男2人の特攻
前回のあらすじ
暴走上等、やってやらぁー。
次の日、俺たちは街で看病の手伝いをした。
かなりの量の怪我人だ。
被害は計り知れない。
烏天狗たちの本部の訓練場もいっぱいだった。
そして、看病やら手伝いで奔走するうちに、すっかり日が暮れ、また夜が来た。
みんなが寝静まったころ。
空成と街を抜け出した。
しばらくして、アリスターが見えてきた。
外見は襲撃前とさほど変わらないように見える。
たが、中からかなりの数の魔力の反応がある。
とりあえず、門の上に登る。
登り方?
土で足場を作るのさ。
登って見て言葉を失った。
街の建物はどこも壊されていて、人々のいるべき道にはヨームが闊歩している。
「…多いな…」
「そうだね。計り知れない数だ。でも、やらなくちゃ。」
そうして、アリスターの王城に目をやる。
あそこから一際大きな反応がある。
「勇麟の話だと、数こそ多いが、中身は大したことないらしい。」
「みたいだね。そこらの山賊よりも弱いのもいる。でも、ほぼ1つの国の全員ほどの数のだ。一体一体相手出来ない。」
「やっぱり、王城にいる頭抑えるのがベストか。」
「ねえ、翔。」
空成を見ると、少し複雑な表情をしていた。
「もし、また僕が…暴走したら…」
「安心しろ。首までと言わず全身埋めてやる。」
「うん。ありがとう。」
そして俺たちは、敵だらけの街に飛び込んだ。
降り立ったそばから襲ってくる。
俺は合体剣でひたすら敵を斬り進む。
空成も、炎で吹き飛ばしながら進む。
「確かに、数こそ多いが、ほぼ一撃だな!」
剣で斬ったそばから溶けて消えていく。
「無双ゲーしてる気分になるね。でも、おちおち楽しんでられないよ!伏せて!」
そう言われて伏せると、頭上を爆炎が走り、道が開けた。
「熱いって!伏せるじゃなくて避けるが正解だろ!」
「文句言う暇あったら走る!もう退路なんてないんだからね!」
後ろに目をやると、すでにヨームで塞がっている。
俺たちは斬り、進み、燃やし、進みを繰り返して、ようやく王城の前までたどり着いた。
正面の門から入り、閉めた後、岩石で塞ぐ。
やっと一息つけるところまで来た。
「ハァ…ハァ…なんとか、ついたな。」
「そうだね…こんなに走ったの…久しぶり…」
それから少し休み、奥へ進む。
謁見の間の扉の前にまたヨームがいた。
しかし、今度のはちゃんとした奴のようだ。
だが、ここまで来たら大した敵ではない。
空成の炎で一瞬動きを止め、俺が剣で叩っ斬る。
そしてついに謁見の間の前まできた。
ここまでで3時間は経っている。
そして俺たちは、1番の魔力反応のする謁見の間に入った。
すると、奥の玉座に1人の男が座っていた。
「おや、中々早かったじゃないか。」
男がそう言うと、空成が火球を飛ばす。
男は手でそれを払った。
「礼儀ってものを知らないのか?お前たちは。」
「知ってるけど、尽くす相手を選ぶだけさ。」
空成が食い気味に言い返す。
男は立ち上がった。
「そうか。なら、選ばせるまでだ。」
「空成!バックアップ頼むぞ!」
「うん!」
俺は剣を構え、突進する。
剣を振り下ろすが、男は軽々と避ける。
テンポを合わせ、空成の妖術とで畳み掛ける。
しかし、一瞬の隙を突かれ、吹っ飛ばされる。
それをカバーするように空成が火柱で男を包む。
立て直したおれはその火柱ごと男を切り裂く。
しかし、男はすでにおらず、空成の元まで殴り飛ばされた。
やはり、只者じゃない。
「中々やるじゃないか。だが、まだ甘いな。」
空成の魔法で少し回復し、立ち上がる。
「それに、そんな状態で来るとは、愚かだな。」
そう言って男は空成に向かって手をかざした。
すると、空成が苦しみ出した。
「ぐっ…ぐぁぁぁぁ!」。
不味いと判断し、空成を気絶させ、岩石で閉じ込め、中で休ませる。
これで簡単には手出しできないはずだ。
「ほう、いい判断だ。」
「テメェ、何しやがった。」
「なに、少し手伝ってやっただけさ。せっかくの力を受け入れられるようにな。」
なんとなくわかった。
こいつは空成の力を暴走させようとした。
だけど、あいつはそう簡単に折れはしない。
今は信じて待つしかない。
問題は、それまで俺1人でこいつをどうにかしなきゃならないってことだ。
「余計なお世話を!」
剣を分離させ、半獣化して突っ込む。
両方の剣で斬りつけ、合体、分離を繰り返して連撃を叩き込む。
しかし、ことごとく避けられる。
そして、また1発食らってしまった。
鳩尾に的確な正拳突き。
肺の空気が一気に押し出され、膝をついてしまう。
「では、そろそろこちらの番かな。」
すると今度は向こうから来た。
剣で防御するが、かなり押されている。
「どうした?その程度か?」
「こんの!」
カウンターを狙うも、それを返されてしまい、蹴り飛ばされる。
「たった1人で、私に勝てるとでも?ふっ、笑わせる。」
「1人じゃないさ…」
「なに?」
なんとか立ち上がり、剣を合体させる。
「空成だっている。空成の中には玉さんが、なにより、俺の中に、姐さんがいる。それに、この世界のどっかには、親友がまだ2人もいる。十分じゃねえか。」
剣を構え、突進する。
「1人なのは、テメェの方だ!」
剣を振り下ろした瞬間、避けられた。
その後、男は攻撃態勢に入ったのが見え、とっさに剣を盾にする。
次の瞬間、腕にとてつもない衝撃が来て、吹っ飛ばされた。
壁に打ち付けられ、床に倒れてしまった。
手元を見ると、合体剣が砕け散っていた。
「な!?」
「いい剣だが、ここまでだな。」
砕けた剣は、そのまま塵になってしまい、手には柄しかのこっていなかった。
次回、次のステージ
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