王都
なんだろうこれから1話が長くなる気がする。
前回のあらすじ
ポールさんとフレンズになった。
中世の城壁があるくらいの都市には、大体門番の兵士がいる。
これはゲームや、漫画なんかでも同じだ。
そしてだいたいの兵士はそこを通ろうとする人を通してもいいか審査する。
これは前世の世界の税関と同じだ。
そりゃ、その為に立ってるんだから当たり前。
でも、中世の兵士は前世の世界の税関ほど穏やかじゃないパターンが多い。この場合は規定されてもいない「通行料」をとる。
理由は簡単。自分の懐を少しでも膨らますためだ。
なぜそんなことをするのかはいたって簡単。
仕事のわりに給料が低いからだ。
もし俺がこの門番に単身特攻をしていれば、法外な通行料をとられていただろう。
しかし、門番兵はポールさんの顔を見た瞬間に、門を開けるように指示を出した。
「こう見えても、王都のなかじゃそこそこ有名人でね。」
ハハハ。と笑いながらまた馬を進め始めた。
ハハハ。と笑いたいのはこっちだよ。俺「顔パス」なんて生まれて初めて見たよ。そこそこどころじゃないでしょ。きっと町内会で議長務められるくらい権力あるでしょ。
そんな俺のツッコミは賑やかな人の声にかき消された。門の向こうには「都」がひろっがっていた。
俺の「都」を見た印象は「本当に異世界なんだな。」といったものだった。
ゲームや漫画やアニメでしか見たことがなかった光景が目の前にあった。
説明しようと思えば一日じゃ足りないと思う。それくらいのものだった。「おお...」と声がでるほどに。
「さあ、つきましたよ。」
そんな街並みに目を奪われている隙にどうやらポールさんの店についたらしい。
おれはせいぜい大きめなコンビニだと思ってた。
でも今俺の前にある店は、ユニ〇ロが二つ重なったようなものだった(顔パスのあたりで何となく疑ってたけど。)
「ささ、どうぞ中へ。」
「えっ、ええ。」
中は確かに雑貨屋だった。といってもなかなか高そうな物ばかり。正直俺、場違いすぎね?何も知らない人が見たら、トイレでも借りに入ったのかと思われるくらいだ。
店は休業中だったようでほかに人はいない。店の中を通って、応接室に入ってお互いに席についた。
奥さんのモニカさんはお茶を淹れにいったので部屋には俺とポールさんの二人になった。
「この度は、本当にありがとうございました。何かお礼をさせてください。私に出来ることなら何でもしましょう。」
「それは、幾ら何でもやりすぎでは?何か理由でも?」
馬車の中でモニカさんとも少し話たが、感謝の度合いが尋常じゃないと俺は感じていて、何か理由があるのではと、ずっと疑問に思ってたんだ。
「実は私たち夫婦は、隣の街の教会に行った帰りだったのです。」
「教会?王都にもありそうなのに、なぜ隣の街まで?(ということは、あの街道でどっち選んでも、結局街にはつくのね。)」
「王都にも教会はありますが、隣街の教会は、いわば本堂のようなもので。その分、腕利きの聖職者がいるので。」
「何か、病気にでも?」
「いえ、実は、妻に妊娠の兆しがあったものですから、確かめるために。それで、どうせなら腕のいい人に見てもらいたくて。」
成る程。自分の子孫の命もかかってたんだから、そりゃ感謝の度合いも並外れるわな。
そのタイミングでモニカさんが帰ってきて、お茶を出してくれた。…流石中世、やはり紅茶が来たか。俺あまり好みじゃないが、せっかくの好意だし、飲んでおこう。
だか、お礼に何でもって言われてもなぁ…でも、この場合何かお願いしないのは逆に無礼な気もするし。色々教えてもらうとしよう。
「そういうことなら… あっ、ではこの街の地図と、手頃な宿なんかを教えていただけると有り難いです。」
「その程度はおやすいご用ですよ。モニカ、確か家の棚に余っているのがあった筈だ。持って来てくれるか?」
ポールさんがそういうとモニカさんは笑顔でコクリと頷き、部屋を出て行った。
ちなみに、モニカさんはあまり喋らない方で、こう、仕事の出来るOLのようなオーラを出していて、クールビューティって言葉が似合いそうな人だ。向こうにいたらきっと、部署の男は皆虜になるな。
だからといって、俺は人の奥さんに手を出すような輩じゃないぞ? あっでも盗賊とか無頼漢ってそういうのもやったりするのか? ムムム… ゲームと違って奥が深い。
「他には何かありませんか?道具とか服とか。」
そうだな服は欲しいかも。現状今着てるこれしかないし、替えはほしいよなあ。
「そうですね、じゃ上着を一着ほど。あとフードとか、ローブなんか欲しいですね。」
せっかくだし、色々よくしてもらおう。
「わかりました。ではせっかくですし、店の方を見ましょう。あそこなら色々ありますし。」
あの値段をタダにしてもらうのは気がひけるんだが… でも、盗賊とかはもらえるときにもらえるだけもらうっていう主義だから、むしろこれが正解? ムムム… ゲームと違って奥が深い。
「こんなに高いのに、良いんですか?」
「ハハハ。これでも結構儲かってるんですから、気にしないでください。」
「はっはあ…」
ということで、服とズボンを一つずつ、フード付きのマントを一つ、ロープ一本、フックを一つもらった。マントはあまり目立ちたくないから、ロープとフックはどこか平坦な壁とかでぶらさがるのにいると思ったのでついでに貰った。それらを背中のボディーバッグ(ダメ神にもらった)に入れていると、モニカさんが戻ってきて、地図をくれた。
「宿は、ここのがおススメです。知り合いの娘が経営しているので、私の名前を出せばそれなりに優遇してくれるでしょう。」
「何もかも、ありがとうございます。」
「私たちと将来の子供の命の恩人へのお礼としてはまだ安い方ですよ?」
「ハハッ、なにぶん物欲というのがあまりなくて。」
「それは良い事ですね。この街にはどの程度滞在する予定で?」
「そうですね… 馴染めば、永住を考えても良いかもしれませんね。」
「そうでしたら是非、今後ともご贔屓に。」
「ええ、また来ます。」
そう言って、俺はポールさんの店を出た。
店の外は相変わらず賑やかな街並みが広がっている。ちょっと寄り道したけど、ここから俺の新たな人生がスタートする。
さて、とりあえずは教えてもらった宿に向かうか、とその前にマントマントっと。あまり人に声をかけられても困るしな。まあ、顔の下半分ほどは見えるんだけどね。じゃ、街でも見ながら宿にむかうか。
街の看板とかは見たことない文字で書かれているがなぜか読めるし、多分書ける。おそらくダメ神が気を利かしたのだろう。
ちなみにポールさんの店の名前は ファース雑貨店 と割と普通。それで目的の宿は 子鹿亭 という宿だ。きっと由来に子鹿が関係しているに違いない。
街の店には色んなものが売ってる。食材からアクセサリー、数は少ないが冒険者がいるせいかポーションなるものを売ってるところもあったり、武器や防具を扱ってる店もある。五分ほど歩き、通りが変わると、出ている店も変わり、喫茶店なんかの類のものになって来た。そんな賑やかな人々の声の中、一瞬、言い争いをしているような声が聞こえた。聞き取りたくなかったけど、聞こえちゃった。こういうのって一回聞くと気になってしょうがないよね。
「はぁ。」
ため息をついて路地裏を覗くと、男数人と女の子一人が言い争っていた。
うん。見なきゃよかった。
一瞬でそう思った俺であった。
ちなみにこの世界の通貨はこんな感じ
10カッパー=1シルバー
100シルバー=1ゴールド
単位考えるのが面倒だったんですすいません。
リョウタロウの貰った物の値段
上着53シルバー
ズボン49シルバー
マント66シルバー
ロープ25シルバー
フック15シルバー
一般人の月給は3〜4ゴールド