル程離れていたが、そこから跳躍、顔面に膝蹴り、その後三角蹴り、回し蹴りと、蹴りを中心に攻撃していく。
男は立ってるのもやっとだ。
その後も蹴りで殺るのかと思ったら、胸ぐらを掴み、背負い投げ。
男は宙を舞い、地面に叩きつけられる。
それからリョウはよく警察がやるみたいに右腕を掴み、男をうつ伏せにし、持った腕を地面に対し、垂直にし、組み伏せる。そのまま腕を背中の方へ傾け、嬲る。
「ほらほら、抵抗してみろよ?あっショウもやる?割と楽しいよ?」
「いや、遠慮しとく。それより、そろそろ楽にしてやったらどうだ?」
「それもいいんだけどさ、ほら、こいつの仲間全員お陀仏でしょ?ギルドが動いたときに事情聴取するのに1人はいた方がいいかなぁ〜って。」
「あーたしかにそれはあるな。でも、縛るものないぜ?」
「気絶させればよくね?」
「起きないか?」
「じゃあどうしたらいい(ボキッ)「「あっ」」
その音は男の肩が外れる音だった。
肩があらぬ方向へ曲がってる。
今会話している中でも男はギャーギャー喚いていた。
「あーごめんごめん。ちょっと力込めすぎたわ。」
「テメェら…なんとしても殺してやるからな!」
「自分の立場わかってないみたいだなぁ!」
そう言ってリョウは右肘も外す。
「ぐあああああああああああああ!」
「あっ、わかったぞ。ショウ。」
「?何が。」
「関節を粗方外せばいいのではないか?」
「そこに気づくとはお主天才か?」
「あ…悪魔どもめ…」
「どちらかというと…鬼かな?出身地的に?」
そう言って男の膝を踏み砕く。
膝が普段曲がる方向と逆を向く。
「おー割といけるものだな。」
「いや、お前の脚力がバカなだけだろ?」
「バカとは失礼だな?」
「で?まだやる?そろそろ帰りたいんだけど?」
「ふむ、一理ある。」
こうして話せてはいるが、顔が笑ってない。
本人としてはまだまだ壊したいのだろう。
「うーん、やっぱ殺すか。なんか生きてるのが気にくわなってきた。」
「ひっ!」
男の顔が歪む。
「でも、ただ殺すんじゃつまんないよな?」
そう言って男を仰向けにして馬乗りになる。
「なあ、綺麗な星空だよな〜。」
そう言って上を見ると日本じゃ滅多に見れない満天の星空が広がっている。
「ちゃーんと頭に刻み込めよ?」
そう言って男の目の前に手をかざす。」
「もう二度と見れないんだからな。」
するとリョウの手のひらから光の玉がでる。
前に聞いた初歩的な魔術の一つで、ただ明かりをつけるだけだが、リョウは目くらましに使っている。
男が目を瞑ったと思うとリョウは左手でその男の目を一閃する。
リョウが言っていた。
あの小手の指先にはドラゴンの爪が使われていて、魔力で強化すると、十分な鉤爪として使えるらしい。
その威力は結構あるらしく、"人の目玉を斬り裂くのは造作も無い"だろう。
あたり一帯に男の悲鳴が響く。
断末魔にも近いそれは人間が出せるほぼ限界の悲鳴とも言えるだろう。
実際俺はこれ以上の悲鳴を聞いたことがない。
「目がぁ…俺の目がぁ…」
「どこの大佐だよ。」
そう言ってリョウは立ち上がる。
「どうするの?あれ。」
「放置でいいだろう。ギルドが来たら見つかるだろうし、その前にモンスターの餌になるかもしれないし、どっちにしろ、文字通り、この先真っ暗って訳だ。」
「だな。」
俺たちが立ち去ろうとすると、男は驚くべきガッツで立ち上がった。
「許さねぇ…許さねぇ…」
「まだ立てるんだ…」
「ほー?ならもう一回地面と仲良しにしてやるか。」
すると男は懐から黒い石を取り出した。
「なんだあれ?」
「黒魔石!持ってやがったか!」
「お前らも!あの村のトカゲも!みな殺しにしてやる!」
そう言って男は自分にその石を突き刺す。
石は男に入っていき、それと同時に男は苦しみだす。
「ぐあああああああアアアアアアアア!」
男は次第に筋骨が膨れ上がり、人間からかけ離れた姿に変貌した。
「これが…ヨーム…」
「クク…」
「リョウ?」
「クッ…クハハハハハハハハハ!そう来なくちゃなあ?そうじゃねぇと殺し甲斐がねえもんなあ!」
刀を抜き、狂ったように笑う。
「いいよ!最高だ!最近ロクな奴がいなくてストレス溜まってたんだ!丁度いい!」
その口はまるで三日月のように曲がり、奴の言った通り、悪魔のような笑みを浮かべる。
「その体、切り刻んでやるよぉ!」
流石の俺もリョウの変貌ぶりに驚いた。
復讐心はここまで人を変えるのかと。
でも少し安心した部分もある。
どこまで行ってもリョウタロウはリョウタロウだなぁ〜。
おーい、見てるか?現世のお二人さん、リョウのお母さん、お父さん。
リョウはこんな世界でも元気にしてるよ〜。
さて、俺も援護くらいはしないとな!
次回、物だって、生きている。




