燕返し
前回のあらすじ
ヨームは◯ッコロだった。
俺は刀を構え、集中スキルを発動。
全神経を研ぎ澄まし、ヨームに集中する。
瞬きも忘れ、周りの音も聞こえなくなる。
今俺にあるのは自分と敵と刀の一本のみ。
息を吐き、地面を蹴る。
今までにないくらいの速さで接近する。
2歩目を蹴り、残り6メートル。
3歩目で射程距離に着く。
すると周りの時間がゆっくりになる。
野球選手が極限まで集中した時とかにおきるあれだ。
4歩目でブレーキをかける。
足が軋む。骨が悲鳴をあげる。今までの勢いが体に伝わってくる。
その勢いを体を鞭のように使い、腕へ伝わらせる。
一撃目
まず胸の弱点を右上から斬る。
斬れ味がいいせいか、ヨームの肉は豆腐のように斬れる。
そして助走の勢いを逃さなように手首を返し、体をひねる。
二撃目
右脇腹の弱点を右へ一閃。
また手首を返し、体をひねり、最後につなげる。
この時点で腕は限界に近い。骨が悲鳴をあげ、筋肉が千切れんばかりに張る。ひねる体も腰の骨の反動が背骨を伝う。
それでもまだ終われない。
三撃目
左からやつの最後の弱点を斬る。
振られた腕は助走の反動をようやくモロに受け、脱臼する。
それと同時に時間の流れも元に戻る。
俺はその場にへたり込む。体がこれ以上動けないと警告を出してるせいで、動くのは左手とブレーキに使ってない左足。
ヨームは叫びながら後ろに少し飛ばされて、倒れ、溶け始める。
やった。
勝った。
出来た。
色々なことが一気にきて、ぶっ倒れる。
数秒後、やっと意識がはっきりしてきた。
右足は動くが痛い。骨にヒビが入ってると思う。
右腕は脱臼。ものすごい痛い。手が握れないくらい。
背中も痛い。
つまり動けない。
「フェリクス〜助けてくれ〜動けん〜。」
するとフェリクスとロボルが駆け寄ってくる。
「大丈夫か!?リョウタロウ!」
「全然。動けないから助けて。」
フェリクスは剣をしまい、肩を貸してくれた。
これでなんとか歩ける。
右半身は全くダメだけど。
「リョウタロウ、さっきのはなんだ?エヴリーヌたちのところにいると思ったらヨームのところにいて、俺が視線を戻した時にはもうリョウタロウが倒れ始めていて、一瞬何が起きたかわからなかったぞ?」
そんなに速かったか。
俺の感覚では5秒はかかってたんだけどな。
「二度とやらねえ。それより、コリンナ達のところへ行こう。」
「そうだな。」
ヨルクは虫の息だった。
全身骨折してる上、衝撃で臓器破裂も起こしてるだろう。折れた 骨が何処かに刺さってる可能性だってある。
近寄ると、ディアナが寄ってきた。
「出来る限りは尽くしましたが、おそらく、あと少しで…」
「…わかった。2人だけにしてやろう。俺の治療頼む。」
「はい…」
「師匠…ごめんなさい。私がこれを拾いに来なければ。」
「気にするな。どのみち先が短かったんじゃ。さっき話したじゃろうて。それに、それがお前にとってどれだけ大切かも知っておる。」
「師匠…」
「泣くでない。お前はこの元ドワーフ界1番の鍛冶屋、ヨエル ニクラスの弟子じゃろう。いい加減独り立ちせぬか。」
「でも、私は…」
「儂が逝ったあとは、彼らについていくといい。きっとお前に見たこともない世界を見せてくれるじゃろう。それにさっきの剣技。自分の弟子の剣がかように使われるのを最後に見れるとは、あの世にいい土産話ができたわい。ゴホッゴホッ…」
「師匠!」
「あぁ、そろそろ迎えがきたようじゃな。儂がいなくても、しっかりご飯を食べて、夜更かしするでないぞ。体にも気をつけてな。ゴフッ…」
「ううっ…はい…」
「最後に、儂の弟子になってくれてありがとう。この先のお前活躍。一足先にあの世から見ておる…から…の…」
「うぅ…師匠、師匠ぉぉぉぉ!」
その後、ギルドの冒険者達が駆けつけてきた。フェリクスが状況説明をしてくれたおかげで、コリンナは自分の師との別れを済ませられた。
なんでもあのヨルクは昔、この街で行われた鍛冶の大会で優勝し、世界一の鍛冶屋として認められたことがあったらしい。が、弟子を1人も取らず、数十年が経ち、ヨルク ニクラスの名も忘れられた頃、コリンナと出会い、弟子としたらしい。
コリンナの落としものは親の形見のペンダント。
彼女は小さい頃に親を亡くし、実家で育ったらしい。そんなものならあの状況でも取りに行くのも頷ける。
ヨルクの葬式はギルドがしてくれた。一応俺たちも参列した。
そして、ようやく事態が落ち着いたのは二週間もあとだった。
俺たちもやることを終え、王都に戻ることになった。
「リョウタロウさん!」
「コリンナ?」
「良かった。間に合って。」
コリンナはかなりの大荷物で俺たちのところへきた。
「どうしたんだ?その荷物、てか、鍛冶屋は?」
「あそこは売りました。思い出もいっぱいでしたけど、師匠の遺言のために。」
「ヨルクさんの遺言?どんな。」
「リョウタロウさん達について行けって。きっと見たこともない世界を見せてくれるからって。これからはリョウタロウさん達の専属の鍛冶師として精進させてもらいます。」
「いや、俺たちも急にそんなこと言われても、なあ?」
「専属の鍛治師か、いいのではないか?我々の装備代も少しは安くなるし、そこらのものに任せるよりもリョウタロウとロボルのあの剣を作ったという実績があるなら、大丈夫だろ?」
「エヴリーヌさん?」
「そうですね?私の弓とかもあまり扱ってくれる店が少なくて困ってるんですよ。私も歓迎です。」
「ディアナさん?」
「俺も賛成だな。俺の装備もその腕でタダで調節、作成してくれるのならこれ以上のプラスはないだろう。」
「フェリクスさん?」
「ワンワン!」
「ロボル、お前もか。」
「ダメ、ですか?」
そして全員の視線が俺に集まる。
「ムムム…はあ、あの爺さんの遺言か。仕方ない。わかったよ。だが、キツイぞ?」
「っ!はい!このコリンナ、どこまでもついていきます!」
ああ!クソ!また1人増えた!あのジジイ、ロボルの親にでも食われちまえぇぇぇ!
はぁ、やっぱり人ってそう簡単に変われないものなんだなぁ…
時々、サブタイトルが一語から一文になるかもです。
自分のボキャブラリーに限界が来た。
最初からそうしときゃ良かった。




