堕落
感想が、欲しいです…
前回のあらすじ
人間サンドバッグ
攻撃を避けて刀で斬り込む。
しかし、刃はイマイチ届かず、中途半端に傷をつけるだけになった。
その傷もすぐに回復する。
勇者も俺らを本格的に敵と認識したのか、本気を出してきた。
「イライラするなー。治るんだから避けんじゃねえ。」
「本気を出した途端これだもんね。さすが勇者名乗るだけのステータス持ってるね。」
「でもあいつ力に振り回されてる感じあるよな?」
「器が小さいんだろ。」
「どれくらいだと思う?翔ちゃん。」
「とにかく小さいんだろ。ほら、来るぞ!」
膨大な魔力をフル活用した魔弾連射。
俺、ミナトは避け、ショウとクウさんは防御する。
すると、一際デカイ魔法陣を展開してきた。
「消し飛べ!」
飛んで来たのは太いビーム。
「ここ!」
クウさんが半獣化し、術式を展開し、それを吸収、反射させる。
それに合わせ、俺も半獣化して回り込む。
「もらった!」
首に刀を突き刺す。
が、少しのところで体を捻られ、切り裂く形になる。
すぐに下がるが、勇者はまだ健在だ。
「静脈逝ったろ!?判定ガバかよ。」
「てか接近戦しなくなったな。ビビってんじゃね?」
「そんなわけあるかぁぁぁ!」
魔弾も連射しながら剣を持って勇者が突っ込んでくる。
標的はクウさんだ。
RPGにおいてヒーラーを潰すのは定石だ。
だがそれも計算の内。
勇者がクウさんの真ん前まで来て、剣を突き出す。
「死ねぇぇぇ!」
「それはどうかな!」
クウさんが転移魔法で俺と位置を入れ替える。
突き出された剣を左手の剣で右の脇腹の方へいなす。
それに伴い右足を一歩下げつつ、右の刀を振り上げる。
下げた右足を踏み込み、突っ込んでくる勇者の首に刀を突き刺し、そのまま切り裂く。
それを確認したクウさんが転移魔法で全員を回収し、下がる。
「涼ちゃん、やったか?」
「シラトそれフラグ。」
「あぁ、刎ね損なった。ステータス、スキルで肉体も強化されてやがる。あの脊髄が硬くてさ。」
「でも、ダメージは与えたみたいだよ。」
いくら回復するとしても首の7割ほど切り裂かれたら痛いどころじゃない。
「クソが!こうなったら!」
勇者がポッケから石を取り出すと、それが光った。
次の瞬間、勇者はゴリゴリの鎧で固められていた。
「うちの教祖が作ってくれた対人間用の鎧さ!“人間の使える”魔法への完全耐性が付いているのさ!」
「金かかってんな。クウ、あれいくらする?」
「少なくとも一生分遊べるくらいかな。」
「しっかし“人間の使える”魔法への耐性だってさ、涼ちゃん。」
「ふーん?凄いやん?」
刀を持って突っ込む。
「馬鹿が!物理耐性もあるこれに真っ向から来るとはな!」
「余裕ぶっこいてると、死ぬぜ?」
勇者は攻撃を真っ向から受けるつもりだ。
刀を構え、手前で“氷魔法”で刀に氷を纏わせて強化。
左下から右上へ切り上げる。
切られた鎧には一閃の傷がつき、勇者は少し後ろへ吹っ飛んだ。
「な!?なぜ!?」
「お前のところの教祖はアホだったな。あくまでその鎧のもつ魔法耐性は“対人間用”。普通の人間は氷魔法なんてコスパ悪くて使えない。でも、俺はちょいと特別なのよねー。」
「ク、クソ!たが、お前の攻撃さえ当たらなければ!」
すると横を矢が通り、鎧の傷に突き刺さり、爆発する。
「ちょっとのヒビも大きな倒壊に繋がるんだぜ?」
すると堪忍袋の尾が切れたのか、立ち上がると吼え、ビームを何発も撃ってきた。
俺とミナトは避けているが、クウさんが盾となり、ショウと一緒にビームの中を押し通っている。
勇者に接近したショウが半獣化し、剣を合体させ、振りかぶる。
勇者はかなり強めの魔法のシールドを出した。
ショウはそれに躊躇わず剣を振り下ろす。
その剣はシールドを紙切れのようにバラし、勇者を鎧ごと叩っ斬る。
「この剣な、耐性やら防壁やら諸々込み込みで貫通出来るんだわ。ま、こうやって振れるまで結構かかったけど。」
勇者は吹っ飛びこそするものの、まだ回復してくる。
流石に俺たちも疲れてきた。
かれこれ20分ほど戦い続けてる。
その中で被弾もしている。
クウさんの回復で傷こそ治るも、スタミナまではそうは行かない。
「しぶとい、てか、その剣でつけた傷に魔法で回復出来ないじゃないの?」
「あれ、分かってきたんだけど、回復っていうよりリセットに近いんだ。魔力を使って過去の体の状態に戻してるんだ。」
「は!?セーブロード戦法かよ!そりゃ元気な訳だ。傷がついた瞬間にロードが始まってんだから。」
「やっぱり一瞬で絶命させなきゃダメか。」
すると勇者は立ち上がり、笑い始めた。
「こんなところで使うことになるとはなぁ!」
と、取り出したのはまさかの黒魔石
「教祖がくれたものでね。お前らも!あの国のやつらも!全員皆殺しだ!」
勇者は黒魔石を体に突き刺した。
すると、近くの物を吸収し、体も大きくなり、腰から上だけの巨人のような、木のような、悍ましい怪物になった。
胴体の胸の部分に勇者が入っていき、巨人が吼える。
「教祖ってさ、“狂祖”だったんだな。」
「誰が上手いこと言えと?」
「でも、逆に考えると、黒魔石っていう弱点を自分から作ってくれたわけだろ?」
「つまりそこを突けば…」
「ダメージ大か。能力勿体ぶってる場合じゃなさそうだ。」
次回、全開放!
ツイッター
@kisame_novelist