アリスター陥落
[刀]に挿絵を追加しました!
イメージ画像ってことでね。
ちなみに描いたのは自分です。
前回のあらすじ
普段優しい人ほど怒ると怖い
伝令の報告を受けてからの空成の行動は早かった。
ルナを呼び、転移魔法の準備をしだした。
しかも特大のやつ。
「こちらも援軍を送ろう。先に向かっていなさい。」
ヴァルトル王は部下に指示して、軍の用意をさせた。
「ありがとうございます。あと、向かわせるなら、現地じゃなくて、アリスターより西にある街に送ってください。」
「わかった。」
「翔!出来たよ!」
空成に呼ばれ、魔法陣に入る。
そして、俺たちはとりあえず、家に戻った。
家の前に転移すると、左の方から煙が上がっている。
アリスターだ。
家に入ると、誰もいなかった。
最悪を考えたが、クミナが出て来てくれた。
「みんなは?」
「神社の方に。街に逃げた人たちを迎えてるみたいです。この家は魔法で見つからないようにしてるので、早く。」
さすが座敷童。
家は任せるとして、地下の転移門で神社に飛んだ。
神社に着くと、織と鉢合わせた。
「お二人とも!ご無事で何よりです。ロボルさん達も。とりあえず、皆さんは無事です。」
「織さん、どうなってるのか、説明してくれ…」
と、途中で言葉が切れ、空成は倒れた。
みんなが無事でホッとしたのだろう。
「転移魔法で無理したからか。」
「まずは中へ。説明はそれから。」
中へ入り、空成を布団に寝かせる。
その横にルナも横たわった。
ロボルの全力疾走でも3日半かかる距離を飛んだのだ。
無理もない。
「それで、どうしてこうなったんだ?」
空成が聞きそびれたことを織さんに聞く。
「ええ、私は家にいたのであまりわからなかったのですが、なんでも、祟り…ヨームの軍勢が攻めて来たとか。」
「一体どこから…わかった。それで、被害は?」
「はい。アリスターは捨てるしかなくなりました。というのも、エヴリーヌさんは助かったのですが、その…家族の方が…」
「おやっさん達が!?下の街に収容されてるとかじゃないのか!?」
「はい…その、はじめに火の手が上がったのが王城でしたので…」
「…そうか…とりあえず、織さんも休め結構無理してるだろ?」
「大丈夫ですよ。私は。」
「嘘はダメだ。毛並みでわかる。空成に叱られるの俺かもしれないんだからさ。」
織さんは毛娼妓という種族で、髪の毛で体調とかがわかる。
「わかりました。少し、休みます。」
居間に戻ると、勇麟とキーラがいた。
「翔!戻ったか!」
と、勇麟が抱きついてくる。
「苦しい苦しい。状況は少しだけ織さんから聞いた。とりあえず、各々報告頼めるか?空成は転移魔法で疲労して寝てる。」
と、キーラが前へ出て来た。
「では、私から。家のメンバーの状況を順を追って説明します。」
座布団に座り、話を聞く。
「まず、エヴリーヌ様ですが、家族が安否不明、現在寝込んでおります。そして、ディアナ様は街でけが人の手当てに。コリンナ様はエヴリーヌさんに付き添い。アンス様、オレール様もディアナ様同様街で手当て。カミラ様も、薬を作りに行ってます。ヘルカ様と、イーネス様も同じく。そして、エヴリーヌ様とカミラ様の友人のカルメン様も看病に。私と勇麟様は省きますね。」
と、勇麟が口を挟む。
「あのヨーム?とやりあったが、話ほど強くなかったぞ?ただ、数が多すぎて手に負えなかった。すまん。」
「いいよ。ありがとう。」
「では、続けます。由美華様は烏天狗達を率いて防衛を固めています。文華様は稲美様とお辰様の看病を。」
「ちょっと待て!2人がどうかしたのか!?」
一番頼りになる2人が看病されてると聞かされて驚く。
「避難のために式神を多用しすぎたのです。稲美様は一時的に尻尾が1本まで減ってしまい、部屋で寝ています。」
「そうか…」
家を建てるときにも見たあの式神、燃費が良くないと聞いていたから、よっぽどなのだろう。
「茶子さんは商人達を集めて物資の補給の手伝いをしています。」
「そうか…他には。」
「はい。アリスター近辺の街や村からも避難民が押し寄せており、その関係で、フェリクス様も下の街で手伝いを。そして、フベルト様が重傷を負い、治療中です。その…フベルト様曰く、エヴリーヌ様の家族は、やはり…しかし、伏せるよう言われておりますので、エヴリーヌ様にはくれぐれも…」
「わかった。」
「そして、コルネリアですが…残念ながら…」
「!…そうか…たしか、王宮に戻ってたんだもんな…」
「はい…リョウタロウ様とのお付き合いの長いポール様ですが、奥様がお亡くなりに…また、今回ので、死傷者が多数出ています。」
「…それで、ヨームの軍勢はどっから湧いたんだ?」
「あぁ、それは私が話そう。キーラも疲れただろう?」
と、勇麟が少し座り直して言う。
「ありがとうございます…」
「あいつらだがな。あの帝国から出て来たらしい。」
「な!?帝国から!?どうやって…」
「というのも、生き残りがいたんだが、そいつの話からすると、なんか、国によく分からん旅団がついて、炊き出しをやったらしい。どうやら、それになんか入ってたらしく、数日後に街の人たちが一斉にヨームになっちまったらしい。」
言葉を失った。
「飯に黒魔石を混ぜたか…少量だからきっと強さも大したことなかった。だが、量がバカげてる。」
「キーフトから援軍がつく。なんとか殲滅出来るといいが…」
沈黙。
だれも予想してない事態だ。
それこそ大型地震並みだ。
いや、それ以上だ。
とにかく、元凶はなんとしても殺す。
俺は強く胸に誓った。
次回、アリスターを取り戻せ!
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