狼と烏の恩返し
前回のあらすじ
村が近くにあって良かった…
敵数は5
リーダー格1に子分4だ。
俺は長い方の刀を左の腰に、短い方を腰の後ろのところに水平にマウントさせる。
体はある程度普通まで回復したと言ってもまだ包帯を巻いている。左の視界も悪い。
だが、ここで動かずして何が日本人か。
侍ソウル見せてやんよ。
村の人をよけ、前へ出る。
「おいあんたちょっといいかい?」
「あん?なんだぁテメェは。随分とボロボロじゃねえか。」
「ちとヘマしちまってね、そこんところをこの村に救われたって訳さ。つまり、その村の人があんまり悪い扱い受けてるとちょいと思うところがあってね。」
「ははは、正義の味方気取りかい?面白えな!なら、どうだってんだい?」
「丁寧に言えば、お引き取り下さい。簡単に言えば、失せろってところか。」
「は!なら、退かせて見ろよ!」
そう言ってオークのリーダーは片手斧を横薙ぎに振ってきた。
何、怪我していても勇者と戦って勝ったんだ。
大したことないさ。
まず、ジャンプして下を通り過ぎる斧を踏み台にさらに跳躍、そのまま空中で抜刀、リーダーの頭に刀を突き刺し、そのまま垂直な刀を水平まで倒す。
あとは刀を抜いてバック宙して着地すれば良い。
が、左腕がないのに着地の時に左手をつこうとしてよろける。
慣れるまで時間かかるなコレ。
「退かせて見せたぜ。もっとも、見れたかは知らないけどな。」
すると子分が襲ってくるが、次々に眉間を撃ち抜かれて倒れる。
「家屋の上失礼してまーす。」
と、家の上の湊人がいう。
「おいあんた、こいつらの“巣”はどこか分かるか?」
「え、え?あ、あぁ、ここからあっちの方向のはずだ…」
と、村の人が指差す方向をみる。
「了解した。湊人、行くぞー。」
「ま、待ってくれ!あんた、その怪我で奴らとやりあう気か!?奴らは30人近く居るんだぞ!」
「なんだ、30人くらいか、50とか70いるものと思ってたけどな。」
と、湊人が弓をしまいながら言う。
すると、騒ぎを聞きつけたセザール達が来た。
「リョウタロウさん、まだその怪我じゃ…」
「あんたらはあいつらに食料渡さなきゃいけなかったんだろ?それなのに普段より多めの食事を流れ者で見ず知らずの俺たちに振舞ってくれた。手当てもしてくれた。恩はしっかり返させてもらうさ。」
そう言って、俺と湊人は豚の巣に向かった。
奴らは洞窟を根城にしていた。
といっても道が曲がってもいなければ深くもない。
ただの洞穴ともいえる。
見張りは居ず、中から話し声がやや聞こえる。
湊人とは事前に打ち合わせは済ませてある。
俺は洞窟に少し入り、叫ぶ。
「おーい豚どもー?村に向かったアホ5人は丸焼きにしたんだけどさーお前らも食べるー?」
すると奥から続々とオークが出てくる。
「食べるなら出てこいよーそれとも、怖くて出てこれないかい?」
その一声で奴らが俺目掛けて襲ってくる。
洞窟から出て、少し引きつける。
「あーそうだー今日の天気は矢の雨降るってさー。頭上注意しとけー。あ、悪く思うなよ?」
それに合わせ、湊人が撃つ。
「[我射るは1つの矢、我操るは一陣の風、我舞うは100日の夜]、【百矢夜行】!」
洞窟入り口の上から天目掛け放たれた矢は何倍にも増え雨のように降り注いだ。
30人近くのオークはのこり3人まで減った。
2人は運の良い一般兵だが、あと1人はボスだ。
「湊人!雑魚頼むわ!」
「はいよー!終わったら援護要るんだろ?」
「別に倒してしまっても構わんのだろう?」
「無理すんなー」
と、そんな会話をしながらボスと対峙する。
「やあ、元気かい?」
「機嫌は最悪だがなぁ?人間。」
「そりゃ大変だー。どうやったら直るかねー?」
「てめぇの首くれたらな!」
大剣を持った一際大きなオークが襲ってくる。
両手があれば受けられる攻撃だが、片手なので無理だ。
こうなりゃ秘策だ。
刀を抜き、妖術で右の腕に貼り付け、氷で肘から下を刀ごと覆うように手甲を作る。
見た目はさながら◯ックマ◯のソードだ。
その状態でボスと斬り合う。
刀に来る衝撃が重い。
下手にうけすぎると腕が逝く。
(ウベル、半獣化いけるか?)
頭の中でウベルと会話する。
[出来なくもないが、20秒が限度だぞ?]
(てことは右足だけを一瞬だけ完全獣化出来るってことだな?)
[はっ、成る程ねだが、ほんの一瞬だけだ。タイミング逃すなよ?]
(そこ外すほど落ちぶれちゃいないさ!)
ボスが大剣で思いっきり突きを出してきた。
それを右腕の氷の装甲でなんとかずらす。
そのまま少し飛び空中で地面とほぼ水平になりながら回転し、ボスの右腕を切り落とす。
着地後、少し下がり、すぐさま跳躍する。
ボスは腕を切り落とされた痛みでもがく。
空中で右足の裏のあたりに氷の足場を出し、固定。
右足を完全獣化し、思いっきり蹴る。
そのままボスの首をすれ違いざまに刎ねる。
ボトッと後ろで音がして、巨体が地面に倒れる。
刀をしまうと、湊人もちょうど終わったようだ。
「おつかれー」
「ん、おつー、戻るか。」
さて、これで恩は返せたかな。うん。
次回、ここは〜〜〜です。(〜の数は関係ないです。)
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