デートは失敗に
前回のあらすじ
調味料をたんまり仕入れた。
旅行も2日目、明日帰る。
そして今日も今日とて自由行動。
しかし先生ってのは気が楽で良いね。
生徒たちは色々回って感想文書かなきゃいけないんだって。
面倒くさ。
さて、面白そうな調味料は粗方買い漁ったし、あとはご当地料理を巡って味覚に刺激を…
「あー、涼太郎?」
「ん?どした?」
「あー、一言で言って問題発生。」
「誰が。」
「ホカホカップル。」
俺は荷物から刀のついたベルトを出した。
それを腰に巻く。
魔法でオートメーション化されていて、その姿はさながら仮◯ライ◯ー。
「おのれ、昨日パンフレット読み込んだ努力が…」
僕、テオドル ヴェイケルはクラスの中では一番貧しい。
といっても貴族なので、それなりに裕福ではある。
ただ、家に権力がない。
他のみんなの家はどこかの市場で有名だったりする。
しかし、僕の家はちょっと事業が成功して裕福になっているだけだ。
そんな僕がイェレナと会ったのは学校に入ってからだ。
イェレナの家は服の事業で成功して、今ではブランドを持つかなりの良いところだ。
そんな彼女と僕が付き合い始めたきっかけは意外なものだった。
クラスが一緒になるも、彼女は他の男子や他の学校から求婚が絶えない。
僕なんて眼中にないと思っていたのだが、クラスで一緒に過ごす内に向こうからアプローチが来た。
理由は無欲で真っ直ぐなところと言われたが、僕は実感がない。
正直見合うとは思えないし、一度別れようと話をしたが、むしろ余計に気を引いてしまった。
2年に上がってもクラスが一緒だったのは幸運だった。
今のクラスは家の権力とかを無視してみんな仲良く過ごせてとても楽しい。
しかし、僕らのことは秘密だ。
なぜなら貴族の結婚は本人の意思だけで出来るものではない。
必ず家が絡んでくる。
それで、この修学旅行はデートの絶好の機会だった。
しかし、彼女の美しさが許してはくれなかった。
繁華街を歩いている途中、僕がトイレに行った隙に彼女が拐われてしまった。
幸い、彼女が機転を利かせて、食べていた肉まんのかけらを落としていたおかげで、追跡は出来たけど、すごく困ったことになった。← "起点を聞かせて" なんて変換をするFEPはお払い箱にした方が良いかも… それに気付かない使用者もあれだけど…(^^;
彼女を拐ったのは人身売買を生業としてる人たちだった。
魔王様の国では全面的に禁止されてるはずなのに…
ここはどこかの廃墟だ。
人も来ない。
先生に助けを求めようかと思ったけど、先生の居場所が分からなかった。
僕だけでどうにかしなくちゃならない。
「おい、早くしろ。」
「そう焦んなよ。誰も来やしないって。」
彼らは馬車で彼女を連れ去るつもりらしい。
隠れながら彼女に近づき、助けようとした。
「少し待ってて。」
「う、うん…」
しかし、縄を解いたところでバレてしまった。
「おい!テメェ何してやがる!」
彼女の手を引いて全力で走った。
途中、体育祭の前に習ったものを動かす魔法を使い、足止めをしたり、曲がり角をひたすら曲がったりした。
なんとか撒こうとしたけど、結局追い詰められてしまった。
「ガキが、手間かけやがって。」
「どうしてこんなこと!」
「当たり前だろ?金だよ金!テメェら貴族連中がたらふく貰ってるせいでこっちは今晩の飯も食えるか分からねえ。」
「だからって…!」
僕はなんとかしようと必死で魔法で攻撃した。
しかし、相手は大人。
それなりに人を拐っていただけあってちょっとやそっとじゃ倒れてくれない。
「こんの!」
誘拐犯に蹴られ、倒れる。
体育祭で負けた時より痛い。
容赦がない暴力がここまで痛いなんて知らなかった。
「離して!」
彼女が連れ去られる。
それは殴られるより痛い。
僕はイェレナを掴んでいる男に向かって体当たりをして彼らと距離をとった。
「チッ、おい、邪魔だ。殺るぞ。」
そういうと男たちはナイフを取り出した。
ここで死ぬのか。
彼女を守れないで、見合う男になろうと一生懸命に勉強したのに。
結局僕は、不釣り合いなのかな…
諦めた時だった。
頭上から誰かが降りてきた。
その人は見慣れた黒髪に白のメッシュ、二本の刀を携えた片腕の先生だった。
「はぁ…はぁ…やっと追いついた。全く、もう少し通りやすくするとかないのかねここらの建物は。狭くて敵わんわ。」
「先生…」
イェレナが安心したのか、気を失ってしまった。
「先生、どうしてここが?」
「あ?あー、ちょっとね。」
先生が頭を掻く。
何か言い訳が思いつかなかった感じだが、この際どうでもいい。
「おい!テメェ何者だ!」
「俺か?こいつらの担任だ。」
男が1人襲いかかるが、イバラ先生にあっさり返される。
すると、イバラ先生が僕のところまで来て肩を叩いた。
「よく1人でがんばったな。女守るためにそんなボロボロになって、彼氏としては合格点以上だな。」
「う、それは…」
「わかってる。みんなには内緒だろ?それは置いといて、ちょこっと目瞑っててくれるか?ちょっと大人にお仕置きしなきゃならないからな。出来れば耳も塞いでくれるとありがたいけどね。」
僕は言われた通りにした。
でも、つい好奇心で見てしまった。
「さて、うちの可愛い…かは置いといて、生徒に手出してくれたな?先生頑張っちゃうからな!」
「は!先生1人で俺ら5人相手に出来るかよ?」
「出来るさ。ところで、寒くないか?」
「あ?」
イバラ先生の言葉で気づいたが、吐く息が白い。
周りがすごく寒いのだ。
「ちょうど練習相手が欲しかったからな。覚悟しな?寒い冷たいで済むと思うなよ?」
[我、冷酷なる数多の狼の王にして、芯に燃やすは零度の炎!]
イバラ先生が詠唱を終えると、先生の周りに冷えた空気が集まり形を成した。
それは透き通った氷の赤い目をもつ狼達だった。
「【氷結狼】!」
イバラ先生が手をかざすと狼達が男達に襲いかかり、噛み付いたと思ったら、そこから氷が爆発して、男達は氷に包まれて、氷塊になった。
「さ、帰るか!」
なんとなく分かっていたけど、
イバラ先生は、とんでもない人なのかもしれない。
次回、帰ったら中華料理を作るぞー!
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